告白

「す…すっ…すすす…」

そこまで言って大きく溜め息を吐く。
ここはプラントの中枢部のとある場所。
誰もいないここで先程から何やらブツブツと呟いているのは、一艦隊の隊長で白服を纏った髪型に特徴のある青年。
イザークである。

「き、きき…貴様がぁ…」

そこまで言って、今度真っ赤になる。
口をパクパク動かすが声としては全く体をなしていない。
思い通りに動かない自分自身に腹が立ち、すぐ側にある柱に自らの頭をガンガンとぶつける。
周りから見ればかなり…いや、ドン引きするくらい可笑しな行動をとっているエリート軍人。
けれど、イザークは必死なのだ。
周りが見えなくなる程に。
ぶつけるだけぶつけると頭が痛くなりすぎて流石に止める。
そして、大きく息を吐く。

「くそっ…何て…不甲斐ないんだ俺は!?」

イザークは己の弱さに心底腹が立った。
自分に嫌気がさして頭を激しく振る。

「あー、こんな所にいた」

呑気な声で話しかけられ、そちらを見ればディアッカがいた。
びくりとイザークの体が震える。
可笑しな行動を見られたのではないかと。

「全然、見当たらねぇから探したじゃん」
「…悪い」
「悪いと思ってんなら、早く準備した方がよくねぇ。何かあったら一大事だぜ。首飛ぶだけじゃすまねぇって」
「解ってる…」

ディアッカの様子に見られていなかった事に安堵してイザークは襟を正して歩き出す。
その後をディアッカはついて行く。



本日、イザークの仕事は重大であった。
それはプラントに来るオーブの一団の警護だからである。
戦争が終わった今でもナチュラルを忌み嫌うコーディネーターも多い。
故に、警護は万全でないといけない。
何かがあってからではなく、些細な可能性の段階から潰さなければならない。
気を引き締めてイザークは警護の指揮を取る。
そして、オーブのシャトルが到着した。
ハッチが開いて一団が降りて来る。
護衛や事務方に囲まれながら、オーブ代表が警備しているイザーク達の元へ歩いてくる。
勿論、イザークの元ではなくイザークが警備しているプラント議長ラクス・クラインの元である。

「ようこそ、プラントへ。長旅でお疲れでしょう、カガリさん。すぐ休める所をご用意致しますわ」
「有り難うラクス。そんな気を使ってくれなくても大丈夫だ」
「ダメですわ。ストレスや疲労でカガリさんの綺麗なお肌が傷ついてしまいますわ」
「いや、でも…」
「それに夜には晩餐会を予定してますの。ゆっくり休んで頂かないと…」
「あっ、でもドレスもって来てないから…」
「心配無用ですわ。こちらで用意してありますから」

軽やかに笑うラクスにカガリは逃げられないんだと解り早々と諦めた。
主導権をラクスに丸投げして、カガリは白い手に引かれていく。
そこへ、声を上げた人物がいた。

「すいません。ちょっとお話いいですか」

ラクスとカガリ2人揃ってそちらを見る。
釣られてイザークも。

「何ですのディアッカ」
「あー、姫さんに用があるんですけど」
「カガリさんに話があるならこの私を通して下さいません?私は無二の親友ですもの」
「はぁ…まあ、いいですけど」
「それでカガリさんに何の用ですの」
「結婚を前提にお付き合いして欲しいんですが…」

その言葉に誰もが度肝を抜かれた。
カガリは驚いて目が点になっているし、イザークは衝撃の余り口が開きっぱなしになった。
唯一、表情が変わらないラクスだが、こめかみにピキリと筋を立てていた。
全身からは全く見えない筈なのに、黒いオーラが溢れ出し辺り一面を覆いつくしそうだと周りにいた全員が感じた。

「こっんの色黒ド変態ヤロー!!何寝ぼけた事言ってやがんだぁ!?宇宙の塵にしてデブリ送りじゃ!コノヤローッ!!」
「ラッ、ラクス!!」

某アニメの駄眼鏡姉のように豹変したプラント議長であり親友であるラクスを、カガリは必死に止める。
ディアッカをこの世から抹殺しそうな勢いだからだ。
首元を握られ、ラクスに激しく揺さぶられているディアッカは、苦しそうにしながら言葉を紡ぐ。

