アスカガ編

「アスラン!受け取ってくれ!」

そう言って手渡されたのは、可愛らしいラッピングされたハート型のプレゼント。

「これって…」

アスランはまじまじとプレゼントを見詰める。

「バレンタインチョコレートだ♪」

アスランはチョコを持ったまま固まってしまった。

「…アスラン?」

カガリは心配そうに固まったアスランを見上げる。

「……カガリ、ごめん。俺、甘い物が苦手なんだ」

すまなそうに謝るアスラン。

「そんなぁ……せっかく、頑張って作ったのに……」

肩をがっくりと落とし、眉を下げてうるうると今にも泣き出しそうな瞳でアスランを見詰めるカガリ。

「カガリが頑張って作ってくれたチョコレートは一生大事にとっておくから」

アスランは柔らかく微笑み、輝く癖のある金糸を優しく撫でる。

「ごめんな、チョコじゃないのを用意すればよかった」

カガリはぽつりと言って俯く。

「そんな事ないよ、気持ちは貰ったから。それから、カガリ、俺からもバレンタインのプレゼントだ」

後ろ手に持っていた一輪の赤い薔薇の花を差し出す。

「えっ、今日は女の子が男の子にチョコレートを渡す日だろ?」
「そうだよ、そういう習慣もあるし、恋人に花を送る習慣もある」
「へぇ〜、アスランは物知りだな!」
「まぁな。じゃあ、薔薇の花言葉って知ってるか?」
「薔薇の花言葉?」
「そう、わかる?」
「う〜ん……」

小首を傾げて、一生懸命考えるカガリの姿にアスランは軽やかに笑う。

「わかんない?」
「わからん…」

カガリは悔しそうな顔をしてアスランを睨む。
アスランとしては睨まれても、怖いどころか上目使い見詰めてくるこの顔が好きだったりする。
不服さを顔中に表し、少し膨らんだカガリの頬をアスランは愛しく両手で包んで軽く上に向かせる。
大きな瞳は長い睫毛を揺らしながら瞬く。
新緑の瞳が太陽の瞳を捕らえて離さない。

「薔薇の花言葉は『私は貴方を愛する』だよ」

想いを伝えられて満足そうに目を細めて笑うアスラン。
その言葉にカガリの白い頬は急速に赤みを帯びだす。

「えっ!?あっ…//」

直接的な言葉に恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染め上げ、赤くなった顔を隠すように俯く。

「…カガリは?」
「ふぇ?」

赤い顔をあげて、瞳を丸くしてアスランを見る。

「あのチョコは…義理チョコって事なのか?」
「なっ!?」

心を込めて作ったチョコはが義理な訳がない。

「そんな訳ないだろ!!」

カガリはかぁっとなり怒鳴りつけていた。
その言葉を待ってたと言わんばかりにアスランは意地悪く口角を上げる。

「じゃあ、何?」

アスランの笑顔に自分に何を言わせたいのか、瞬時に悟ったカガリ。
赤い顔はさらに赤くなる。

「う〜//……本命チョコに決まってるだろ!!」

怒鳴った後、カガリは恥ずかしさに絶えきれず外方向く。
拗ねてしまったカガリをアスランは壊れ物を扱うように抱き締める。

「本命ってどういう意味?」

手櫛で輝く金糸を梳きながら、アスランは望む言葉が聞けるまでこの話を終わらせる気はないらしい。
言わなくてもわかるだろとカガリは目で訴えるが、アスランは笑って返すだけ。
視線を落とすとアスランからもらった一輪の赤い薔薇。
両手で握って顔はアスランの胸に埋めてぎゅっと目を瞑る。

「……アスランが好きって事だ……」

それは耳を澄まして聞いてなければ聞こえないようなか細い声だった。
勿論、アスランは聞き逃さなかった。
カガリは極度の照れ屋でアスランが愛の言葉をねだってもなかなか言ってくれないのである。
愛の日であるこの日にカガリが恥ずかしがりながらも言葉にしてくれた事に、アスランは満足し笑みを深める。

「俺も大好きだよ」




バレンタインの日の内に
何とか書き上げる事が出来ました
3パターン書けて満足してます!
順番としては
アスカガ、シンカガ
キラカガの順に
書いたのでちょっとおかしな所も
あるかもしれません
一番楽しく書けたのは
何と言ってもシンカガです(笑)

2008.2.14
2010.11.26移転










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