ゼロスルート
救いの塔(犠牲イベント)前





「ハニ〜!!」

「うわっ!?ゼロス…急に抱きついてくるなよ…」

「おいおい…俺様の愛情表現に向かって、その言い方はないだろ〜?」

「はいはい」


そうやって、いつものように軽くあしらわれる。いつもだ。こんな風に、こんな会話をして、こんな風に俺を払いのけて。

ホント、こいつは…ロイドは………ジーニアス以上にガキんちょだな。誰でも簡単に信じやがって、疑いの一つも持たねぇ。こんな甘いガキんちょ、始めは好きじゃなかった。

そう、始めは。

何でだろうな…ロイドのこと…好きになっちまったのは…ああ、そうか…俺は…この甘さが好きなんだ。誰でも簡単に信じ、表裏なく接するところが、好きなんだ。俺を俺として受け入れてくれる。そんなところ全て…好きになったんだ。


「ロイド君…俺様のこと、信じてる?」

「なに言ってんだよ。当たり前だろ?俺は皆を信じてる」


ロイドは当たり前のことのように言ってくる。俺、おかしいこと言ってねぇだろ?そんな顔をしている。ホント…こいつは甘くて可愛いガキんちょだよ…。


「ハニー…」

「さっきから何だよ…いい加減に……っ!?」


ロイドが振り向いた瞬間。後ろからじゃなくて前から思いっきり抱き締める。そして…そっと、唇を重ねる。意外にも抵抗はなかった。多分…向こうは俺様のいつも以上の愛情表現に驚いてるだろう。少し長めのキスをしたあと、目を合わす。その瞬間、ロイド君はすぐに目を反らした。まだまだガキだねぇ…。


「なっ…何するんだよ、急に…!!」

「俺様の愛情表現…って、さっきから言ってるだろ?」

「だからって、これは…!!」


あ〜あ…顔真っ赤にさせちゃって…可愛いね〜。そんなところも全部、俺は愛してやるよ。愛して、愛して…俺に夢中になればいい。俺様はロイド君に夢中なんだからよ。


「ハニーってば、可愛い〜!!」

「う、うるせぇ!!」


全て終わるまで、後少し。守ってやるさ。ロイド君を。甘いガキんちょを。愛しい奴を。だから、少しだけ、裏切らせてくれよな?少しだけ。すぐに帰ってくる。だから…いいだろ?帰ってきたときは、お前の笑顔で俺を迎えてくれよ。少し泣き顔なら、もっといいな。


「ロイド君…」

「な、何だよ…」

「いや…やっぱ、何でもない」


口には出さない一方的な約束。ロイド君はきっと、守ってくれる。そう、信じてるから…あえて、口には出さない。そうかも、しれないな。





一方的な約束
望み通りに迎えてくれた