※vs十代
何故お前は笑っているんだと問えば、
「楽しいからだぜ」
そう笑いながら答え、十代はカードを二枚セットし、ターンエンドを宣言した。
単純で純粋な説教
回ってきた俺のドローフェイズで加わったカードを確認し、手札のモンスターを召喚して攻撃。1500のダイレクトアタックを食らって十代は吹き飛ばされた。
「そうくるか!」
勢い良く起きあがりながら俺のモンスターを見る。軽くはないダメージを食らったというのに、十代は相変わらず笑っていた。
「そりゃあ、これからどうやって反撃しようか、ワクワクしてきたからだぜ」
先ほどと同じ疑問に感づいたのか、十代はそう言う。楽しそうな表情の中で、目だけがこの闘いを見据えて輝いていた。
こんな顔をしていたのか。
闘いを心の底から楽しむ目は、純粋に、貪欲とも言えるほど、ただ勝利を求めて輝いていた。相手を叩き潰すことで勝利を掴むことが出来るのだから、十代はどこまでも容赦なく闘える。
数多の闘いの中で得た勘が、危険を察して俺の手を止めさせた。このターンでドローしたカードをセットし終えエンド宣言をする前に、手札を二枚使って墓地から攻撃力2500の上級モンスターを特殊召喚する。改めてターンエン、ド
「このエンドフェイズ、速効魔法サイクロン発動!」
割れて砕けたミラーフォースの破片が、キラキラと舞い続けているような気がした。知らずと伸ばした手の先に、突如広がった摩天楼。
「行け!!E・HEROフレイムウイングマン!!」
翻して見上げれば、巨大な月を背にヒーローが俺を見下ろしていた。用意された最高の舞台で、ヒーロー達の力は最大限に引き出せる。だから、ビルを蹴りふわりと浮かんだ一瞬が、長く続いた気がした。
「E・HEROネオスを攻撃!!
スカイスクレイパーシュート!!」
俺のマイフェイバリットカードが宙を駆け、鋭い風を起しながらネオスを貫く。爆煙の中で反射的に顔を腕で覆うと同時に、影が差した。
ダメージを伴った炎が俺を襲う。身を焼かれる痛みは、ネオスの持つ力と同じだ。
「まだだ!融合解除発動!!」
ヒーロー達の連続攻撃を受け、今度は俺が吹き飛んだ。ライフはゼロ。
笑えない。どう考えても笑える気がしない。起き上がることもしばらくは出来そうにない。諦めて力を抜くと、十代がのぞき込んできた。
「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」
屈託のない笑顔だと評されていたかつての自分の笑顔が、酷く恐ろしいものに見えた。全くの悪意も敵意なく、あの攻撃を食らわせることができるほど、俺は強かったのか。
「なぁ、何でオレが勝ったのか、あんたに分かるか?」
起き上がれないまま頷くと、十代は、あんたオレだよな?と解りきったことを聞いてきたので、もう一度首を縦に振る。
じゃあ遠慮はいらないな。と、小さく呟いた声が聞こえた。
「あんたのデュエルは勝ちたいからやってるんじゃない。オレの伏せカードを警戒して罠が効かないワイルドマンで攻撃してきたけど、あの時ネオスも攻撃出来ただろ。だが、あんたはそうしなかった。そんな負けないための闘い方してても、楽しくないんじゃないか?」
二つの目は、どこからどうみても左右同色。普通だ。何も変わったところなどない。普通の人間の目だった。
「だからあんたはオレに負けたんだ、遊城十代」
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ちなみに最初セットカードのもう一枚が融合解除でした。