まるで世界を焼き尽くすかのように鮮やかに燃える夕焼け空に溶けてみたいとつぶやけば、隣の彼は猫のような目を鋭くして、銀色に輝く瞳はこちらを痛いほどの視線で捉えた。


やばと冷たい汗が背中を伝う。

馬鹿げたことを言ってしまった…。


「どういう意味じゃ?」

「何のことです」


しれっと何もなかったかのように振る舞ってみるが、詐欺師には無意味だったようだ。


「おれに柳生の嘘はきかん」


こちらを捉える目が、怒りともいえるようにさらに細められた。


「どういう意味じゃ?」


強い口調に圧倒されるように視線を逸らすと、はぁと自然にため息が漏れた。


「ただそう思っただけです。気にしないでください」

「柳生が溶けてしまったら…おれはどうすればいい?」


さっきとがらりと変わった口調に驚いて顔を上げれば、視線を地面に落としてしゅんと小さくなった詐欺師がいた。


「柳生が消えてしまったら、おれは生きれん…」

「だからそれはただの理想であって現実にはならないので安心してください」

「おれはそんな風に柳生が思うこと自体が嫌じゃ」

「…」

「おれがいるだけじゃダメなのか?毎日一緒に過ごして、好きだって言って、キスして、セックスして、お互い愛し合ってるだけじゃ足りんのか?」


細くて白い腕が、悲しげに制服の裾をつかむ。


「なんでもしてやるけぇ、柳生が望むこと全てしちゃる。側にいて欲しいなら一生そばにいるし、消えろと言われたらすぐ死ぬ。だから――…」


まるで死にたいと言っているようだと、裾を握っていた腕はすとんと離れていった。


「死にたいなんて思っていません」


くすくすと笑いがこぼれる。


「あなたを置いては死ねません」


力のなくなった手を取ると、指に優しくキスを落とす。


「ほんとになんとなく思っただけなんです」


ほんとに?と不安げな銀色の瞳にうなずくと、キスをされた。


ためしたことなんて無いけれど、夕焼けの味ってこんな感じかななんて、珍しくセンチメンタルなことをきらりと眼鏡が眩しいデータ主義者は思った。





夕焼けセンチメンタリスト

(綺麗な夕焼けが、なんとなくあなたに似てたんだ)



fin.




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