赤色

「ちょっ……ちょっと待て!」

カガリは後ずさりながら言った。
けれど、目の前の彼は歩みを止めない。
どんどんとカガリに近付く。

「おまえ、どうかしてるんだよ。気をしっかり持てってば」
「……俺は至って普通だよ。先生」

カガリの目をジッと見て、はっきりと彼は言う。
赤色の瞳に見詰められ、カガリは金縛りにあう。



カガリは新任教師としてこの学校に赴任した。
初めての事だらけで色々と戸惑いもあったが、持ち前の頑張りでカガリは一躍人気の先生となった。
そんなカガリの目に止まったのが、一人の生徒。
シン・アスカ。
目に掛かる長さの黒い髪と、鮮やかな赤色の瞳が印象的な少年。
首席の成績で入学し、さらに学内でもNo.1の成績を誇る。
しかし、上級生と喧嘩をしたり、教師を小馬鹿にしたりと素行が悪く、その上よく学校をサボっており何かと問題行動をとっている。
担任は彼を手に負えないらしく完全無視を決め込んでいる。
腫れ物のような状態のシンをカガリが放って置ける訳もなく、カガリはシンに声を掛けだした。
最初の方こそ、カガリは相手にされなかった。
シンにカガリは散々馬鹿にされたが、それでもめげる事なく毎日のように声を掛け続けた。
裏表がなく、下心の全くないカガリの姿にシンは徐々に心を開きつつあった。


「アンタ、ホントに飽きないよな。俺なんか相手にして」
「ん?そうか?…それより、毎日学校来いよ。出席日数はこのままいけば微妙だぞ」
「……まぁ、考えとくよ」

それが、いつもの光景になりだしていた。


気がつけば、シンは毎日学校に登校するようになっていた。
刺々しかった性格も少しだけ柔和になり、いつの間にかシンの周りに生徒が集まりだした。
元来、何でも出来るシンは羨望の眼差しで見られ、クラスにも馴染みだした。
自然に級友たちと挨拶したり、教師にたてつく事もなくなり、喧嘩をする事もなくなった。
その姿にカガリは誰よりも喜んでいた。
それと同時に、カガリはシンから距離をとりだした。
生徒同士の和に教師のカガリがいる事をさけたかったからだ。



そんな状態が続いたある日、カガリはシンから呼び出された。
放課後の教室。
夕日のオレンジ色が室内に差し込む。
その光をシンとカガリは浴びていた。

「シン、話ってなんだ?」
「……なんで、俺の事避けんの?」
「!……避けている訳じゃ……」
「嘘。あからさまに避けてるじゃん」

指摘されると嘘の吐けないカガリは押し黙るしか出来ない。

「黙っちゃうって事は、態と避けてたんだ」
「わっ、態とというか……おまえの為に思ってだな……」
「ふ〜ん、俺の為ね……」
「そうだよ。おまえの為だよ!」

カガリは自身満々に言う。
シンの為を思っての行動なのだから。

「解った。俺の為って事でこの話は終わりにする」

深く追求されなかった事にカガリはホッと胸を撫で下ろす。

「じゃあ、本題」

彼は極めてにこやかな笑みを浮かべた。

「本題?」
「そう」

カガリはシンが何を言うのか全く予想が出来なかった。
例え、予想していてもシンの言葉は予想外すぎた。


「俺さ、先生が好き」


彼の告白にカガリは固まってしまう。
目を何度も瞬かせてはいるが、手も足もピクリとも動かない。
いや、動かせない。
魂を抜かれたような感じだった。
それほど、カガリにとって衝撃的な言葉だったからだ。
反対に、全く反応を示さないカガリにシンは苛立つ。

「あのさ、反応してくれないと俺がどうにも出来ないんだけど……」

シンに言われて漸く正気を取り戻す。

「えっ//……あっ//……その〜……」

カガリにとって告白された事など今まで一度もない。
だから、どうしていいのかが全く解らなかった。
とはいえ、生徒であるシンの好意を素直に受け取る訳にはいかない。

「おまえの気持ちは嬉しいけど……私は教師だから……おまえの思いに応えられない」

カガリは恥ずかしさの余りシンの目をみれず、俯いたまま答えを返した。

「……教師だからなんて答えになってないよ」

シンは一歩づつ、カガリへと近付く。
熱く燃える赤い瞳で。



そして、冒頭に至る。
シンと背に当たる窓に挟まれ一歩も動けなくなるカガリ。

「俺、本気だよ。冗談なんかじゃない。本当に先生が好きなんだ」

マグマのような灼熱の瞳がカガリを射抜く。
彼はそっとカガリの頬を愛しく触れる。

「!!//……」

味わった事のない感覚にカガリは何も喋れず、ただただ真っ赤になる。
その反応に彼はある考えがよぎる。

「……先生……もしかして、男と付き合った事ないの?」
「!?」

年下でしかも生徒のシンにカガリの経験のなさを見抜かれた事に、真っ赤になる。
先程発した言葉が的を射ていた事に、シンは嬉しさが顔に滲み出る。

「また、だんまり?……まぁ、俺としては先生が誰の色にも染まってない方が嬉しいんだけど……だって、俺色に染められるでしょ」




10000hit記念
リクエストアンケート4位の
シンカガです♪

一度書いて見たかった
生徒×教師ネタです
この役はシンじゃなきゃと
思いました★

2009.3.7
2010.12.1移転










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