窓から見えた君の幻はとても元気そうでした。






馬鹿だな、と幸村はつぶやいた。

白い天井、白い壁、白いカーテン、白いシーツ、白い頬。たくさんの白に囲まれながら、幸村は馬鹿だなと繰り返した。


「何がだ?」

「なんでもないよ、ただ馬鹿って話」


だから何が馬鹿なんだという言葉は、唇に当たった体温にあっけなく飲み込まれていった。


「…ッ、理解しかねる」
「何が?」
「もういい」


顔をしかめてそっぽを向けば、くすくすと幸村はおかしそうに笑った。
一体本当に何なんだ。



「こうして空を見ると嬉しくなる」


四角く切り取られた空を見上げながら、幸村は目を細めた。


「何でだ?」

「この空の下のどこかで君が生きていると思うと、何だかとても嬉しいんだ」

「…」


素直に、哀れだと思った。

この果てしない空の下、そのどこかでせかせか生きている俺の幻想を探しているこいつを想像すると、それはあまりにも可哀想すぎた。



(全く、馬鹿はお前だ)


そんなことしなくても、俺はずっと側にいるだろうが。



fin.




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