「あっ、あのさ…“俺”じゃないんですけど」
「ああっ!?」

ラクスの口調は未だ戻っていない。

「だから…姫さんとお付き合いすんのは…俺じゃないって…」
「へっ!?」

漸くラクスの首締め攻撃が収まりディアッカは大きく息を吸い込む。

「では、一体誰がカガリさんと結婚前提なんてバカげた事を企んでますの。早く教えなさい。今からその愚か者をフルボッコにしてやりますわ。ウフフ!」

高らかに笑うラクスにカガリは冷や汗を流しながらディアッカを見る。
ディアッカは頭を掻きながら喋り出す。

「まぁ、地位は隊長クラスで家は超エリートなんで問題ない。顔は…俺が見る限り悪い方じゃないかなって思う」
「色黒ド変態の美的感覚なんて信用出来ませんわ。カガリさんの隣に立つには背は必要ですし、品位も必要ですわ」
「背は俺よりちょい低め。品位は元から兼ね備えてるていうか…気位超たけぇし、マナーも五月蝿いし」
「聞いている限りでは条件的に申し分のない殿方のようですけど…見てみないと私の目に適うか解りませんわ。というより、ディアッカに言わせてるあたり、心意気に問題がありますわ」
「男気がない訳じゃないんだけど…色事には滅法弱いんだ。まぁ、初恋だから勘弁してやって。俺と違って初だし、経験値も0だし真っ白だし、唯一、俺が見てダメな所は…髪型ぐらいかな。でも、アレ、ポリシーらしいから」

ディアッカがそこまで言えばラクスの顔色が変わる。
並べられた言葉が示す人物に思い至ったからだ。
視線をディアッカから其方へと向ける。
が、本人は自分の事を言われているとは、つゆ程も思ってないらしく呆然と繰り広げられている光景を静観している。

「確かに初な方のようですから仕方ないですわね。私も髪型に関して言いたい事はクソ程ございますけど、そこは大目に見ましょう」
「じゃあ…」
「よろしいですわ。カガリさんとの結婚前提とした清らかな交際認めますわ」
「よっしゃあ!!」

ディアッカは雄叫び上げて喜び、ラクスは満足げに微笑む。
カガリは驚いていた。
今まで、カガリに近付く男共はカガリの意思関係なくラクスによって排除されていたからだ。
カガリの目の前で本気のフルボッコが行われたり、裏で存在を消されたりと、誰も近づかせなかったのにいきなり結婚前提の交際が認められるなんて正に青天の霹靂だ。

「認める…って、私、ディアッカの言う奴と付き合うのか?」
「はい!大丈夫ですわ。この殿方は私の目に適った唯一の人物ですから問題ありません」
「で、でも、知らない奴といきなり…」
「いいえ、カガリさんもよくご存知の方ですわ」

誰だか全く解ってないカガリにラクスはハッキリと言い切った。
そして、ディアッカが真剣な顔でカガリへ向き直る。

「そんな訳でうちの隊長、イザーク・ジュールと付き合って下さい。お願いします」

深々と頭を下げて、言い放たれた内容に表現しがたい奇声が上がった。

「うひゃへはぁっ!?」

間抜けな声が辺りに響き渡る。
勿論、発言者はイザーク本人。

「なっ、なっ、何言ってんだっ!?」
「あ〜?イザークが全然告白出来ねぇから、俺が変わりにしてやってんだろ。俺ってなんて上司思いなんだろ」

感謝してくれよと大きくジェスチャーしてくる。

「ふっ、ふざけるなよ!俺がいつそんな事して欲しいと頼んだ!?」
「ここに来る前も、告白の練習してたじゃんか」

完全に見られていた事にイザークは、人間の限界まで顔を真っ赤にする。
練習の時同様、口はパクパクと何かを発しようしているが声にならない。

「練習ですらまともに告白出来てないのに、本人見て言える訳ねぇじゃん。そんなの待ってたらお前ジジィになってるぜ」
「まぁ、練習でも言えてませんの?初ですわね」
「でしょ。大体イザークは隠してたつもりだけど、周りにゃバレバレなんだよ。姫さんの事になる意識もぶっ飛んでて仕事になんねぇから、とっととくっついちゃってほしい訳よ俺としては」
「あら、意外に気苦労なさってたのね。色黒のくせに」
「いや、色黒関係ねぇからね」

イザーク顔を真っ赤にしたままどうしていいか解らなくなっていた。
思いがバレバレで挙げ句に不憫に思ったディアッカが変わりに告白した。
しかも公衆の面前で。
そして、とった行動は…

「うわあぁぁっ!!」

奇声を発してその場から逃げる事だった。
立場も仕事も頭から抜け落ち、羞恥に全身を染められたイザーク脇目もふらず走る。

「イザークッ!」

誰もイザークを止められないと思っていたが、1人だけそれを出来る人物がいた。
呼ばれて無視出来ない存在、カガリ本人。

「これから、ヨロシクな!」

交際OKの言葉にイザークはその場で脱力した。
この成功によりプラントでは、友達が替わりに告白するという形式が大流行となった。




管理人の理想とする白イザです
格好良さなど微塵もありません(笑)

この後の展開も簡単です
順調に交際しますが
プロポーズ出来ず
あわあわしているイザークを尻目に
ディアッカとラクスで結婚を
決められちゃいます

結婚式もディアッカとラクスに
完全に仕切られます

何だかんだあっても
2人は両思いで幸せです★

2011.8.11










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