お手製



「なぁ…ニコル。コレ、短くないか?」
「そんな事、ありませんよ」
「でも…」
「文句を言っても、仕方ないじゃないですか。替えがないんですから」
「うーん…」
「それより、召集かかってますから。早く行かないと怒られますよ」
「…それもそうだな」

カガリはスカートの丈を気にしながら、艦の廊下をニコルと歩いて行く。
そこへ同じ赤を着た2人がやってきた。

「おお、姫さん。その格好、超いいじゃん」

軽い感じで話しかけるのはディアッカ。
カガリの周りを回ってじろじろと見てくる。
恥ずかしいカガリはスカートを押さえながら、真っ赤になっている。

「ディアッカ、失礼ですよ。その視線、100%セクハラになります」
「えー、何言ってんの?ミニスカは見てなんぼでしょ」
「うー、ジロジロ見るなよ!ディアッカ!!」

カガリから注意を受けて、ディアッカは仕方なく視線を上げる。

「しゃーない、見ちゃダメなら…」

ディアッカの手がカガリのミニスカに伸びる。
触れそうになった瞬間、ディアッカの体が壁に吹っ飛んだ。

「んぎゃあっ!!」

ニコルがディアッカの土手っ腹に見事な蹴りを決めたからだ。

「知ってます?痴漢って言葉?知らなかったら、アカデミーからやり直して下さい」

笑顔で言うニコルだが、その背景には般若を背負っていた。
ホッとしているカガリ。
そして、変な立ち姿をしている、もう1人の赤服。

「何しておられるのですか、ラスティ?」
「ん?中腰体勢から偶然パンチィが見えないものかと思って…」

爽やかな顔で言うラスティの頭にニコルは華麗な踵落としを決めた。

「ふげぇぇ!!」

呻き声と共に床へ死体の如くめり込むラスティ。

「それは覗きです。知らないみたいですから、アカデミーからやり直して下さい」

自称カガリのナイトを気取るニコルは、ナイトとして仕事を全うしたと満足げに転がるゴミを見下した。

「ゴミ掃除は誰かがしてくれるでしょう。先へ急ぎましょう」

カガリの手をとってニコルは廊下を進んでいく。



集合場所の作戦室まで後少しの所で、残り2人の赤服と遭遇する。
召集がかかっているから当然の結果なのだが、ニコルはこれから起こりうる展開に嫌な顔をした。
カガリの姿を目に止めた途端、ワナワナと体を震わす人物。

「貴様っ!!何だそのスカートは!!服務規程違反だ!!」

真っ赤になって怒鳴り上げたのは四角四面の男イザーク。
ザフトの制服にミニスカはない。
規程違反をお堅いイザークが見逃す訳もなく、カガリを捕まえて怒鳴り散らす。
好きで着ている訳でもないの頭ごなしに起こられるカガリは今にも泣きそうだ。
自称カガリのナイトであるニコルは、どうやってこのクソ河童に制裁を下そうかと考えている最中にカガリへの助け舟が入る。

「そんなに怒鳴るな。別にこの程度で目くじら立てる程でもないだろ」

アスランだ。
至ってまともな反応にニコルは何とかなるかもしれないと考える。

「何甘い事を言っているアスラン!風紀の乱れが秩序の乱れとなるのだ!!」
「そうならないようにイザークが見張ればいい事だろ」
「グッ、それは…」
「それより、カガリ。これ、手作りだよな」

アスランはカガリのミニスカを見ながら話しかける。

「うん」
「そうか…」

ミニスカに一切触れずアスランは凝視する。
そこに厭らしさはないのでニコルは唯見守っている。

「プリーツが歪んでいる」
「へっ?」
「どうせなら、もっと飾りつけたらよかったのに」

斜め上の角度から感想を言ってくるアスランにカガリとニコルは目が点になる。

「全体的なバランスも悪い。俺ならもっと綺麗なプリーツスカートを作れるぞ」
「えっ…」
「そんな下手くそなミニスカとよりな」

アスランは得意気に笑ったが、カガリとニコルの顔は引きつり青くなりだす。

「何を馬鹿な事を言っとるんだ貴様は!!違反を促すつもりか?」
「似合っているんだから良いじゃないか。それとも似合ってないとでも言うつもりか!?」

悪びれもなく言い返すアスランにイザークは唸って押し黙る。
思いっきり怒鳴りつけたイザークだが、実は似合ってると心中では思っていたから。

「似合ってはいるが違反は違反だ」
「イザークは石頭だな。許可をとればいいだけの事だろ。カガリ、俺が許可をとってきてやる。今はその形の悪いミニスカで我慢してくれ。すぐに俺が完璧なスカートを作ってやるから」

話はこれで終わりと思われたが、思わぬ人物からのとある発言によって意外な展開に進む。

「待て!!スカートなら俺が作る。ついでに許可も俺がとってきてやる!」

自信満々に言うのは、猛反対していたイザークだ。

「はぁ!?どうしてイザークが作るんだ?俺がカガリに似合うスカートを作るって言ってるんだ、邪魔するな!」
「フン!貴様より俺の方が裁縫は得意だ。美しく更に赤服にあったスカートを作る。どうせ、ムッツリな貴様の事だ、無駄に短く如何わしい形のモノしか作らないんだろ!!」
「だ、誰がムッツリだ!?俺はこの出来の悪いこのスカートよりいいモノを作れると言っているだけだ!!」
「確かにこのスカートは出来が悪い。だが、貴様が作る必要はない。俺がカガリに相応しいスカートを作るんだからな!」
「イザークが作ったら緑服のオペレーターが着ているような色気のないタイトスカートになるだろ!?」
「やっぱり如何わしい事考えていやがったな!貴様っ!!」
「スカートはひらりとして可愛いモノじゃなきゃ意味がないじゃないか!?」
「その事に関しては同意見ですわ」
「「えっ!?」」

