<ミドル フェイズW>
ここは自分から切り出すべきだと思った。あの言い方には意図的なものを感じたし。
決して切れそうにない鎖を握って、首から外す。遊戯さんと向い合ってから、掴んだ手を突き出した。
「遊戯さん、これ返します」
少し驚いているようにも見えたし、嬉しそうな顔にも見えた。鎖に繋がった逆三角形のパズルは、遊戯さんの手の中で照明用の火を受けて光る。パズルも喜んでんのかなーと、オカルトじみたことを考えていた。
「……十代くんは、いつ気がついたの?」
「ほとんど最初からです。俺にはこれがあるので」
一度目を閉じて開く。正面には相変わらず遊戯さんが居て、アカデミアの赤い制服を着ている。似合ってると俺は思う。けれどその姿と被るように映る、学ラン姿の方が俺はやっぱり好きだ。
「この状況が楽しくなっちゃって。みんな気付いてないから、もう少し黙ってるつもりでした。遊戯さんは、いつ気付いたんですか?」
「ボクは、いやボク達は二回目なんだ。今回は“設定”があったから、最初は分からなかったけど考えれば考えるほど、この状況はあの時に似てる。それで、ね」
アテムももう気付いてるよ。遊戯さんはそう付け加えて笑い、じゃあ行こうか。と歩き始めた。「情報収集」は俺と話をするための口実かと思っていたので、ワンテンポ遅れて俺も歩く。
遊戯さんのいう“設定”とは、この状況が始まった時の服装と所持品、それから思い込みのことを指すのだろう。現に俺はここの風景を見た瞬間に“久しぶり”だと思い込まされてしまった。
俺にはこの眼があるのに。
「遊戯さん。あの、さっき楽しくて。って言ったじゃないですか」
「ん?」
「でも本当はそれだけじゃないんです、その…」
「うん」
それだけじゃない。この世界では、俺達は旧友という“設定”で、俺とあいつも同じ名前の他人だ。そんな世界を、全く望んだことが無いかと言えば、それは嘘になる。
無理なことだと、諦めているからこそ。
「俺、覇王十代とちゃんと話したことがなくて。あいついつの間にか居なくなってたんで、いつか、一回でいいから話してみたいなーって」
「ボクもだよ」
「え?」
「ボクももう一回でいいから、話したかったんだ」
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