Christmas2007

「♪真っ赤なおめめの〜、トナカイさんは〜、いつも皆の笑い者〜」
「誰が笑い者だって!!」

真っ赤な瞳を歌っているカガリに向け、不機嫌そうに睨むトナカイがいる。

「あれ〜、これってシンの歌じゃなかったっけ?」
「ちげ〜よ!!大体、赤いのは鼻だろ!はぁな!!」
「そうだっけ?」
「そうだよ!!」

セパレーツになっている真っ赤なサンタの衣装に身を包んでいるカガリと、茶色で分厚いトナカイの全身スーツを着ているシンの二人はサンタクロース協会の一員である。
因みにサンタクロース協会とは、世界の歌姫ラクス・クラインが設立した慈善事業団体である。



今宵はクリスマス。
カガリとシンは世界中の子供達にプレゼントを配っている。
しかし、誰もがプレゼントを貰える訳ではない。
サンタクロース協会に願い事の手紙を出し、ラクス・クラインが決めた条件を満たした子供だけが貰えるのである。

「なぁ、カガリ。まだ、配り終えねぇのかよ」
「あと、一件だぞ、シン。ザラって奴のとこだけだ」
「へぇ、ソイツ、どんな奴?」
「え〜と、アスラン・ザラ。18才で…」
「18!?いい年して、サンタに願い事かよ!!」

シンは吐き捨てるように言う。

「ん〜?でも、品行方正で真面目で優秀な奴だから、ラクスが特別にプレゼントを出すって決めたんだ」
「へぇ〜」

関心の薄い返事を返す。

「さぁ、行くぞ、シントナカイ!ちゃっちゃと仕事済ませて、一緒に鍋を食べよう?」
「!……うん//」

シンは頬を染めて頷き、カガリを背に乗せたまま夜道を急いだ。
暫くして現れたのは豪華な屋敷。
頑丈な門があり、奥に拡がるのは綺麗に整えられた庭。
簡単には開けられそうにない門を目の前に、シンは途方に暮れた。
一方、シンの背に乗っているカガリはサンタ袋から何かを探している。

「あった、これだ」

カードらしき物を取り出す。

「シン、あのインターホンの近くに行ってくれ」

カガリの指示にシンは門に備えられたインターホンへ近付く。
インターホンの前にはセンサーらしきものがあり、カガリがカードを掲げると閉じられていた門は低音を響かせてゆっくり開いた。

「なぁ、それ、どうしたんだよ」
「ラクスに貰ったに決まってるだろ」

ニッと破顔するカガリ。

「だよな…」

シンは大きく溜息を吐いた後、開いた門から中へと入っていった。
協会では枕元にプレゼントを置くのが決まりなのだが、プレゼントを配る時間帯は深夜で、当然、家には鍵が掛かっている。
普通なら、家の中に入る事は出来ない。
が、そこは、この協会の凄い所。
どんな家の鍵も全て入手しており、簡単に家の中へ入れるのだ。
勿論、全てを取り仕切っているのはラクス・クラインである。
どうやって手に入れたのか、誰も聞けないでいた。



綺麗に手入れされた庭を通り抜けて、大きな扉の前に立つシンとその背中に乗っているカガリ。
何処から手に入れたのか解らない鍵をカガリは取り出し、鍵の掛けられた扉を開けた。
室内に入ると広い玄関ホールが目の前に拡がる。
背負っていたカガリを室内に降ろすシン。
室内を靴のまま上がる為、靴を汚さないようにサンタはトナカイに背負ってもらう事になっている。

「じゃあ、ちょっと待っててくれよな」
「ああ、早く終わらせようぜ」

カガリはシンと別れた後、ラクスから貰ったザラ邸の見取り図を見ながら目的の場所を目指す。
見取り図には目的の場所アスランの寝室まで書かれている。
アスランの寝室は二階。
音を立てないように二階へと上がるカガリ。
豪邸らしく二階も広い。
部屋の数も半端ではない。
けれど見取り図のお陰でカガリは迷う事なく、アスランの寝室へ辿り着く。
そっと静かに扉を開けた。
アスランの部屋はモノクロで統一されて、物は無く整然としている。

「へぇ、綺麗なもんだなぁ…」

カガリは感心しながら部屋の中を進む。
ベッドに寝ているのは藍色の髪をした整った顔の少年。
寝ていても綺麗な顔にカガリは見惚れてしまう。
ぼうっと見詰めていると、枕元に掛かった紅白の靴下を見つける。
漸く、カガリは本来の目的を思い出す。
実は彼へのプレゼントはない。
何故なら、ラクスからの指示書に、彼の枕元にある靴下の中に手紙があるからそれを読むように書かれていたからだ。
そっと近付いて、靴下の中を調べる。
中にあったのは白いシンプルな手紙。
音に気をつけて開封し、中身を見る。


