リビングの机に肘をつきながら、遊戯はトーストにかじり付いていた。
特に何かがトッピングされている訳でもなく、食パンを焼いただけの料理に今更何か注目するものもない。だから遊戯のぼーっと宙を見ている。見慣れた壁があった。
一人しかいないリビングに、トーストをかじる音だけ。朝早く起きすぎたけど二度寝出来なくて、お腹も減ってるからパンでも焼いて食べてようか、トーストなら失敗しないし。まるでそんな感じだなぁと考えていると、廊下の方からゆっくりとした足音が近付いて、やがて扉が開いた。
「相棒、何してるんだ?」
「トースト食べてただけだよ」
そうか。と答えながら遊戯の向かい側に座ろうと椅子を引くアテム。その様子を見ながら最後のかけらを飲み込んだ遊戯は、でもさぁ。と言葉を発した。
「もしこれから学校に行かなきゃだったとしたら、キミは椅子を引くこともできないんだよね」
アテムは疑問符を浮かべて遊戯をじっと見る。どうしたんだ、相棒。遊戯は何も言わずに手を伸ばしてリモコンを取った。
ピッ!
テレビに向かってボタンを押すと、黒かった画面は映像を映し、音楽を流す。釣られてアテムが目をやると、あ、もうこんな時間なんだ。と、遊戯の手でチャンネルが変えられてしまった。
アテムが僅かに眉を上げているのも、テレビの中を走る赤いバイクを見るまでだった。納得した様子で静かに画面をみる。やがて赤いバイクは、持ち主をとある町まで運んだ。
いずれ素晴らしい名前と町長を迎える町なのだが、そんなことは誰も知らない。
「キミは……うん、スーパーレアぐらいじゃないかな」
オゾン層のしたにいる自分達は彦星と織姫のように年に一度しか会えないなんてことはない。と、歌っているはずの曲が流れているテレビから目を離さずに、ぽつり、と遊戯がこぼす。
アテムが答えるより先に曲は終了し、後々の町長が昔の口癖なんて言葉は忘れてしまったと語っていた。
「なら相棒は、」
「ボクはノーマルレアだよ」
「ノーマルでいいのか?」
「三千年の人間全部の中で、一人の確率だからね」
アテムの頭上には再び疑問符が浮かび上がったが、今日の遊戯は何も答えようとはしなかった。
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ほのぼのさせようとしたら、だらだらしやがった……
ノーマルレアはまたの名をシークレットコモンというそうです。
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