Christmas2008

本日は12月25日。
Christmasである。
にも拘らず、カガリは学校に来ている。
何故なら、特別補習を受けているから。
教室は寒く、手がかじかむがカガリは必死に目の前の課題プリントをこなす。
サボるにサボれないのは、教室にいるのがカガリと担任の二人きりだからである。
考えてもなかなか解らない問題にカガリは大きな溜息を吐く。

「何度目の溜息だ?」

頭上から呆れた声で問うのは、カガリの担任アスラン・ザラ。
学校一、カッコいい教師として、女生徒が憧れる存在である。
クラス替えの際、彼の担当クラスになるかならないかで女子は一喜一憂する。
しかし、カガリにとっては天敵でもある。
何かと言っては目の敵にされているからだ。
雑用を押し付けられたり、テストの点数を馬鹿にされたり、授業中にからかわれたりとあまりいい感情はもっていない。
とはいえ、偶に見せる笑顔に胸がときめく事もある。
カガリ自身はその感情を認めたくないが、事実は事実である。

「溜息を吐いてはいけないのか?」

じとりと睨んで言う。
しかし、彼は至って冷静。
カガリの恨みなど物ともしないのか、微動だにしない。

「教師に対しての口調じゃないな」

不敵に微笑んで指摘する。

「……今さら、直らないんで」

反省する素振りも見せず、への字口で睨み続ける。

「そう。それは強制のしがいがあるな。それより、ペンが進んでないように見えるが?」

軽くカガリの言葉をいなして、課題を促す。
尤もな事を言われてぐうの音もでない。
カガリは心底悔しそうな顔をした後、渋々課題プリントに視線を戻した。
彼が愛しそうに眼下にある金の髪を眺めている事は、下を向いているカガリは知らない。



「はぁ、終わった〜」

何とか課題を終わらせたカガリは、机の上に顔を俯せる。

「時間の掛かり過ぎだな。予定時間よりかなりオーバーしている」
「どうも、すいません」

カガリは俯せていた顔を上げて、不貞腐れた感じで応えた。

「これを片付けてくるから、教室で少し待っていなさい」

彼は課題プリントを持って教室を出ていく。

「は〜い」

適当に応えて、カガリは椅子から立ち上がって固まっていた体を伸ばしていく。

「う〜ん。疲れた…」

カガリは首を廻しながら独り呟いた。
冬休みも始まった本来の今頃なら、カガリはクリスマスパーティの準備をしていたはずだった。
前々から約束した父とのクリスマスパーティ。
カガリは楽しみにしていた。
父は仕事が多忙の為、家に居る事は少なく記念行事も一緒に過ごす事は少ない。
だからこそ、カガリはこのクリスマスを本当に心待ちしていた。
なのに昨日、つまり、クリスマスイブの日。
家に電話があった。
担任のザラ先生からだった。
そして、彼から告げられた内容は補習だった。
断るほど成績が良くないカガリは、仕方なしに承知したのだ。
学校に来てみれば、自分しかいなかった。
正直、来なければよかったと思ったが今さら断れず、諦めて補習を受ける事にした。
やっと補習が終わって今に至る。

「今日、クリスマスなのに最悪だ。はぁ、ツイてない」

カガリは呟いて窓に近付く。
何も考えず景色を眺めていたら、ちらほらと白い物が見えた。

「ゆき?……」

窓から降るのは淡い粉雪。

「雪だ!!!!」

カガリは堪らず窓を開けて、手を伸ばす。
感触も無く溶ける小さな雪。
この地方で雪が降る事は少なく、カガリが雪を見たのは数えるほどだ。
積もりそうにない雪だが、カガリにとっては先程まで下がっていた気分を一気に盛り上げさせてくれる。
寒いにも拘らず窓を全開にして、カガリはただ嬉しそうに雪を見ていた。



職員室から戻ってきた彼はガラリと教室の扉を開ける。
扉を開ければ音がする。
しかし、カガリは音も気にせず、窓の外を見続けている。
彼は離れた場所からカガリを見る。
冬なのに窓が開いており、冷たい風は金の髪を緩やかに揺らす。
彼から見れば寒い冬に咲く向日葵の様だった。
つい、見惚れてしまった彼は、気持ちを切り替えてカガリに近付く。

