「おい、日吉。ずっと俺様の側にいろ」

「…いきなりなんですか」


二人きりの部室。

部活の報告書を書く跡部さんと、自主練後の着替えをする俺。

何の前触れもなしに突拍子もないことを発言するこの人にはもう馴れた。


「ずっと側にいろ」


紙にすべらせるペンを止めて、薄いフレームの眼鏡越しに睨まれる。

その視線に制されるように、ジャージの上着を脱いだところで着替える手を止めた。


何でも手に入れることができるからこそ故の、モノへの執着の無さもまたこの人の特徴だった。そんな彼が、自分をこんなにも縛り付けようとしている。(きっとこの人は無意識のうちなのだろうけど)

そんな優越感。


なんだかそれがたまらなく気持ちよくて、「キスしてくれたら考えます」なんていつの間にか取っていた挑発的な態度に、上等じゃねぇかと彼が眼鏡を机に置いて立ち上がった姿に漂う妖美な雰囲気にどきりと心臓が脈打った。



もう少しだけ優越感に浸っていたくて、別にそんなこと言わなくてもずっと側にいるよなんて言うのは、もう少し後にする。



束縛呪文

(あなたに会ったときから既に捕らわれていますが何か?)





fin.




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