かつて漆黒の鎧の上をたなびき、十万を超える軍勢を束ねたその者の、威圧感を増幅させていた赤いマントは風もないのにひらひらと……掴まれた。


「おい、これはどういうことだ覇王」

「なにか文句でもあるのか、闇遊戯」


掴まれたマントの方へ振り向き、微妙に高い身長を生かして覇王は闇とつく方の遊戯を見下ろした。鋭い眼孔と、冷たい視線がぶつかる。


「この真っ赤なマントはオレに対する挑戦と見てもいいのか?」

「……。挑まれた闘いから、逃げはしない」






「行け、マリシャスエッジ。奴のしもべを撃破しろ!」

「くっ、ブラックマジシャン!だがな、お前の犠牲を無駄にはしない。破壊されたホーリーエルフとブラックマジシャン、二つの魂を生贄に捧げ……カオスソルジャー!!!!」


張り上げられた声に呼応し、光と闇の中から混沌の戦士が出現する。ゆらりと剣を構え、覇王が従える悪意ある刃を持つ悪魔を見据えた。


「開闢双破斬!」

「マリシャスエッジに、ヴィシャスクローを装備」


戦士の剣と悪意ある悪魔が激突する。力の差により破壊されるはずであった悪魔は、邪悪を纏った鉤爪が剥がれ落ちることで破壊を免れた。
斬撃を与えつつも弾き返された剣は、続く斬撃を繰り出すことが出来ない。
連撃を封じられた戦士を片目に音もなく鉤爪が浮かび、宙を滑り遊戯に襲いかかる。


「くっ、!」


遊戯の肩を浅く削り鉤爪は持ち主の元へ舞い戻る。後に残ったのは遊戯のしもべとして現れた二体の悪魔だ。
覇王が操る悪魔に比べれば僅かに力が劣るものの、強い力を持つしもべを二体も渡すなど不可解だと遊戯は覇王を見る。投げかけようとした疑問がかき消えるほど、強大な力が渦巻いていた。


「ヴィシャスクローを捨て、発動せよ超融合!!」


宣言と共に覇王の上空を渦巻いていた強大な力の中に、悪魔達が吸い込まれていく。そして出現したのは、最凶と謳われる悪魔の英雄。
最凶の名に相応しい姿の禍々しい翼をはためかせ、混沌の戦士と対峙した。


「粉砕せよ、マリシャスデビル!!」

「迎え打て、カオスソルジャー!!オレはこの瞬間――」





どーん。





「ねぇ、十代くん。あれってなにやってるのか、分かる?」

「あ、遊戯さん。えーと、俺がみる限りモンスター使ったバトルって感じですね。ディスクも起動してないし」

激突によって起こった爆煙と衝撃が収まると、向かいあってお互いを睨み付けつつ肩で息をする二人の決闘者がいた。しかし両者とも普段の闘いに用いるカードを扱っている様子はない。そして彼らに付き従うしもべ達は、立体映像には見えなかった。


「モンスター使ってファイトしてるみたいだね」

「そうですね。止めない方がいいかなーと思ってたんですが、どうします、遊戯さん?」


十代の目線の先で、覇王は忌々しげに先ほどの爆風で乱れたマントを脱ぎ捨てる。きっかけであったはずのそれには目もくれず、遊戯も同じ様に上着を脱ぎ捨てていた。


「まだやる気みたいですね…………遊戯さん?」


返答がなかなか帰って来ないことに気付き十代が目線を戦場からずらすと、向こうに駆けていく決闘者の後ろ姿が見えた。


「ボクはビーストテイマー・ユーギの能力を使用!対象は残ったイービルトークンだ。判定ロール!!」


さすがだ。そう小さく呟いてから、遊城十代も走り出した。

自分が持ち得る手札の中で、一番強くてカッコいいのはどんなコンボだろう?


「ユベル、行くぞ!ネオスとユベルを融合!!」





……………………………………

ルールなんてない。いや、俺がルールだ!!

ちなみに史実王のマントは青なので突っかかってきませんでした。王様の赤マントはDMの回想のみなので。



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