ダイスケ様より!



‐side→大人遊戯
目をパチリと開けたら、公園のベンチにいた。
少し頭が混乱する。何で公園にいるんだろう?
頭の中がごちゃごちゃだったけど、とりあえずアテムを探さないと行けないとオレは思ったから、ボクの事を宥めつつオレは立ち上がる。
混在する二つの意志にはもう慣れた。ボクはオレでオレはボクだ。かつて、千年パズルを組み上げたばかりの頃よりも、オレ達の意識は混線し、両者の隔てりなど無いも同然。オレの考えてることはボクに筒抜けだし、ボクが悩んでいることもオレには手に取るようにわかる。だがやっぱり別々の体で会えたら会いたいと思こともある。
オレとボクはたった1人の人間になりつつある。それは本当は自然なことなのだ。元々1つだったものが不本意の内に二つに分かれただけ。
ボクらの意志に反して、オレ達の魂は1つに戻ることを望んでいるのだ。

公園を歩き回るが、息子のアテムは見つからない。そもそも、この公園はどこの公園なんだ?
見たことがない公園だ。ますますボクは混乱した。

「アテム!どこにいるんだい!?」

その呼び声に反応した少年が1人。

‐side→アテム
突然の呼び声に驚いたオレは思わず肩を震わせた。手に持った缶のコーラが地に落ちる。アテムなんて変わった名前、オレしか聞いたことがない。何故なら出て行った馬鹿なエジプトかぶれの親父が付けた名だからだ。
しかもどこかしら親父に似た声にオレは緊張した。何で今更?という怒りと、もしかしたら連れて行かれるんじゃないかという恐怖がごちゃ混ぜになった。
遊戯がクレープ買いに行ってる時になんて事だ!
とりあえず、落ち着かなくては。オレは胸に手を当てながら落ちたコーラを拾い上げた。名前を呼んだ親父らしき人物はオレの方に向かってくる。撃退しなくてはと使命感に燃えた。
遊戯にとって親父は思い出したくもない過去の遺物だ。兄としてあいつを守らなくては!
オレはコーラを振りまくった。一瞬の隙さえ出来たら、クレープ買いに行ってる遊戯を連れて逃げ出せるからな。
体力にはそこそこ自信がある。元不良をなめるなよ。

そして肩に手が置かれた瞬間、そいつの顔にコーラを噴射させた。

「ちょ、アテムっ!!」

遊戯が叫ぶのを聞いた。

‐side→遊戯
ボクは愕然とする。だってアテムが知らない男の人にコーラのバーストストリームを食らわせてるんだもの!
ボクはクレープを持ったまま駆け寄った。バーストストリームの餌食になった男の人は噎せながら呻く。

「め、目が…ぱちぱちする…!!」

どうやら目にコーラが入ったらしい。凄く痛そうなんだけど、どうしたらいいのかな。とりあえず、走りよってきたアテムにクレープ押し付けて、呻く男の人に駆け寄った。

「だ、大丈夫ですか」
「そいつから離れろ!」
「何でさ!爆発するわけでもないだろうに!」
「そいつ親父だ!」

はぁ?とボクは顔をしかめた。何を言ってるんだ。

「この人のどこがボクらの父親なわけ?」

アテムにそういったら、アテムも駆け寄ってきた。そして顔を見た瞬間、猛烈な勢いで謝り始めたのだった。

‐side→大人遊戯
とんだ災難だ。急にしゃがみ込んで胸を押さえるもんだから、具合悪いのかと思ったらコーラぶっかけられた。
彼に悪気はないらしいからボクは別に良いんだけど、オレはかなり憤っている。とりあえず、クレープを貰ってしまった。

「あの、本当に…」
「気にしないでよ、仕方ないって」

それに怒るに怒れないのだ。ボクらにコーラのバーストストリームを喰らわせたのは、もう1人のボクもとい、アテムそっくりの少年だったのだから。それに名前まで同じだ。隣にいる少年はかつてのボクそっくりだ。
童実野町にこんな子達いたっけと思った。

「取り敢えず、この公園で小さい子見なかったか?肌が黒くて、オレに似てる…」
「息子さんですか?…うーん、見なかった、よね?」
「ああ、見てないな」

彼らは顔を見合わせていた。そう、とボクは俯く。もしかしたら家に帰っているのか?