「どうした?窓なんか開けて。脳の使いすぎでおかしくなったか?」

彼はいつも通りからかった感じで声を掛ける。

「先生!雪だよ!雪!!」

カガリはからかわれた事も気付かないぐらい興奮しており、普段より高めの声で話し掛けてくる。
顔は笑顔そのもので、彼には眩しく心を奪われる。
それは一瞬だけ。
彼は心読まれない様に、すぐさま平常心を取り戻す。

「全く、君は犬か子供か。雪如きで大騒ぎして。何なら、校庭でも走り回るか?」
「ムッ!……犬じゃないけど、子供だ!!」

馬鹿にされた事がよほど頭にきたのか、笑顔をすぐに消した後、ピシャリと八つ当たり気味に窓を閉めた。
そして帰る為、鞄を取りに自分の席へ戻る。
彼は言い過ぎたと心の中で反省した。
いつも、この繰り返しである。
ついつい、彼はカガリをからかい過ぎてしまうのだ。
溜息を吐いて窓の施錠をして彼も帰る支度をする。



「先生」

カガリに呼び止められて彼は振り向く。
そこには怒った顔はなく、最高の笑顔があった。
オレンジの瞳はキラキラと輝きを称えている。
これはカガリが何か閃いた時の顔だ。

「なんだ?」
「今日はクリスマスだよな」
「ああ、そうだな」
「私は子供だ」
「子供と言える年齢でもないと思うが…」
「先生が自分で言ったんだろ。だから、子供にはクリスマスプレゼントをくれ」

カガリは最上の笑みでねだる。

「…教師に何を言い出すかと思えば…」
「だって、先生しか出来ない事だから♪」



「わぁ〜、たか〜い!!」

カガリは犬の如く走り回っていた。

「子供じゃなくて、やっぱり犬じゃないか…」

歌のように喜び走り回っているカガリを見て思う彼。
カガリが欲しいと言ったプレゼントは屋上へ行く事。
屋上は施錠されており、許可なしには入れないからだ。
彼が大好きな顔で微笑まれたら断る事も出来ない。

「なぁ、先生。さっきより空に近付けたかな」

手を伸ばしてカガリは振り返る。

「教室よりは近付けたとは思うが、空から見れば大した距離じゃない。それにしても、どうして屋上に来たかったんだ?雪を楽しむならグラウンドでも良かったとは思うが」

彼は思っていた疑問をぶつけた。

「ん?だって、雪なんて滅多に降らないからさ。近付いて無くなるまで楽しまないと!」

カガリは笑顔で雪を掴み心から楽しむ。
その姿を微笑ましく見ながらも彼はついからかってしまう。

「先程、クリスマスと言っていたが、君はクリスマスの意味を知っているのか?」
「へっ、クリスマスの意味?」
「そうだ。クリスマスの由来」

問われたカガリは苦笑いだ。
彼は大きく溜息を吐くと語りだした。

「キリストの降誕を記念する祝祭だ。起源としては太陽崇拝の中で太陽の再生を祝う冬至の祭りと言われてる。それをキリスト死後、宗教指導者によりキリストの誕生を異教の祭りと同じ日付にする事を考えた。これにより、異教徒の改宗が容易になった。同時に、この頃ローマで農耕の神を称えるサトゥルナリア祭があり、この祭りでは宴会をしたり、贈り物をしたりする風習があった。これらが融合しあい現在の形になったと考えれば解り易いだろう。まあ、クリスマスは宗教的な思惑があるというのが事実だな」
「へっ、へぇ〜……」

