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マルコに恋愛相談


 「う〜ん……じゃあ、照れずに伝えられるようにさ、僕が練習台になるから、あいしてるよゲームなんて……どうかな?」

「う、うん……」

 それは……実は相当、私にとって分が悪い。
 何を隠そう私がなかなか思いを伝えられないと相手も明かさず相談しているのは目の前にいるマルコ、その人なのだ。
 今も一応、男女の色恋沙汰の相談なのだから、人もまばらになった夕食後の食堂の片隅で。
 人気者のマルコのまわりにはいつも誰かしらいて、マルコをひとり占めするのはなかなかに苦労する。

 だから、考えてみればこれはチャンス……なのかもしれない。
 しかもゲームなのだから、もし仮に何かあったとしても冗談で済ませることができる……はず!
 そうよ、女は度胸っていうじゃない!?
 ええーい! ままよ!
 息を吸って、吐いて、吸って……

「マルコ!」

「ん?」

 細められた、ハチミツみたいな優しい瞳。
 うっ、そらしちゃ……駄目!

「好き……です。……大好き!」

 にっこり、私の大好きなマルコの笑顔。
 ああ、それ、反則……

「ナマエ、僕も、愛してるよ」

 そばかすの散った頬を赤らめて。
 それでも真摯な瞳で、真っ直ぐに……

「……!!」

 馬鹿馬鹿! 勘違いするな! 私の頭!

 これじゃあゲームを続けられないどころか、余計にマルコを困らせちゃう……

 それなのに……
 瞬きする間もなく頬を伝っていく涙が止まってくれない。

 好きだよ、マルコ。

 切ないよ……

 ほんのお遊びだというのに、しかもマルコにとってはただ私の相談に付き合ってくれているに過ぎないのに。
 こう、いとも簡単に掻き乱されてしまうほど、臆病な私の心は脆く、危うくなってしまっていたのか……
 ああ、早く冗談だって笑わなきゃ!

 ……でも。
 マルコはいつか可愛い女の子に、こうして思いを伝えるのかぁ……

 はぁ……辛いなぁ……

「ごめん! ごめんねナマエ!
 僕が……ずるかったね」

 泣かないで……なんて。
 駄目、謝ったりしないでよ。
 心配そうに顔をのぞきこんで、そんなに優しい指先で、涙を拭ったりしないで……

 脈無しなんてそんなこと、今まで馬鹿みたいにマルコ本人に相談してきた私がいちばんよくわかってるよ。
 でも、そうまでしてでもマルコと一緒にいたかったんだ。
 マルコの優しさを利用するようなことして、私こそ……ごめんね。
 だから、自業自得だけど、謝られたりしたら余計に惨めで……辛いよ……

「僕もたぶん……ナマエと同じ思いでこんなことを提案したんだ。
 ナマエがどんな顔をして、好きな奴に思いを伝えるんだろう……って。
 そう考えたらすごく……嫌だったんだ。
 だからせめて、ナマエに思いを伝えられるラッキーな奴より先に、君の告白を受けてやろうと思ってね。

 ……ははっ、情けないよな。
 はじめはね、ナマエが幸せになるのならって、身を引くことも厭わなかったんだ。
 それなのに、やっぱり……辛くてさ。

 だから今、僕の勘違いでなければすごく……嬉しい。

 ごめんね、僕が意気地がなかったばっかりに。
 だから……泣かないで、ナマエ?」

 混乱してしまい、ますます涙のとまらない私にゆっくり、ゆっくりと、言って聞かせるように話すマルコに。

 嘘で武装して、肩肘張るのもやめて。
 素直になってしまえば……

 涙とともに溢れ出すのは……

「好き、好きなの……大好き! マルコ!」

 ……自然と告げられる思いだった。

「僕もだよ、ナマエ」なんて、また微笑まれれば、抑圧されていた思いの反動のように、私は勢いよくマルコに抱き着いていた。
 びくともせずに抱き留めてくれた逞しい腕は、どれだけ願っても叶わない、決して与えられることのない温もりだと思っていた……

 はぁ……しかし、そばかすの可愛いベイビーフェイスのくせしていい体つきって……このギャップ、反則!

 マルコの首っ玉にぎゅうぎゅうとしがみついて、楽しそうに笑うマルコの両腕もしっかり私の背中に回されている。
 いちゃいちゃしながらもちゃっかりマルコの肩越しに見渡した食堂には、かなりまばらとはいえまだ残っている人はいて……あーあ、みんな何事かとこっちを見ているからきっと明日の朝にはみんなに知れ渡っちゃっているんだろうなぁ……

 

「はぁ……やっとかよ。
 もどかしかったぜ、マルコ」

 あ、あれっ?
 私達、そんなにあからさまだったの!?



女は度胸ではなく「愛嬌」ですよね!

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