「ごめんね、ありがとう。ボクは息子を探さなきゃ」

じゃ、と立ち去ろうとしたら、コーラをかけた方(ややこしいけどアテム君)が立ち上がる。

「手伝います、迷惑かけたし…」
「そうです、コーラかけちゃったし、放っておけませんよ」

ボクに似た方は立ち上がって見つめてきた。

「ありがとう」

ボクらはその好意に甘えることにした。

‐side→アテム
探すことになったはいいが、アテムと言う名と彼に似ているという情報しかない。
オレは頭をかいた。
どうにも、彼を見ていると変な感じがする。遊戯はオレに似てると言ってたが、オレは遊戯に似てると思った。
オレ達を見る目が、懐かしいものを見るような目だし。あ、もしかしたら遊戯を見て若い頃に似てるなんて懐かしんでいるのかもしれない。
彼からは悪意が感じられないから信用しても良さそうだし。

取り敢えず、遊具の中や茂みを探したがいない。家に帰ったんじゃないのだろうか?オレは木の上とかを探したが、やはり見あたらなかった。

「アテム君、大丈夫、もういいよ」

後ろから声をかけられ、振り向く。彼は笑いながら近寄ってきた。背はオレ達よりかなり高い。180はいってるんじゃないかと思う。

「多分先に家に帰ったんだろうからさ、ごめんね手伝わせて」

なんか不思議な感じだ。まるで、オレ自身に会っているような感覚にとらわれる。

「どうかした?」

尋ねられて気がつく。顔をじろじろ見ていたに違いない。

「いや、なんでもないです」

オレはぶんぶんと首を振った。彼は遊戯に似てるけど、目つきが鋭いんだ。優しいけど、遊戯より鋭い目をしてて、なんでも見通してしまうような感じに思えたし、遊戯やオレにはない威厳というか…威圧感があった。
そして、彼の首のネックレスを見た。彼が視線に気づいたのかネックレスを持ち上げる。

「これがどうかしたのかい?」

文字が刻まれているが、当然読めるはずがない。

「なんて彫ってあるんですか」
「アテム、って彫ってある」

アテム?オレは首を傾げる。息子さんの名前と言うことなのかと思ったら、違うみたいだった。

「親友だよ。そうだね、キミにそっくりだった」
「親友?その名前を息子さんに?」
「もういないし、ボクが尊敬する人物だったからね」

オレの名の由来は、父から直接聞くことは叶わなかったが、じーちゃんが言っていた。

「古代エジプトのファラオの名前、ですよね?」「よく知ってるね」
「オレの名前も、同じ由来だから…じーちゃ…あ祖父が昔、教えてくれた話があって」

彼が話の続きを待っていたから、オレは口を開く。

「あの、昔、うちの先祖っていうか…そのうちの1人がファラオの魂と共にいたって」

彼を見上げたら、彼は目を丸くしていた。

‐side→大人遊戯
昔?ボクらは混乱していた。

「その、人の…名前、は?」

喉がカラカラだ。かすれた声で聞けば、彼は不思議そうな表情をしながら続けた。

「遊戯、武藤遊戯。」

殴られたような衝撃が走る。彼は話を続けてくれた。

「弟はその人から名前をもらったんだ」

どういうことだ?いや答えは単純だ。
オレ達は未来に。だから、見覚えのない場所なんだ。
オレは腕時計を見た。デジタルの電波時計だ。だが、液晶が割れている。頭が痛い、どうしたんだいったい…?