美しい声に驚いてアスランとイザークが振り返ればそこにラクスがいた。
ニコニコと笑ってはいるが、何故かラクスの背後から凍えそうな冷気が流れ込んでくる。

「ラ、ラクス…何故、貴女が此処に?」
「ラクス孃…貴女はこの鑑の乗組員ではありませんよね」

2人揃って訝しい目でラクスを見るが、それより全身に伝わってくる冷気に怯えていた。
一方、カガリとニコルはこの世の終わりだと思い、互いに火の粉が掛からぬように祈り始める。

「そんな事より先程からカガリさんのスカートに対して何か仰ってましたわよね…」
「ああ、それは出来が悪いという話…」

そこまで言ってアスランは漸くある事に気づいた。
勿論、傍らにいたイザークも。
カガリのスカートは手作りだと言った。
しかし、カガリが作ったとは一言も言ってはいない。
てっきり出来の悪いスカートだから、アスランもイザークも不器用なカガリが作ったと勝手に思い込んでいた。
しかし、よくよく考えてみれば、可笑しな話なのだ。
支給されている服があるにも拘わらず、スカートを作るなんてする訳がない。
では、誰が作ったのか?
言わずもがなだ。
この鑑に乗る必要がないのにわざわざ乗り込んでいる人物。
それは自らが作ったスカートを穿いたカガリの姿を見たいが為此処にいる。
その結論に至って、今までどれだけの失態をおかしたのか思い出すのも怖くなるアスラン。
イザークも同様だ。

「お、俺は服務規程違反を注意しただけで、大した事は言ってない!」

逸速く自己保身に走るイザーク。

「ちょっとまて、イザークだって出来が悪い事を認めたじゃないか。そんな言い訳男らしくないぞ!!」

自らの失言を取り消せないと悟ったアスランは何とかイザークを道連れにしようと目論む。

「最初にスカートを貶したのは貴様だろアスラン!!」
「最終的にはイザークも同意したじゃないか!」
「あれは言葉の綾だ!」
「結局、認めた事には変わらないだろ!!」

何かと罪を軽くしようと醜い争いをするアスランとイザーク。
ラクスはどす黒いオーラを撒き散らして2人へと近付く。
アスランとイザークはラクスの背後に立つ鬼を見た。
赤と青の。
鋭い目は真紅に光り、持っている棍棒を振りかざす地獄絵図。

「どっちも同罪じゃ!!このおかっぱ共!!」
「「ぶべらぁ!!」」

それから、アスランとイザークの意識は無くなった。

「一体何事だ!!」

凄まじい轟音にドアを開け廊下に出てきたのは、既に作戦室で待機していたこの鑑を取り仕切るクルーゼ隊隊長その人。
現状を見れば、壁にめり込み白目を向いてる部下2人と呆然としている部下2人と全く関係のない民間人1人。
状況が把握出来ず固まるクルーゼ。
そんな中、カガリの呑気な声が響く。

「凄いなラクス!アスランとイザークを瞬殺するなんて!!」
「私にかかれば大した事じゃありませんわ。それより、私お手製のスカートよく似合ってますわ!」
「そ、そうかな//」
「ええ、とっても」
「あ、ありがとう…そうじゃなくて…ラクス、あんなに強いんなら赤になれるぞ。私と一緒に平和の為、頑張ろうよ!」
「まあ、カガリさんのお誘い凄く嬉しいですわ。でも、私に軍服は似合いませんの」
「えー…そんな事ないって」
「私には議長職が似合うと思ってますの」
「えっ、議長になるつもりなのか!?」
「ええ、いずれは」

麗しく笑うラクスだが、背後に漂う真っ黒オーラ当てられたクルーゼはビクつく。
クルーゼは慌ててカガリとニコルを見るが、黒オーラに包まれても鈍いのか全く平常な2人に驚く。

「私が議長になる頃、カガリさんは白服を纏って一艦隊の艦長をなさってますわ」
「そう?」
「ええ、間違いなく私が言うのですから」
「そうだな、頑張って出世するよ」
「じゃあ僕は黒を着てカガリ艦長を支える副長ですね」
「ニコルが副長か頼もしいな」
「そうですわね」
「ようし、世界平和の為に頑張るぞ!!」
「その意気ですわ、カガリさん」
「僕も頑張りますよ」

話が落ち着いた3人は仲良く、作戦室に入っていく。
完全に1人部外者がいるのだが、クルーゼはチラリと未だ壁に埋め込まれている部下2人を見た。
そして、何事もなかったように作戦室に入り部外者に対してそれはそれは大人な対応した。




アンケコメントより
頂きましたネタ、赤服パロです★

総受けなんだけど
ニコル以外は禄な目に
あってませんけどね(笑)

調子に乗って挿し絵付きです☆

2011.9.22










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -