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104期と王様ゲーム再び


 だから!! どうして!?
 このメンバーで集まると結局このゲームに落ち着いてしまうのか……

 前回あれほど懲りたというのに、また王様ゲームに巻き込まれてしまっている私は、バッグの中のおやつをすべて差し出すよう命令したサシャ女王の手から、束ねられた割り箸の一本をまた摘もうとしている。
 席を外すことなど許さないと言わんばかりの盛り上がりをみせる中、半ばやけくそで引いた割り箸には「3」の文字。

「じゃあ……2番の人はこれから語尾に『にゃん!』をつけてね」

「さすが私のクリスタ! 命令まで可愛いな、結婚してくれ!」

「もう! ユミル!」

「おーい! 誰だよ2番!」

 あぶないあぶない……
 2番でなかった私は胸を撫で下ろし、これがミカサだったら鼻血噴き出しながらジャンが卒倒するんだろうな、とか、アニだったら挙動不審なベルトルトの冷や汗半端ないんだろうな、なんて、それぞれのわかりやすい反応を微笑ましく思いながらひとりほくそ笑んでいた。

「ぼ、僕だ……にゃん……」

 ガシャーン!!

「ナマエーーーー!!!?」

 か、完全に、油断していた!
 さすが優等生は「おい!『にゃん』忘れてんぞ!」なんてつっこまれることなど無い!
 机に突っ伏したまま指を差して笑う面々を恨みがましく見上げる。
 命令を下したクリスタに謝られ、大丈夫かと気遣われてしまい……余計に居た堪れなくなって、きっと赤くなってしまっただろうおでこを擦りながら身体を起こせば、ユミルがチェシャ猫のような顔で笑っていた。
 ……ユミルがこんな顔で笑う時は大概ろくなことがない。

「マルコならちょうどよさそうだな」

「何がちょうどいいんだ……にゃん」

「ほらよ。これ、オプションにやるよ」

「なっ、それは命令と違う! ……にゃん!?」

 こういう時だけは息の合うふたり──すばしっこさでは右に出る者のないコニーが、ユミルの取り出したものをすかさずキャッチする。
 いつの間にかマルコよりがたいのいいライナーとベルトルトがそれぞれ両腕を取り押さえ、マルコに被せられたものに、私は再び顔を覆って身悶えることになってしまった。

 黒い猫耳のカチューシャは黒髪のマルコにぴったりで……
 むすっとしていてもマルニャンは最高にキュートだった。

「クリスタとハロウィンに使ったんだよ。クリスタの白猫、可愛いったらなかったぜ!?」

 確かに白猫クリスタは可愛かっただろうけど……若干悔しそうな顔をしたライナーが力無く腕を解放したところでもはやカチューシャを外そうとはしない、この観念したマルニャンの可愛さといったら!
 ついついお腹を出してあお向けに寝転がるマルニャンを想像してしまい、頬がだらしなく緩んでしまう。いけないいけない。

「でもユミル、よく持ってたね?」

「まぁ、こんなこともあるかと思ってな。残る黒髪は……と」

 ぐるりと見渡すユミルの視線の先には、エレンに関わること以外は無関心のミカサと……察しのいいベルトルトが早くも怯えている!

「それ、やるよ」

「え? い、いらない……にゃん」

「あんたじゃないよ、マルコ。ナマエに、だ」

「私?」

「物欲しそうな顔しやがって……せいぜい楽しめよ! 猫プレイ」

「!!!?」

 こちらに背を向けて片手をひらひらと振り、もう片腕をクリスタの肩に回し去って行く、勝ち逃げ状態のユミルを呆然と見送ってしまう。
 ユミルに対して否定しようにも、マルニャンの可愛さにすっかり骨抜きの私はぐうの音も出なくて……
 ユミルはそんな私を振り返り、にやりと口の端を吊り上げるとさらなる追い打ちをかけた。

「マルニャンは発情期だったりしてなぁ? なんならしっぽも要るか?」

 

 マルコと並んで歩く帰り道、やっぱり今日も散々な目に遭ってしまったと、隣のマルコに気付かれないよう小さくため息を吐く。

「ちょっと赤くなっちゃったね?」

「おでこ?」

「うん。……大丈夫?」

「大丈夫。でも今日は念のため冷やして寝るね」

「そうだね、そうしたほうがいい。
 でもさ、ナマエ……すっごい笑ってたよな?」

 こちらに怪訝な顔を向けるマルコに慌てて首を横に振る。めめめ……滅相もない! 決して笑ってなどいない! けれど、猫耳マルコが可愛くて、ぶつけたおでこが痛むはずなのに、にやけちゃっていたのは事実だ。

「僕はこれ、ナマエのほうが似合うと思うんだけどなぁ……」

「え?」

 おもむろにバッグから取り出した猫耳を手にするマルコに顔を覗き込まれ、そのにっこり細められた金目の距離に狼狽えた隙に……そっと被せられる猫耳。

「ふふっ! やっぱり可愛いなぁ、ナマエにゃんこ」

 マルコを見上げる顎の下をくすぐられ、硬直してしまい……猫耳を外すことすらままならない。
 そんな、まだまだスキンシップに慣れない私の様子をもう一度、可愛いと笑ったマルコに猫耳は外されて、頭を撫でるように髪を整えられる。

 擦り寄るでもなければ引っ掻くでもない、ただただしっぽを爆発させる私の手を引いて、再び歩きだすマルコが私の耳元にそっと囁く。

「これはまた、あとで……ね?」

 ちりりん、と耳の奥で首輪の鈴が鳴った気がした。



 猫の日を記念し、ナンジャにマルコがいなかった腹いせ(笑)も兼ねましたが……アンケートにて王様ゲームが好きだとお教えくださいました方へ。
 王様と聞くとDNAレベルで逆らえないマルコです。


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