カガリは苦笑いを通り超して固まりつつあった。

「ちゃんと聞いていたか?」
「えっ、あっ、うん。聞いてたぞ」
「なら、ローマで行われていた祭りの名前を言ってみろ」

彼はカガリが殆ど聞いてなかった事を知ってて、敢えて聞いた。

「ええっ!!」

目を白黒させて凍りつくカガリ。
当然、答えられないカガリはあたふたする。

「どうした?聞いていたんじゃないのか」
「うぅ………」

彼はいつもの不敵な笑みでカガリを見下ろす。

「もう!そんな事はどうでもいいんだよ!」

カガリは無理矢理話を終わらせた。

「行事の意味を知る事は大事な事だろ」
「確かにそうかもしれないけど、クリスマスは楽しく過ごせばいいんだよ!!」

カガリはズバッと言い切った。
その言葉に彼は呆れながらも納得した。

「成る程、確かに君の言う通りだな」
「だろ〜」

彼に同調してもらった事にカガリは得意満面の笑みだ。
余程嬉しいのか、笑顔で雪と戯れている。
そんなカガリの姿は、彼にとって目眩がするくらい輝いて見える。
二人しか居ない屋上。
彼が作っていた壁を壊すのには充分だった。
離れた所にいたカガリの元へ彼は一気に近付き、雪を掴もうとしている手を取って強引に自らの胸に収める。
カガリは何が起こったか解らず、瞳を真ん丸にして彼をただ見上げる。

「楽しく過ごすのがクリスマスなら、俺も楽しく過ごすべきだろ」
「そっ、そうだけど…」

抱き締められているカガリは、怪訝な顔で見続けている。

「なら、俺と楽しくクリスマスを過ごしてくれるな」

彼は言った。
けれど、カガリには意味が解らなかった。

「……どうして?……どうして、私が先生とクリスマスを過ごさなきゃいけないんだ?」

頭の中は疑問だらけといった感じで彼を見ているカガリ。

「解らないのか?」
「解らないから聞いているんだろ!!」

語気を強めて言い放つ。
彼は勿論、物怖じする事はない。

「やっぱり、馬鹿だな」
「なにぃ!!」
「俺は君が好きだって事だよ」

彼の発言はカガリを再び固まらすのに充分だった。
電池の切れたおもちゃみたいにピクリとも動かなくなった。
それほど衝撃な一言だった。

「どうした、頭がまたおかしくなったのか?」

彼はいつもの口調で言う。

「なっ、なんだと!!」
「じゃあ、俺の告白に応えたたらどうだ?俺と付き合うのか、付き合わないのか」
「えっ……」

彼の両手で頬を覆われて見詰め合う状態にさせられる。

「答えは一つ。馬鹿な君でも解るだろ。YESかNOのどちらかだ」

綺麗なグリーンの瞳で覗き込まれて、カガリは何も言えなくなる。
頬を薄紅色に染めたまま、ただ見上げているだけのカガリに彼は迫る。

「俺が嫌いならNOと言えばいい」

真剣な瞳で見詰められてカガリが返事を戸惑っていると、彼は顔をさらに近付ける。

「NOと言わないって事は、YESと受け取っていいんだな」

カガリの唇を指でなぞって言う。

「えっ!?」

彼の顔はどんどんと迫ってきて、カガリの唇にギリギリ触れない所で止まる。
カガリの目の前には綺麗な顔があって、自分を見詰めている。

「どっち?」

甘く囁いてカガリに答えを促す。
カガリの頭は沸騰寸前まで煮詰まっており、思考回路がうまく動かない。
口を少し開けたまま、言葉にならない声だけが漏れている。
答えは元より決まっているのだ。
カガリははっきりした性格。
つまり、嫌なら抱き寄せられた時に抵抗している。
それをしないという事は…

「……………………YES」




管理人が大好きな学パロで
クリスマス話です☆
今回も、お馬鹿なカガたん設定
になってます
頭の良いカガたんより
お馬鹿なカガたんの方が
管理人は大好きなんです♪
ザラ先生が語っている
クリスマスの意味は一応合ってると
思いますが深く突っ込まれると
厳しいので温かな目で
見て下さいませ(笑)
アスカガのクリスマス話を
楽しんで頂けたでしょうか?

では、Merry Christmas!

2008.12.24
2010.11.30移転










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