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今日はマルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下の結婚式。誰もが喜ぶことだった。性別が男でも…そう…その相手は…。


「ルーク」
「あ…ジェイド…」


花嫁の衣装を身に着けたルーク。ルークこそ…陛下の花嫁。


「へ、変だろ?男の俺がこんな格好しちゃ…」
「いえ…とても素敵です」


私はルークの左手を手に取り、甲に口付けを落とす。

素敵すぎて…このまま奪い去ってしまいたいぐらいだ。


「ジェ…ジェイド…!!陛下が見てたら…」
「これは挨拶のようなものですよ」


けど、そんなことは許されない。私は陛下に仕える者。ルークはその花嫁。誰にも許されない。


「なぁ、ジェイド…」
「何です?」
「俺が結婚すること…どう思う?ジェイドも…喜んでるのか…?」


『いいえ』

そう言えばいいもの。けど、そんなこと…私には言えない。私は…何を言うべきなのか…?


「ええ。そうですよ」
「そっか…」


ルークは今にも泣きそうな顔をする。


「ルーク…?」
「俺…嫌なんだ…」
「嫌とは…?」
「陛下と…結婚するの…」


ルークの目からは大粒の涙が零れ落ちる。そして、私に抱きついてきた。


「ルーク…」
「だって、俺…ジェイドのこと…」


ルークがその言葉を言い終える前に私はルークの口を塞いだ。軽く口を塞いだ後、深い口付けへと誘っていく。


「んん…ジェイ、ドォ………ふっ…ん…」


そっと唇を離すと、目の前には涙で顔を濡らしているルーク。彼の目が私をじっと見つめていた。


「ジェイド…?」
「今更…もう戻れませんよ」
「え…!?」
「貴方は一国の王の花嫁…もう戻ることは許されていない」
「…ッ…!!…そう、だよな…」


ルークは私から離れる。そして、腕で涙を拭いた。


「ごめんな、ジェイド…俺、行ってくるよ!!」


ルークは笑顔を向ける。作ったような無理やりな笑顔を。そして、反対方向に歩き出す。


「ルーク…!!」
「!?」


ルークの腕を掴み、その足を止める。ルークは目を見開きながら私の方に顔を向ける。


「愛してます」


彼だけに聞こえるぐらいの声でそう言った。そして、そのまま手を放し、ルークに背を向けて歩く。

もし、私があそこで引き止めていれば…なんて…後悔しても遅い。彼はもう…遠い存在。





紅き目から零れるもの
涙を流すのは初めて?





久々に大好きなMIDIサイトの大好きな曲を聴いてたらこうなりました。