濡れ鼠とコニーのこぼれ話 「さっきは悪かったな、ナマエ。 なあ、髪、拭いてやるよ!」 鼻の頭に皺を寄せ、白い歯を見せて、悪戯っ子然として笑うコニーの突き出した手には……タオルが握られている。 人を見掛けで判断するのはよくない……うん。 よくないことはわかっているんだけど、彼の髪型からとても髪の扱いに慣れているとは思えなくて…… でも、せっかくのコニーの好意と申し出を断ってしまうのも気が引けて、髪がくちゃくちゃになることを覚悟して、お願いした。 ……ところが、だ。 覚悟を決めてコニーの前に座ったはずなのに「はい、一名様ごあんな〜い!」という気の抜けたアナウンスと共に、タオルこそちょっと荒々しく頭に被せられたものの、額の生え際からこめかみ、つむじに向かって指先を心地のいい強さで揺すり動かしてゆき、毛先は束ねてタオルで包み、ぽんぽんと叩くように水気を取っていく。 ちょっと音痴な鼻歌混じりの優しい手つきはまさに的確で、繰り返されているうちに、その心地よさにうっとりと目蓋が落ちてくるほどだ。 コニーの手つきに朦朧としながら……つい、本音がこぼれてしまう。 「……意外……」 「おま……失礼な奴だな! 俺、まだ髪生えるし!」 「う、うん、それはわかるよ」 「それに俺、田舎に弟や妹がいるんだ」 「そうなんだ……コニーはお兄ちゃんなんだね」 「おう! 弟や妹の髪、いっつも拭かされてたからなぁ…… あー懐かしいな、あいつら元気にしてっかな」 「コニーの弟と妹だもん、きっと元気だよ」 「それもそうだな!」 ◇ そんな二人の姿を遠目から「よしよし、仲直りもちゃんとできているね」と、にこにこ見守るそばかす君の姿がありました! |