奏でられる旋律は時に烈しく、時に優しく耳に響く。
それをカガリは黙ってソファの上で聞いていた。

「さぁカガリ、練習の時間だ」

立ち上がり、ピアノをカガリに譲るレイ。

「嫌、ピアノなんか弾かない」
「俺が、一曲弾いたら練習する約束だろ」
「そんなの知らない」

カガリはプイッと横を向いてソファに寝転がる。
やれやれとレイは大きく溜息を吐いた。



数々のコンクールで賞を総嘗めした天才高校生ピアニストレイ・ザ・バレル。
世間に名のしれた存在。
そんな彼がピアノの先生をしている。
教える生徒は小学生の女の子カガリ。
ただ、生意気でちっとも言う事を聞かない。
なぜ、レイともあろう経歴の持ち主がピアノの先生をしているかというと、カガリの父アスハグループの社長ウズミがレイのスポンサーなのである。
その人物が娘にピアノを教えてくれと言われれば断れないという事が一般的な見方だが、実際は少し違う。

「カガリはいつから嘘つきになったんだ」

レイは冷ややかな目で見る。
しかし、カガリは気にする素振りもなくソファに寝転んだまま足をプラプラとさせている。

「私はピアノが嫌いなんだ。お父様がピアノを聞きたくなったらおまえが弾けばいい。だから、私は弾けなくてもいいんだ」
「屁理屈だな。俺は君にピアノを教えに来ているんだ。もし、それが無くなれば俺は此所に来る事は出来ない」

いつの間にかカガリの傍まで来ていたレイは上から見下ろしていた。

「えっ?」

レイの言葉にカガリは動揺する。
カガリはレイの事が好きだからだ。
好きと言っても小学生であるカガリの恋愛感情は幼い。
一人っ子のカガリにとって、レイは兄のように思っているだけに過ぎない。
ソファから起き上がってレイを不安げに見詰める。

「レイ、家に来なくなるのか……」
「理由が無ければ此所に来る必然性は無くなる。当然の結果だ」
「そんなぁ……」

意気消沈し、寂しげな顔をするカガリ。

「俺に此所へ来て欲しい?」

レイは屈んで今度は下からカガリを見上げて金の頭を優しく撫でる。

「……うん//」

はにかみながらも笑って答える。

「なら、練習だ」

カガリの手を引いてピアノまで誘導する。
レイは椅子に座るとカガリを膝の上に乗せる。
これが練習する時の風景。
カガリがレイを好きなように、レイもまたカガリも好きだった。
だが、レイは高校生でカガリのような感情ではない。
いずれ、美しい大輪の華を咲かせるであろう可愛らしい蕾を大切に育てている。




10000hit記念
リクエストアンケート5位の
レイカガです♪

書きたかったピアノネタに
してみました〜
小学生カガたんは激カワです★

2009.3.9
2010.12.1移転










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