‐side→遊戯
アテムと合流しようとしたら、アテムに似た男の人が具合悪そうだった。顔が真っ青で、頭を押さえている。
アテムが駆け寄っていた。ボクも走ってすぐそばに行く。

「ど…どうしたの?」
「わからない、だが、いきなり…」

アテムがかなり焦っているのが分かる。

「取り敢えず、ベンチに」

ボクとアテムは男の人を支えながらベンチに座る。頭を押さえたまま彼は何の言葉も発しない。だが、不意に口を開いた。

「…オレは…」

かすれた声だった。目が泳いでいて、まるで何かを思い出そうとしているような。ボクとアテムは顔を見合わせるしかなかった。

「ここは、童実野なんだね…?」

尋ねられて頷く。

「オレは、エジプトにいたはずなのに」

どういう事なのかさっぱり分からない。冷や汗をかいているみたいだけど、不意に質問をしてきた。

「さっきの話、それは昔の事なんだね?」
「あ、はい。そうです」

アテムが答えた。

「…弟くんは遊戯…ボクと同じ名前だね」

え…と、ボクは驚いた。アテムもみたいだった。

「ボクは武藤遊戯だ、カルトゥーシュに刻んである名のアテムと、共にいた…。アテム君、遊戯君、仲良くするんだよ」

そして、彼はこういった。

「ボクはここにいちゃいけない」

そういった瞬間、風が吹き、目を閉じてしまった。目を開けたとき、そこには彼は居なくなっていた。

‐side→大人遊戯
目を開けたら、真っ暗な場所だった。だが、呼ぶ声がする。ここがどこか一瞬分からなくなったが、遺跡の中だ。滑落して、下に落ちたのだ。頭を打ったから痛かった。

頭がガンガンする、また呼ばれた。ああ、探していたはずのあの子がボクを探している。

「…ここだよ−…」
「とーさん…!」

結構落ちたのかもしれない。アテムが滑り降りてきた。

「だいじょうぶ?」
「うん、心配ない」
「いま、マリクよぶ!」
「不思議な夢を見たんだよ、アテム」

アテムは叫ぼうとしてそれを止める。不思議そうに遊戯を見た。

「ゆめ?」
「うん。遠い未来に行った夢。そこで、自分にあったよ」

アテムは首を傾げた。

「ふぅん…よくわかんねー!」

ボクはクスクス笑った。アテムは上に向かって叫ぶ。

よかった。また、会えるのなら。

‐side→アテム
さっきまでいたのに、居なくなっていた。オレはさっきの言葉を思い出す。

「武藤遊戯…」

遊戯も不思議そうな顔をしていた。地味にホラー体験だ。

「遊戯?」
「さっきの人、もしかしたらさ」

遊戯は何かを言いかけて止めた。オレも何となく分かった気がする。きっと、会いに来たんだ。オレと遊戯に。

「ねぇ、あのペンダント、家で見たことあるんだけど」
「オレもだ」

善は急げだ。オレ達は家に帰ることにした。そして、多分物置の奥底に埋もれている彼のペンダントを見つけたい。

「ね、ボクらもデカくなれるってことだよね!?」

妙にうきうきしながら遊戯が言う。確かに、もしかしたら希望はあるかも知れない。

「しかもさ!細マッチョだったよね!?」
「…あれはそういう仕事してるからだろ」

オレは笑った。

大丈夫だ、オレ達のこと心配しなくても。仲良くやっていけるから。







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敬愛なる「yuruyuru」のダイスケ様から頂きました!
お正月の企画で、厚かましくもリクエストした私にこんな素敵すぎる文章ををを!!と、受け取った時はテンションが上がりすぎておかしくなりました。
ダイスケ様のサイトにはいくつものパロディがありまして、これまた一つ一つのクォリティーが凄まじく全部大好き過ぎるので、それらのクロスオーバーをリクエストさせて頂きました。
それぞれのパロディの遊戯さん達はもちろん似てるけど同じではなく、それぞれ魅力的で、読む度にダイスケ様の技量に脱帽する思いなのです。まだ読んでない方はすぐに読みに行くんだ!!
ちなみに後日「双子」の本編でこの話が絡んできた時はリアルに声をあげました。びっくりしたのと嬉しかったのとその他もろもろで。
最後に、あげるのが遅くなって申し訳ありませんでした。ダイスケ様、ありがとうございます!!



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