キミ欠乏症、なので 〔1/2〕








後ろから迫るウルフの群れ

数が多く、一人の少女じゃ適いもしない




息を切らして走る少女は、聞こえるウルフたちの声に、スピードをあげる

追い付かれて、もうだめだと思った瞬間、体が宙を浮いた




「…きゃっ!!」




いや、落ちたのだ

ずさささっと激しい音をたてて落ちる彼女を見て、ウルフの群れは諦めたのか翻してった



「…っ…あ、なんとか…にげれた……?」



ツキン、と右足が痛む

血がたらりと草木を染める



「……ーっ…ど…しよ」



碧色の瞳が、ゆらゆらと揺れた





























淡い紫がいない

純粋な彼女がいない

碧色の瞳が、ソプラノの静かでふわふわした声が、いない





つい、探してしまう

彼の瞳は彼女を求めていた

見つけたら、抱き締めて困らせてみようか

だけど、いない…淡い紫がいない







いつもは呆れるほど傍にいるというのに

何があったんだろう、とふとジェイは考えた



(貴方がいないと、なんだか変だ)

(依存してる、それは自分でわかっている)

(可笑しいくらい、僕も変わったものだ)





なんか会いたいな




(どこにいるんですか、まったく…)






「あ、ジェイ!」

「…カノンノさん」




名前を呼ばれて振り返れば、パタパタと走ってくるカノンノがいた



「クラルテ知らない?見当たらなくて…」

「いや、僕も見てません」

「じゃあ、まだ帰ってきてないのかな…」




うーん、と唸りながら考えるカノンノは、ぽつりとそう呟いた、

もちろん、ジェイはそれを聞き逃すことはせず、眉を寄せてカノンノに「どこかに行ってるんですか?」と尋ねた




「朝食の後にあったとき、話してたの。ちょっと依頼に行ってくるって…一人だったから簡単なやつだろうけど……」

「…もしかして、依頼に出かけてから…帰ってきてないのですか?」

「アンジュも見てないし、一応船内を探したんだけど…どこにもいなくて」




カノンノがそう言ったのを聞いて、ジェイは呆れたように息を吐いた



まったく…、あの方は…



頭痛がしてきた気がしたが、気のせいということにして、ジェイはまたカノンノに尋ねる


「カノンノさん」
「なにかな?ジェイ」

「…仕方ないので、ちょっと間抜けなディセンダーを迎えに行くんで依頼に出かけた場所を教えてください」

「コンフェイト大森林だよ。…クラルテのことが心配だもんね」

「…別に、そんなんじゃ」

「…わたしも行きたいけど、掃除当番だから…。ジェイ、お願いね!」





呆れたように見えるが、きっと心配してるのだろう
彼は素直ではないのだから













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