※達磨、嘔吐表現がございます




また同じ夢を見た
洗面所へと駆け込み胃の中で溜まったもやもやを消化し切れていない昨晩の夕飯の食物と一緒に吐き出す。喉が熱くなるのを感じ気持ち悪さから片手で熱くなる喉を握り締める、その行為に対して意味は無いがここ最近吐き出すようになってからの癖だった
完全にはすっきりしていない胃を掌で擦りながらキッチンへと向かい冷蔵庫からペットボトルに入った水をキャップを外し喉を洗い流すように流し込んだ。妙な酸っぱさを感じ顔が歪む
最近定期的に睡眠を妨害されるように同じ夢ばかり見ていた、手足の無くなった己が誰かに世話をされている夢、誰かがもっているレンゲに口をつけ食べている己のみすぼらしい姿が映し出される夢、有り得ない事だというのはわかっているのに妙は嫌悪感に包み込まれ吐きたくなる、新羅の話ではストレスや仕事の追われから見る幻覚、のようなものだと確か言っていた
不意に玄関のチャイムが鳴ったのが聞こえ波江が来たのかと玄関へ向かいドアノブを捻るとそこには暫く顔を見ていなかった紀田正臣が居た、どうやら三ヶ島沙樹は一緒に居ないらしい、気分はあまりいい状態では無かったが追い返す理由もない為居間へと招き込んだ。指示されるがままにという言葉適するように正臣君は己の指示に従うように指差したソファへ腰を掛けた。己はと言えば向かいのソファに重い体押し掛けるようにして座り楽な態勢を取った


「今日は助手が居ないんだ、お茶が出せなくてごめんね」
「いえ、大丈夫です。手短な事なので」
「そう、なら良かった。で、話しって何かな?」


早く話とやらを済ませ足りなり睡眠を取りたかった。今の己には正臣君が重大な話を今からしようとしていても睡眠の方が大事であった、睡眠不足は仕事のトラブルの原因になりかねないからだ


「暫くこの家に居座らせて下さい」
「…ああ、そんな事か。適当な部屋使っていいよ、俺寝るから」
「わかりました」


なんとも彼らしくない素直な返事だったが気にはならなかった、胃のもやもやは消えぬ儘俺は寝室に入りベットへ倒れこむようにして眠りに入った

何時間くらい寝たかはわからない、起きると窓からの日差しで夕方だとわかった。喉の渇きに不快感を水を飲みにいこうと覚え起き上がろうとするが、起き上がれない
暫く起き上がれない儘横になっていると正臣君が寝室の中へと入ってきた、手には火傷をしないように布越しから持ち手を掴んで小鍋を持ってきている。ベットとなりの棚に一度その鍋を置くと正臣君は寝室を出てどこかへ行ってしまった
だが直ぐにコップと水の入ったペットボトルに器とレンゲを手に戻ってきた。手にしている物全てを小鍋の置いてある棚に置くとベットの横に常に置いてある椅子に腰を下ろした


「正臣君、ご飯」


自然と口から零れた言葉、正臣君は己に両手を近付けると体を起こし背を壁に支えさせた。手際よく鍋の蓋を取り器へレンゲでおかゆを移した正臣君が器の中から軽くレンゲでおかゆ掬い己の口元へそっと寄せた
己はそのレンゲが掬ったおかゆを咥内へ含ませると軽く噛んでから喉へ流し込んだ


「美味しいですか?」
「…お水ちょうだい」


無駄な会話はしなかった、コミュニケーションを取ろうとは思わなかった。それから食事を終えると正臣君は鍋などをかたしにキッチンへ向かったがまた戻ってきた
手には数錠の薬、新羅から精神を落ち着かせる為に処方された薬だった
正臣君はそれを咥内へ含ませ水を少量流し込むとゆっくり己に近付き唇を重ねた、舌で薬が己の咥内へ移される。薬の苦さが咥内へ広がり吐き気がする。暫く長い口付けが施された。己は施される口付けに対し何とも思わなかった


「臨也さん」
「俺は、ハッピーエンドなんて望んでないよ、このままで良いんだ。幸せなんていらないよ、永遠にこのままで良いんだ、これが俺に託された運命なんだから。俺はなんとも思わない、俺は辛いなんて、思ってない…」
「嘘、つかないでくださいよ」


頬を撫でられた、頬が濡れているのを感じる、だが限りなく気のせいに近かった。正臣君の手が頬から頭、ゆっくり髪を宥めるようにして撫でている、高校生に宥められている己が惨めで仕方なかった


「最近、昔の夢を良く見るんだ。足も、腕もあった頃の夢。こんな事言ったら変だけど、仕事に終われてる事が幸せだった」
「臨也さん、」
「今は、生きてる意味がわからない。毎日、毎日、毎日、同じ夢ばかりみてる。ずっと寝てるのに、睡眠は浅くて、寝た気がしないんだ」
「臨也さん、」
「きっと今まで阿呆な事ばっかりやってたから天罰を食らったんだね。これからずっと俺は人の手を借りて生きていくんだね、情けないよ、ねえ」
「臨也さん、疲れてるんですね。そろそろ寝ないと」


ゆっくり体が再びベットへ横にされる、先程まで頭を撫でていた掌が瞳を覆った、ゆっくりと目蓋を降ろすとまた同じ夢を見た




おとぎ話なんて死んじゃえ!
(世の中おとぎ話みたいにそうハッピーエンドには繋がらない)
(結局はバットエンドで終わってしまうんだ)
(臨めないハッピーエンド)
(臨まないバットエンド)



2010.08.28

主催企画"死ねば良いのに、"へ提出しました


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