※覇王、消滅時
「まだだ、オレの力は、こんなものじゃない――!!」
表 裏 太 陽
ヒョウリタイヨウ
ガシャン。
漆黒の鎧は存在しない地面に叩きつけられ重い音を立てた。しかし壁もないここでは、残響を奏でることなく空間に拡散する。
「ぐっ……」
仰向けに倒れた鎧の中から、かみ殺した呻き声が漏れる。拳が強く握り締められ、小刻みに震えた。
「この覇王が、負けたと、いうのか。ならば、オレは、死んだ……のか」
「あの世界の様子をみる限り、そうだろうな。デュエルに負けたと言うのなら」
カチャリ。
力の抜かれた腕から、音。先程と比較するまでもなく弱い音は、無限に広がる白に溶け、消える。
「力が、足りなかったのか。オレの求めた絶対的な力は、まだ完全ではなかったというのか。」
「……力は脆い」
「未完全ならば、完全にしなければならない。絶対的な力が必要だ。こんな場所で、倒れている訳には!!」
ガシャ、ン。
支えとなるべく鎧に込められた力は霧散し、不足故に崩れ落ちる。肉体の意思に反して、微塵も動かない。
「……手、貸そうか?」
「邪魔立ては赦さん!」
吼える。
「何故だ、何故、動かない。オレの力は」
「気付けよ。簡単なことだぜ?」
オレのこの手で、融合のカードで……融合は、使えないんだ。
「……」
自分の力に怯え、その力から逃げていた自分が許せないよ。奇跡を、起こしてみせる。
「……」
一度オレの心の闇の覇王は死んだ。しかしユベル、お前を倒すために、
「……行かなくては。この力が、必要だと言うならば。」
オレの中の覇王を蘇らせる。
金の目が輝く。力強いそれはまるで、
ガシャン!
漆黒の鎧は重い音を立てた。
残された者が触れると、空になった鎧は熱を持っていた。もちろんその熱は金属そのものが発している訳ではない。
「この鎧は、重すぎたんだ」
金に輝く力強い太陽さえも封じ込めた重い漆黒は、白い空間で消えることなく、ただ、置き去りにされる。
(表が太陽ならば、裏もまた)
……………………………………
最初の覇王は十代に合わせて「オレ」。復活後の覇王は二十代に合わせて「俺」。……としてみた。
>戻る