シンカガ編
お昼休み、シンとカガリは屋上でお弁当を食べていた。
そこで発せられたとある一言。
「なぁ、シン」
「ん?」
「キス好き?」
「えっ!?」
質問に驚き一瞬にして固まる。
一方のカガリは小首を傾げながら答えを待っていた。
「…別に嫌いじゃない」
シンは外方向きながら答えた。
でも、耳は真っ赤に染まっている。
すると、カガリは花が咲いたかのように笑う。
「そっか、よかった。明日、楽しみにしててくれよな」
次の日。
シンは朝からずっとドキドキしていた。
そして、待ちに待った時間が訪れる。
昼休み。
誰もいない屋上。
床に腰を降ろして並んで座る。
「シン!」
「アスハ…」
見詰め合う2人。
シンがカガリとの距離を縮めて顔を近付けた瞬間、目の前にあるモノが出された。
「ハイ♪」
「へっ?」
それはお弁当箱。
蓋を開けて中を覗けば……
「ジャーン!キスの天ぷらだぞ。他に南蛮漬けもあるぞ!!」
カガリの顔は満面の笑みで溢れていた。
「えぇっー!!」
魂の声がそのまま口から出た。
明らかにシンの顔色が変わった事にカガリは驚く。
「あれ、昨日、キス好きって言ったじゃないか」
「…………嫌いじゃないとは言ったけど、好きとは言ってない」
落胆する顔を隠す様に横を向いてボソッと言うシン。
「えぇっー!!」
今度はカガリがガッカリする。
肩を落としてあからさまな態度が出ていた。
仕方なく広げたお弁当箱に蓋をする。
「ちょっ、それ、どうすんの?」
「持って帰るんだよ」
「その後は?」
「勿体ないからキサカにでもあげるよ」
不貞腐れながら、お弁当箱を丁寧に片付けていく。
そんなカガリの手をシンが掴む。
「あんな護衛マッチョに食わすっつうなら…俺が食べる」
「えっ…でも、おまえキス嫌いって言ったじゃないか」
「嫌いじゃないとは言ったけど……嫌いとは言ってない…」
「なんだよ…よく解んないぞ。おまえ」
「とにかく俺が勿体ないから食べるって言ってるんだ!!」
「……解ったよ」
もう一度、お弁当箱を開けて、鱚の天ぷらを一つを掴む。
「シン、アーン」
少しだけ笑顔の戻ったカガリが差し出す。
食べさしてもらう光景にシンはやや照れながらも、口に含む。
「美味しいか?」
「……まあまあいけるんじゃねぇの」
「むぅ……美味しくないなら食べるなよ」
「美味しくないとは言ってない」
「もう、なんなんだよ!美味しいなら美味しいって言えよ!!」
「別に不味いなんて言ってないだろ」
「だからっ!!」
言い合いながらも、シンは鱚の天ぷらを平らげた。
ただ、最後まで素直じゃなかっただけ。
通称ツンデレ編の
シンカガバージョンです
2011.4.1