Athrun's2008A

一方、アスランは待ち惚けをくらう。
何もする事がないので室内の辺りを見回っていた。
数分すると、ノックがした。

「失礼します」

ドアが開いて現われたのはレイだった。

「あっ…」

アスランは驚いてまじまじと見る。

「アスラン・ザラ様ですね」
「はい」

レイの姿で改まって言われると、アスランも畏まる。

「クルーゼ所長から此方を渡す様に言われたので持ってまいりました」

レイは持っていた封筒を渡す。
アスランは受け取り中身を確認する。
そこには請求書。
書かれていた金額は予想した金額より、遥かに高かった。

「えっ!こんなに高額なんですか?」
「私は所長に言われた通りに請求書を作っただけなので解りかねます」

レイにハッキリと言い切られ、アスランは請求書を見たまま固まってしまう。
そこへ、後方の扉が開く。

「新薬を研究するのにはそれなりに費用が掛かるのだよ。まぁ、効果はそれに値する物だと私は自負しているがね」

クルーゼは自信たっぷりに言い放つ。
しかし、アスランはまだ半信半疑である。
訝しげな目で見ているアスランに近付くクルーゼ。
手に持っていた小さな瓶をアスランに見せる。

「これがご要望の薬。所謂、媚薬だ」

小さな瓶には少量の液体が入っており僅かに波打つ。

「媚薬?」
「そう、無味無臭で無色透明。使い勝手のいいものだろ」
「はぁ、確かにそうですね」

アスランは頷くが、まだ信用出来ない。

「その名も新薬1029だ」
「新薬1029?」
「たった今、造ったばかりでね。本日の日付の名前を付けたのだよ」
「そうですか」

相変わらず、怪訝な顔をしているアスランにクルーゼは溜息を吐く。

「…君は意外と疑り深いのだね」
「すいません。色々あったので…」
「まぁ、いい。信用出来ないのも仕方がない。では、こうしよう。薬の効果が無ければ代金は全額返金する。これで如何かな」

クルーゼの譲歩はアスランにとって、願ってもない提案だった。

「はい、それでお願いします」

現金を待ち合わせていなかったアスランは小切手を書いてレイに渡す。
それを確認したクルーゼは言う。

「良い結果が出る事を祈っているよ」

アスランが出て行った後、レイはクルーゼに振り向く。





「宜しいのですか?あの薬は…」
「ああ。君の危惧する通り、あの薬は絶滅危惧種の繁殖を向上させる為の媚薬だ」
「人類用ではないですよね」

レイの一言で暫し沈黙が訪れる。

「フッ、私が人類用の媚薬が造れないと思っていたのか?」

クルーゼは自慢気に問う。

「そんな事はありませんが…」
「人類用の媚薬など誰も頼みにこなかったから造らなかっただけで、既に調合の仕方は解っていた」
「でも、元がその薬なら人間にもその効果が現われますよね」
「まぁ、そういう事になるな」

悪びれる事なく言い切ったクルーゼにレイは心の底から呆れる。
新薬研究がクルーゼの生き甲斐で、それ以外の事は全く持って興味がないのだ。

「妊娠しやすいという注意事項を言わなくてよかったのですか」
「大した副作用ではないだろ。むしろ、彼はそれを望んでいるかもしれんぞ」

クルーゼの勝手な言い分に注意する気が、レイには失せた。
レイが本来の業務に戻る為、所長室を出ようとした時クルーゼが声を掛ける。

「それに、彼ならきっとまた来るだろう」

予言めいた事を言う。
レイは不思議そうな顔をしていたが、それが現実となるのにさほど時間は掛からない。




アスラン誕生日話が
何とか陽の目をみました♪
完成してよかったです
正直、投げ出そうかと
考えておりました(笑)
因みに、レイとラウが出ているのは
完全に管理人の趣味です☆
ラウの喋り方が議長と
ほぼ一緒になってしまって…
突っ込みは禁止です(笑)

2008.12.12
2010.11.29移転










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