ここはボクの部屋で、だからボク以外に誰もいない。カードを触りだすと時間があっという間に過ぎていくのは、それが例え一人でだとしても、相変わらずだった。
流石に魔法カード一枚の為に一晩悩むことはもうできなくても、気がついたら時計は午前二時、なーんてことは…………よくある。今がそうだった。
ここはボクの部屋で、だからボク以外に誰も

ガタンッ

居ない。いない。いない!










 ただの幽雅な午前二時










気配は扉の方にあった。隙を見せないように扉から目線を外さず、右手を机の上に伸ばし何か武器になりそうなものを探る。掴んだのはたぶん縁日で掬ってきたスーパーボール。中に星のキラキラが無数に入った、大きいサイズのものだ。投げ武器には、なるか。

先制攻撃を仕掛けようとした瞬間、電気が消えた。たちまち真っ暗になる。と同時に、身体が動かなくなった。先制攻撃か。いわゆる金縛りというやつだ。右手を後ろに伸ばしスーパーボールを掴んだまま、身体は一切動かない。どうする。

バンッ

壁を叩くような音、扉より少し離れた位置。僅かに動く首でそちらを見る。怯えさせようっていうの?そうはいかない。ボクは全く怖がってなんていない。そう主張するように、見えないソレに向かって笑みを作ってみた。幽霊なんかに怯えるようでは、決闘者の名が廃る!

……幽霊?

自分を鼓舞するため心の中で言ったセリフに、嫌な言葉が混じった、ような、気が、する。

バタンッ!!

部屋の中央辺りの床から叩きつけるような音がした。中央、つまり吊らされてるライトの下ということだ。待てよ?そこにはちょっと前までボクが居て、座ってカードを並べていた場所だ。そのあとカードを片付けて箱にしまい、時計を見て、立ち上がって、すぐにラップ音。あれ?まさか、

「……転んだ?」

闇の中からびくりとする気配が伝わってきた。当たりらしい。カードを入れてる箱に躓いたのかな。いつの間にか身体は動くようになっている。じゃあ、やることは一つだ。暗闇に慣れてきた目を閉じて、ありったけの声を振り絞りながら、スーパーボールを放った。


「帰ってくるな!!!!」


視界が無かろうと、ここはボクの部屋で、ボクはこの部屋をよく知っている。放ったスーパーボールは扉の横のスイッチに直撃し、オンに切り替えた。瞼の向こうがぱっと明るくなる。

そして力一杯投げたボールは跳ね返って何故か持ち主にクリーンヒット。あたりどころが悪くてボクは気を失ったらしい。



目を開けると天井のライトがチカチカと痛くて、痛くて、仕方なかった。床の真ん中で転がっていると、部屋が広く感じた。ボクの部屋なのに、いつもと何が違うと言うんだ。いつも通り、ここはボクの部屋で、だからボク以外に誰もいない。変わらないじゃないか。変わらないよ。

目が痛いのは、正面から見るにはライトがちょっとキツすぎるからなんだ。それだけなんだ。本当に。





明るくなって、気を失う寸前、努力したのに開けてしまった目に、人影が映ったなんて、ボクは認めたくない。





……………………………………

当サイトの遊戯さんは「帰ってきたら許さない」が基本方針らしいです。




第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -