「で?」 問い詰める俺。 正座のまま陳列して冷や汗をたらすレギュラー馬鹿三人。もとい丸井と赤也とジャッカル。 そして、俺の横には。 うっすら涙目の可愛い可愛い俺の恋人。 「どうして花月が泣いてるのかな?」 「いや、それはだな」 「妙な口答えしたらタダじゃ置かないよ」 「えええ理不尽!!あ、いやなんでもないですはい」 何やら口走ろうとした丸井を睨みつけると、彼は再び黙った。 どうしてこんなことになったのか。 事態は十数分前に遡る。 いつも通りに授業が終わり、俺は部室に足を運んだ。 ちなみに、花月は隣のクラスで、今日はそっちのHRがかなり早く終わったらしく、廊下から「先に行ってるね」と口パクで伝える姿が可愛くて思わず顔が緩んだのはまだ記憶に新しい。 それからだ。部室のドアを開けると、そこには。 仁王に抱き着く花月。可哀相にのぅ、よしよし、と彼女を慰める仁王。そんな二人の後ろにどこか必死なというか焦った感じの馬鹿三人。そして問題なのは。 花月がちょっと泣いてたというその一点。 とりあえず、慰めてる仁王は悪くないはずだ。その少し遠くで眺めている真田と柳も、まぁ傍観は苛立つが直接関係はないだろう、後で真田でも睨んでればいい。 と、いうことは自動的に、この一連の事態の根源は若干青ざめた顔で俺を見ているこの三人というわけで。 そして、冒頭に至るわけだ。 「お前たちが泣かせたのか?」 「いや、だから」 「はいかいいえかで聞いてるんだけ「あ、あのねっ、精ちゃん!」」 話に割って入ってきたのは他でもない花月で。うろたえながらあのね、と繰り返す。可愛くって仕方がない。優しくどうしたの?と尋ねる。この際、ジャッカルのさっきまでと態度が違ぇ、っていう発言はスルーだ。 「あのね、みんな悪くないの」 「?」 「えっとね、今日、部室に来たらね、ちょっとおっきい…く、蜘蛛がいてね、みんな頑張ってそれを追い払おうとしてくれて、でもなんかこっち来るし、怖いし、怖いし…怖いから、思わず仁王くんに抱き着いちゃって、そしたらそこに精ちゃんが来て、それで…」 「花月…」 「だ、だから、みんなのこと怒らないで…?心配かけてごめんね、精ちゃん」 しゅん、という効果音が聞こえそうなほどに困った顔の花月。 そんな様子すら可愛いと思ってしまう俺はもはや病気だろうか。 「…分かった」 「精ちゃん!」「部長!」「幸村くん!」「幸村!」 「お前たちが花月を泣かせた訳じゃなかったんだね。でも…」 「で、でも…?」 「立海のレギュラーが3人がかりで蜘蛛も捕まえられないだなんて、そんな不甲斐なかったなんてね…フフフ」 「精ちゃん、バックが、バックが黒いよ!?」 「今から走り込みにでも行ってもらおうか。学校周り100周くらい」 「ええええぇえぇぇぇ」 涙の理由 (あいつらも憐れなものだな…) (幸村もなかなか酷なことをするな) (え、何言ってるの。お前たちも例外じゃないよ?) (え?) (僕の可愛い花月が困ってるのに無視したんだろ?はい、100周) (…………ええええええええええ!?) ------ 多分助かったのは仁王とまだ来てなかった柳生だけだったと思う。 幸村くんはやや横暴に限りますwww ←→ |