※記憶編後





「なぁ、相棒」

キミはボクにそう言って話し始めた。やたら楽しそうだから良いことがあったんだろう。でも残念ながら今は違う事が気になって仕方ないから、内容は頭に入って来ないのだけど。

「相棒、それで、」

気づいてみた、と言うのが正しいと思う。そう言えばそうだなぁといった感じで。そして問題はボクの発見をキミに言うかどうかってこと。

「ということなんだ相棒。だから」

別に言わなきゃいけないってことはない。全くない。本当に大したことじゃない。でも言ってみたらどうなるのか、という好奇心が疼いているのも事実。困ったもんだ。

「相棒はどう思、」
「あ、あのさ!」
「どうしたんだ相棒?」

今まで喋ってたのが嘘みたいに、キミは口を閉じてボクを見る。切り替え早いよ。いや、そうでもない?分からないな。でもボクは切り出してしまった。もう言うしかない。よし、

「ボク達って…………まだパートナーかな?」
「何を言ってるんだ相棒?」

ついに言ってしまった。ああ、なんだかもう戻れない気がしてきた。あのゲームの前夜、記憶を取り戻すまでだなんて言ったことを思い出しただけなんだ。でもちょっとした好奇心で、とんでもないことをしてしまったのかもしれない。だけど言ってしまったのだから、ここで立ち止まることなどできやしない。ボク達はいつだって前に進むしかないんだ!
少しやけになりながら畳み掛ける。

「だから、ボクはまだキミの相棒かな。ってことだよ…………アテム?」
「……どうなんだろうか…………遊戯?」

沈黙。お互いの顔をみながら、ボクは、ボク達は、お互いに全く違うものを見ていた。沈黙。この場の空気が止まっていると肌で分かる。沈黙。ところでボクの目は何を見ているんだろうか。沈黙。

「ごめん、もう一人のボク」
「すまない、相棒」

同時だった。空気は再び動き出した。主語は無かったけど、伝えたいことは分かっていた。充分過ぎるぐらいに。それは同じ空気を共有していたからなのだろうか?

それとも、この心が





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映画予告の王様セリフを頂戴してみた。




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