※覇王十代
「お前は十代じゃない」
隻眼の男はそう言って覇王に闘いを挑み、そして敗北した。敗者の言葉に正しさはない。闘いとは正しさを決めるものであって、勝者が絶対的な正義なのだから。
「オレは、遊城十代だ」
覇王は勝者として、真実を口にする。広く冷たい部屋に、その言葉は吸い込まれてしまった。しかし一番聞かせたい人物はここにいるのだから、問題はない。
「オレは、オレは……」
十代は問い詰める。暗く濁った眼には何も映らず、何も見てはいなかったが、自分に聞いているのだから、何も見る必要はない。答えを求めてひたすら問う。
「オレは強くなりたかった」
「力があればみんなを助けられると思った」
「いままでもそうやってきた」
「闘って勝てば、みんなを救えた」
「じゃあどうして」
「みんなは」
「死んでしまったのだろう」
十代は後悔した。それは覇王とて同じだった。覇王は仲間を救いたかったのだ。しかし救えなかった。理由を求めて、覇王は問う。
「何故、どうして、オレは仲間を救えなかったのだろう」
「それはオレがオレであったことが原因なのだろうか」
「どうすれば、仲間を救えるオレになれるのだろうか」
求められた答えは、手の中にあった。それは力の象徴で、それが完全なものとなれば、強大な力を得られることは明白だった。ならば、簡単な話だ。遊城十代は問いに答える。
「「オレに力が足りないせいだ」」
配下のモンスターが、戦況を伝える。制圧は時間の問題だった。覇王はモンスターに伝える。制圧者の名を、圧倒的なその力を、知らしめるようにと。
「我が名は覇王……覇王十代だ」
かくしてその名は、恐怖ともに知れ渡る。それを否定した人物は、もうこの世界には居ない。
正しき名
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ジム戦の後に「覇王十代」と名乗ったのはどういうことなんだろうと思って。