<クライマックス フェイズU>
出来ることならば、闘いを始める前に聞きたいことがあった。遊星はそう考えながらも、口を堅く結んで次の攻撃に備えて暗い空を見上げる。
闇に紛れて攻撃の隙を狙う無数の悪魔たちが、嗜虐と殺気に目を光らせていた。言葉を発する余裕などない、息をつく暇もないのだから。背後からの爆風に髪が暴れる。
「スパークマン!!くっ、キリがないぜ!」
「ちょっと数が多すぎるね。こっちの手数が足りない」
「……数が足りない。なるほど、その手があったか。みんな、モンスターを戻してオレの近くに来てくれ!!」
ジャンクウォーリアーが攻撃を弾いたのを確認してから退かせ、遊星はアテムの指示に従って走る。攻撃を緩めた背中に攻撃が向かった。
「クリボーを召還!そしてクリボーを生贄に捧げて増殖を発動! オレ達を守れ!!」
攻撃を防ぐようにクリボーが壁を作る。増殖のカードによって増えたいくつものクリボーが猛攻を防ぎ、ようやく息をつくことができた。ミラーゲートでここに飛ばされてすぐ、悪魔の大群に襲われていたのだ。
「さすがですアテムさん!これで少しは持ちそうですね」
「ああ。だが、これでは根本的な解決にはならないな。数が多すぎるぜ」
「とりあえず、遊星くん。ここがどこだかわかる?」
額の汗を拭ってから、遊星はあたりを見渡した。煌々と光る街の灯りと、ナイルの位置を確認し、ミラーゲートを通ってたどり着いたのは街の西方にあたる丘の近くだと推定する。
「おそらく、西方の丘の近くだと思います。今は敵が多くて見えませんが、すぐ近くに神が祀られた丘があるはずです」
「オレの記憶にはない丘だな。このゲームのために用意された場所の可能性がある」
「丘に向かうのが良さそうだね。よし、これがゲームなら……」
遊戯の手が空を裂くように動いた。それがカードをドローする時の仕草だと遊星は気付く。時代が違おうと、どこに居ようと、彼は伝説として自分を含む多くの決闘者の憧れとして存在していた。
「クリボーを二体生贄に捧げ……現れろ、破壊竜ガンドラ!!」
出現したのは凶暴的な力を持ったドラゴンだった。遊星のドラゴンとは対照的に全てを破壊するその力は、圧倒的に不利なこの状況を変えることが出来る。
「ガンドラの魔法効果によりボクのライフを半分支払い、全てのモンスターを破壊してゲームから取り除く。――デストロイ・ギガ・レイズ!!」
赤い光が放たれ、闇を照らしていく。消えていく悪魔達の断末魔と、舞い上がった砂埃の中から、低い声が響いた。
「この丘に祀られた神は強大な力故に恐れられ、いつしか悪魔とすら呼ばれた。だが、それが力であるなら、些細な違いだ」
神聖な丘の上から見下ろすのは、冷徹な金の目だった。覇王十代。その名にふさわしく黄金の装飾品を身に着けた姿は、まるで王であるかのように統べる者の風格を持っていた。だが、王とは統べるだけの存在ではない。
「俺は、お前を倒してこの国を守ってみせる!! 行くぞ、覇王!」
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