weekendcitron | dream | ナノ
濡れ鼠とコニーのこぼれ話


「さっきは悪かったな、ナマエ。
 なあ、髪、拭いてやるよ!」

 鼻の頭に皺を寄せ、白い歯を見せて、悪戯っ子然として笑うコニーの突き出した手には……タオルが握られている。

 人を見掛けで判断するのはよくない……うん。
 よくないことはわかっているんだけど、彼の髪型からとても髪の扱いに慣れているとは思えなくて……
 でも、せっかくのコニーの好意と申し出を断ってしまうのも気が引けて、髪がくちゃくちゃになることを覚悟して、お願いした。

 ……ところが、だ。
 覚悟を決めてコニーの前に座ったはずなのに「はい、一名様ごあんな〜い!」という気の抜けたアナウンスと共に、タオルこそちょっと荒々しく頭に被せられたものの、額の生え際からこめかみ、つむじに向かって指先を心地のいい強さで揺すり動かしてゆき、毛先は束ねてタオルで包み、ぽんぽんと叩くように水気を取っていく。
 ちょっと音痴な鼻歌混じりの優しい手つきはまさに的確で、繰り返されているうちに、その心地よさにうっとりと目蓋が落ちてくるほどだ。

 コニーの手つきに朦朧としながら……つい、本音がこぼれてしまう。

「……意外……」

「おま……失礼な奴だな! 俺、まだ髪生えるし!」

「う、うん、それはわかるよ」

「それに俺、田舎に弟や妹がいるんだ」

「そうなんだ……コニーはお兄ちゃんなんだね」

「おう! 弟や妹の髪、いっつも拭かされてたからなぁ……
 あー懐かしいな、あいつら元気にしてっかな」

「コニーの弟と妹だもん、きっと元気だよ」

「それもそうだな!」

 

 そんな二人の姿を遠目から「よしよし、仲直りもちゃんとできているね」と、にこにこ見守るそばかす君の姿がありました!


[ back ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -