※泉井兄弟過去捏造




大嫌い、そんな言葉何時から覚えたのだろうか、兄が小学生の頃上履きを隠されたと家に泣いて帰ってきたのを今でもはっきり覚えている。当時己はまだ幼稚園に通っていた歳であった。兄は小学5年生、その時から悪餓鬼だった兄は同じ年代の子からも嫌われておりついに虐めを受けるようになってしまった。そして家に帰ってきた兄は泣きながら上履きを隠されたと母に訴えていた、すると母は受け流すようにまた買ってあげる、とその一言のみを告げた。自分にはその言葉がまるで兄を見捨てるかのように聞こえたのはまだ己が小さかったからなのだろうか、もしかしたらその時母が兄にもっと気を張っていれば兄はああやって道を外さなかったのではと考えた

「クル姉、もう帰ろうよ」

補習を終えると教室には折原の妹二人が床に這うようにして四つん這いで何かを探していた。よく見ると折原姉の方は上履きを履いておらず未だ続いていた虐めにより上履きを隠されたのだろうと確信をした。折原姉の方は必死に探す様子であったが折原妹の方は完全に探す事に飽きてしまった様子であり床に横になっていた。ふと折原妹はこちらに気付いたのか横になりながら大きく手を振ってきた

「あ、黒沼くんだ!やっほー」

一々デカいアクションだった為無視する訳にもいかずああ、こんにちは、なんて挨拶をすると折原姉も己が居る事に気付いたのか這うような形から上体を起こし此方に小さく一礼をした。ここは気にせず机の上の鞄を取り足早と帰るべきか、一緒に上履きを探すべきなのだろうか、答えは一つであった。ゆっくりと他人の机に歩み寄り椅子を後ろに引いては机の中を覗く、その行動に折原姉は気付いたのか小さな声で探さなくても大丈夫だから、と己に告げ横になる折原妹を連れては何処かまた違う場所に探しに行ってしまった
教室に一人取り残されたしまった己は仕方なく折原双子が隅々まで探してたであろう教室を端から端まで歩き渡り隠してありそうな棚などを探すが結局上履きは見付からなかった。きっと犯人は相変わらず虐めの好きな女子の仕業だろうと直ぐに確信した。けれど何処にあるかはやはりわからなかった
暫く教室で探さずにぼーっとしていると折原双子が帰ってきた、折原妹は折原姉の背中を軽く叩きながら新しい上履きならまたイザ兄が買ってくれるよ、と慰めていた。一方の折原姉は下を俯きながら小さくぼそぼそと何か喋っているように感じられるが何を喋っているかはわからなかった

「あ、黒沼くんまだ居たの?もしかして、」

折原妹は此方に気付き驚いた顔で己を見つめた、己がもしかし今の今まで教室を探していたのでは、そう思ったに違いない。もしかして、その続きを折原妹は言わず口を閉じた、隣の折原姉は此方を見て小さくお礼をした
だが己はこの儘帰っていいのだろうか、何故か上履きが見付からないのが気に障り中々学校から帰る事が出来なかった。折原双子は机の上の鞄を持ち帰宅を始めていた。どうしたら良いのだろうか、己は

「ま、待って…!」

自分でも何してるんだろうって正直思った、寧ろ相手は引いていたのではないかと後で思った。慌てて己の上履きを脱ぎ手に持てば折原姉に近付きそれを折原姉の目の前の床に置く

「これ、先週洗ったから、あげるよ。だって、上履き無いんだろ、あげるから」

無理矢理押しつけるようにしてそう言い残し靴下のみを履いた足で廊下を走っていった。廊下は冷たく妙な違和感に自然と眉が寄る。だがこれで良かったのかもしれない、折原姉を見ていると昔の兄が頭から離れなくなっていたのはあの時兄を救ってあげる者が居なかったから兄は道をはずしてしまったのだと多少ながら何かを思っているからであり、上履きを隠された折原姉をどんな形でも良かったから救ってあげられるような事をしたかった

(今日、帰り上履き買って帰らないと…)

だから、次第と折原姉に恋が芽生えていく気がした




上履きから恋心
(黒沼くん昨日は有難うね!)
(え、何で?)
(クル姉喜んでたんだよ)
(そ、そっか)




2010.07.10


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