※原作終了後
自分のデッキを調整していたら、もうこんな時間になってしまっていた。カーテンを閉じるために立ち上がると、すっかり暗くなった街並みが並び、1日が終わりに近付いているのが見える。
調整の終わったボクのデッキをケースにしまってからなんとなく机に座ると、昔のデッキケースが目の端に入った。机の端に置かれていた金色の箱を引き寄せながら箱の中身に思いを馳せる。その中には違うデッキが収められていた。
決して調整されることのないデッキが。
箱を開けて中身を取り出す。デッキを調整するときのように一枚一枚眺めながら、思い出す。このデッキに気付いた時のことを。
このデッキの持ち主はもういない。冥界に帰っていったかつてのパートナー、アテムだ。だからこのデッキが調整されることはもうない。
それどころか、すでに存在しないとさえ思っていたのだ。
闘いの儀でボクが勝ち、キミが負けた後、キミの剣は置かれた。
まぁ、つまりはデュエルディスクが消えたってことなんだけど。とにかく、一緒にデッキも消えた。
泣きながらキミを見送って崩れ始めた神殿から退避するとき、無意識のうちに床に置いたパズルの箱を持って走っていた。何でだか分からないけど、日本に帰ってきて当たり前のようにボクの部屋の元の位置に戻して、だいぶ長い間触ることもなかったのだ。
その中に消えた筈のキミのデッキが収められていると気付いたのは、びっくりするぐらい時間が経ったあとで、申し訳ないことに黄金の箱にはうっすらと埃が被っていたのをおぼえている。
今思えば、アテムの剣であるこのデッキがボクの手にあることは、そう不思議なことでも無いのかもしれない。
現にボクは決闘王だ。キミと違ってまだ当分眠らないボクには、まだ、剣がいる。
キミから引き継がれた称号と剣は、確かにボクのものだ。
「……あ」
デッキを捲る手が、一枚の魔法カードで止まる。さっきまでボクのデッキにも入っていた、強力なカードだ。
「でもね、死者蘇生は明日から禁止カードなんだ」
ボクのデッキに、死者蘇生は入っていない。何故ならさっきのデッキ調整で抜いてしまったからだ。むしろさっきまでの調整は、その一枚を抜いたために行ったと言っていい。それほど強力な効果を持っていたから、ついに禁止カードとなってしまった。
「だから、帰ってきたりしないでね。キミのデッキじゃ、反則になっちゃうから」
一巡したデッキを箱に戻して閉める。金色の蓋を指でとん。と叩きながら言葉を続ける。
「ルールとマナーを守って、楽しくデュエルしなきゃね」
いつまでも変わらないキミのデッキと、どんどん変わっていくボクのデッキ。
どちらが強いのかなんて分からないけど、キミの反則負けなんて絶対にイヤだから、帰ってきたりなんてしたら許さないよ。
ほら、もう今日になったから、
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王様のデッキってどうなったんだろうって最終巻を読んでみたら、ディスクごと消えてた。
でもカード自体は武藤遊戯の所有物なはずなので、消滅してたら質量保存の法則とかに引っかかりそうな気がするから遊戯さんの元に返ってきたよ。という感じ。