『サンタさんへ


 俺好みの彼女を下さい


 好きなタイプを書いておくので
 よろしくお願いします


 二枚目に続く』


「はぁ?コイツ、馬鹿じゃないのか」

カガリはつい声を出してしまった。
それに気付いて、慌ててベッドに振り返るがアスランが起きた様子はない。
ほっと息をつき、再び手紙に目を落とす。


『見た目について


 髪は太陽の様に輝く
 鮮やかな金色これは譲れない
 と言うか金髪意外有り得ない


 髪質は跳ねた感じがいい
 長さは俺と同じぐらいがベスト
 肩にかかる感じが丁度いい


 瞳の色は琥珀のような金橙色
 意志の強そうな瞳がいい
 猫のように釣り上がった目も好き


 スタイルについて


 胸は大きすぎず、小さすぎず
 程よい感じが好き


 全体的に筋肉質だといい
 筋トレが趣味だと言うなら完璧だ


 肌の色は白色より
 健康的に日焼けした感じがいい


 普段は男に間違われるような
 低いアルトな声が好き
 たまに出す女の子の声が
 烈しく萌だ


 三枚目に続く』


「まだ、続くのかよ!」

カガリは堪らず、突っ込んでいた。
突っ込みつつも残りの手紙を見る。


『性格について


 強気でさっぱりした
 男前な性格がいい
 口より先に手が出てしまう
 感じが好き
 そのくせに涙脆いといい


 人をおまえ呼ばわりする子が好き
 馬鹿って言われたい


 素直で嘘が嫌いな子が好き
 真っ直ぐすぎるぐらいがいい
 馬鹿正直だとなお良い


 照れ屋で恥ずかしがり屋が好き
 今、流行のツンデレだと最高


 恋愛には無垢で純粋な子がいい
 抱き締めたら林檎みたいに
 真っ赤になる子がいい
 キスする度に照れるなら
 素晴らしく萌だ


 そんな彼女を下さい
 よろしくお願い致します


 アスラン・ザラ』


「やっぱり、コイツ馬鹿だ」

手紙を最後まで読み終えたカガリの素直な感想だった。

「馬鹿で悪かったな」

後ろから聞こえたのは低く魅惑な声。
カガリが慌てて振り返ると、寝ていたはずのアスランがパジャマ姿で立っていた。

「なっ、なんで!おっ、おまえ!起きてるんだよ!!」
「なんでって…あれだけ、大きな声で読んでたら、目を覚ますって…」

カガリは気付いていなかったが、手紙の中身を声に出して読んでいた。

「そっ、そうか//…起こしてすまない」

素直に謝る。
サンタとして、寝ている人間を起こすなんて失態としか言い様が無い。
カガリは恥ずかしくて、穴があったら入りたい気分で、頬を紅く染めてアスランを見詰める事しか出来なかった。
一方のアスランはカガリを見たまま固まっていた。

「…どうかしたのか?」

固まっているアスランを不思議に思ってカガリは声を掛ける。
声を掛けられ、我を取り戻したのか、透き通る翠の瞳を真摯にカガリへ向ける。

「実は俺、サンタなんていないって思っていたんだ」
「なんだって!そのくせにサンタクロース協会に願い事したのかよ、おまえ!!」
「仕方がないじゃないか、子供じゃないんだ。サンタがいるなんて、この年で、信じている方がおかしいだろ?」
「う〜、確かに……」
「でも、考えを改めるよ。サンタはいるって」

アスランは目を細めて優美に笑う。
その麗しい微笑みカガリは目を奪われ、見惚れていた。
宝石のような翠がカガリの視界を覆う。
するとカガリは浮遊感に見舞われる。

「えっ、ええっ!!」

いつの間にか、カガリはアスランに抱き上げられていた。

「おまえ!何してるんだよ!」
「何って、今夜はクリスマスだ。恋人同士のする事と言えば……わかるだろ」
「はぁっ!?」

抵抗も虚しくカガリの体は先ほどまでアスランが寝ていた仄かに暖かいベッドへ沈められる。
アスランはカガリの上に覆い被さり、頬に両手をつけて覗き込むように顔を近付ける。

「俺の名はアスラン。もう、知ってるか…君の名前は?」

誰もが心奪われる微笑みで問い掛ける。
熱に浮かされたようにカガリはアスランを見詰める事しか出来ない。

「…カガリ…」
「カガリか、いい名前だな。これから、よろしく。俺の可愛い彼女」





「……カガリ、遅いな……」

シンはぽつりと呟く。
その言葉は吹き抜けの玄関ホールに寂しく響いた。





「今宵はクリスマス。

 皆様はどのように
 過ごしてらっしゃいますか?

 日々を真っ当に
 過ごしていらっしゃれば
 私が率いる
 サンタクロース協会が
 貴方の願い事を
 叶えて差し上げます。


 たとえ
 どんな願い事もですわ♪」




何とかクリスマスまでに
書き上げました
ハロウィンの時みたいに
総受けにしたかったけど…
いいネタが
思い付かなかったです(笑)

では、皆様
Merry Christmas!

2007.12.24
2010.10.29移転










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -