Yzak's2011

それは唐突だった。

「8月8日に花火するからな」

他に浴衣を着用の事。
花火はカガリが持参の事。
だから、イザークはバケツを持参する事。
夜8時に向かえに行くからとカガリが簡単に言うので、それは断固拒否してイザークが迎えに行く事で落ち着いた。



そして、8月8日当日。
誕生日であり、カガリとの約束の日。
イザークは朝から母エザリアに仰々しく祝われた。
昼はわざわざ夏休みにも拘らず、自宅まで誕生日プレゼントを持ってきてくれた幼馴染達。
ニコルはよく知らない世界的なピアニストのCDセット。
アスランは河童型のマイクロペット。
明らかな嫌がらせにイザークが壊そうするのを、ニコルとディアッカが慌てて止めに入る。
ブツブツと丹精込めて作ったのにと不貞腐れるアスラン。
嫌がらせではなかったらしい。
渋々受け取るイザーク。
そして、ディアッカはすこぶる爽やかな笑みで綺麗にラッピングされているモノを手渡す。
包装紙を破こうとするイザークにディアッカは止めさせて、耳に口を寄せ小声で囁く。
内容にイザークはブチ切れて、プレゼントをディアッカの顔面に投げ付け土手っ腹を蹴飛ばす。
ぶべぇと蛙の潰れた声を出して地面に転がるディアッカ。
プレゼントは18才以上しか見られないそういうDVD。
“夜のお楽しみに使ってネ”と言い放ち、イザークの逆鱗に触れたディアッカはゲシゲシと何度も蹴られる。
何となく渡したモノを想像出来たアスランとニコルは、白い目で蹴られているディアッカを見下ろし助ける気は更々なかった。



そうこうしている内に時間は過ぎて夜が訪れた。
浴衣に着替えてカガリを迎えに行く。
カガリからの誕生日祝いは間違いなく花火だなと、思考を巡らせながら歩みを進める。
やがて周りより一際豪華な家に着く。
インターホンを押すと聞き慣れた声がこぼれてきた。
大きな門が開いて庭を通って玄関まで歩く。
扉を開けるとそこには…
淡い水色の浴衣を着たカガリがいた。

「7時45分。約束より15分前だな。流石イザーク」
「俺は常に15分前行動だ!」
「フフッ、じゃあ早速堤防へ行くぞ」

カラカラと下駄の音を鳴らし連なって堤防へと歩いていく2人。
カガリの手には大量の花火達。
イザークの手には青色バケツ。
間もなくして堤防に到着。
バケツに水を入れ、蝋燭に火を用意し、花火に火を灯していく。
カガリは両手に花火を持って楽しそうに揺らす。
綺麗な光の束が流れてゆく。
花火の光に照らされているカガリは浴衣姿も相俟って、いつもより数倍美しく見えた。
勿論、イザークがカガリに対してそれなりの感情を抱いているという贔屓目もある。
カガリの方にそういう感情は一切ないので完全な一方通行であった。
そんな中、カガリはチラチラと腕に付けてる時計を見やる。
腕時計なんてカガリは滅多にしない。
というか、時間にややルーズな性格をしているせいか、付ける事なんて先ずない。
不思議に思いながら燃え尽きた花火をバケツに捨てる。
イザークは新しい花火を灯すと青白い光が流れてゆく。

「イザーク…」
「ん?」
「誕生日、おめでとう」
「あっ…有り難う//」

これまた唐突に言われてイザークの声は吃ってしまった。
一方、カガリは笑顔だ。

「へへ…今、8時8分なんだ」
「8時8分?」
「うん。8月8日8時8分におめでとうって言いたかったんだ」
「…だから、花火なのか?」
「そう。本当はさ、朝の8時8分に言うのがベストなんだけど…」
「けど?」
「夏休み中にその時間…私にはツライんだよな」
「俺は既に起きてる時間だ」
「うーん、私は9時ぐらいまで余裕で寝てるな。ハハッ!」
「夜更かしのし過ぎだ」
「だってさ、学校休みなんだもん」

花火をクルクルと体全体を使って回すカガリ。
落ちる火花は綺麗だが危ない事極まりない。

「コラッ!火花が浴衣な掛かるぞ。危ないだろ」
「もう、イザークは相変わらず堅物だな」
「…悪かったな」
「まぁ、お前の良いとこでもあるけどな」

また、カガリから不意の攻撃にイザークの頬は赤くなる。
明かりは花火ぐらいしかないのできっと気付かれる事はない。
それに何と言っても、色恋に対して極端に鈍いカガリが気にする事は全くない。
悲しい程に…



ドラゴン花火にネズミ花火、ヘビ花火とありとあらゆる花火を2人で堪能する。
そして、残ったのは定番の線香花火。
パチパチと鮮やかに火花を散らしていく。

「線香花火って…何か物悲しいよな」
「そうだな」
「でも…私はこれが一番好きだ」
「え?」

イザークは意外と言わんばかりの顔で見詰める。
カガリは楽しい事が好きだし、基本派手な事を望む。
行事ごとは先頭に立って色んな事をやらかしてくれる。
良い意味でも悪い意味でも。
だから、カガリが線香花火を好むなんてイザークには思い至らなかったのだ。
どちらかと言えば、ドラゴン花火とかが好きそうだと思っていただけに。

「ん?変か?」
「いや、少し意外だと思っただけだ」
「そっか。ドラゴンみたいに派手な火をあげるのもいいけど、これみたいにパチパチと一瞬の輝きの方が儚くて綺麗だろ」
「まぁ、そこが線香花火のよさだな」
「だからさ、私、見てるぞ」
「ん?」
「お前の一瞬の輝き」
「ッ!!//」
「ずっと輝くなんて出来ないからさ、瞬間に輝くんだ。お前も私も」
「……」
「だから、それを逃さないように見てる」
「…俺の輝きをか?」
「うん!イザークのもアスランのもニコルのも。あっ、ディアッカのもな。皆の輝きを逃さない」

イザークの顔が引きつったのは言うまでもない。
少し期待していただけに、落ち込み具合は凄まじい。
ガックリと肩を落とした。
パチパチと散る火花が無くなれば、ボトリと落ちる線香花火。
こんな風に思いが消えて無くなればいいのにと、イザークは本気で思った。
けれど、胸の中で輝く花火は簡単に消えない。
小さく煌めき気付いて欲しいと訴えてくる。
再び、線香花火に火を灯す。
パチパチと再び火花を散らす。
イザークは思い至った。
一度火が灯れば自分自身では消せないのだと。
消すにはカガリに水を掛けてもらうしかない。
思いが実るか実らないのどちらにしても。
既に解決方法がないと解れば、イザークの気持ちは楽になった。
今はこの時間を楽しむのみ。
そして、ライバルは多いが思いが叶う様に行動するだけ。


Happy birthday Yzak!!



誕生日おめでとう、イザーク!

イザ→カガ的なお話です
個人的にはSEEDのザフト組が
誕プレを持ってくる件が
お気に入りです★

2011.8.8










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