イザカガ編
「trick or treat!」
カガリはドアが開いたと同時に目の前の人物に向かって笑顔で言った。
言われたイザークはカガリの小悪魔姿を見て顔を真っ赤に染める。
「貴様〜!!なんという破廉恥な格好をしとるんだ!!」
怒鳴ったと思えば、頭に血がのぼったのか真っ赤な顔はさらに赤く染め上げ、しまいには顔から湯気がでそうな勢いだ。
「む〜、なんだよ!格好なんてどうでもいいだろ!!」
「よくない!!女人というのは無闇やたらに肌を露出するものではない!!」
イザークは過去の歴史を持ち出し、カガリの格好について説教をしだした。
先ほどまで笑顔だったカガリだが、口をへの字に曲げ不満気な顔になる。
「…なんだよ!似合わないならそう言えばいいだろ!この馬鹿!!」
カガリはイザークに怒鳴りつけると、入って来たドアから出て行こうとする。
「ちょっ、ちょっと待て!!」
慌ててカガリの腕を掴むイザーク。
「離せよ!帰るんだよ!!」
「べっ、別に似合わないとは言ってないだろ!!」
「でも、おまえ着るなって言ったじゃないか!!」
「そっ、それは……目のやり場に困るからだ…」
声は急に小さくなり、イザークの言葉はカガリに聞こえなかった。
「もう!離せよ!!」
カガリは強引に出て行こうとするが、イザークがそれを邪魔する。
玄関でもみ合う2人に軽快な言葉が飛ぶ。
「おっ、痴話喧嘩か?」
そこに現れたのは、たまたまイザークの家にいたディアッカだった。
「「ディアッカ!?」」
カガリは驚きの目で見て、イザークは苦々しい顔をする。
ディアッカはカガリの格好をじっと舐めるように見た。
「へぇ〜、姫さん、その衣装、超似合ってんじゃん!」
素直に言ったディアッカの言葉にカガリの頬は朱に染まる。
「そっ、そうか?」
恥ずかしがりながらも嬉しそうに笑うカガリの姿に、イザークは説教などせず褒めればよかったと後悔した。
「あ〜、今日、ハロウィンか」
ディアッカはしみじみ言う。
「そうだぞ」
やっと、話が通じそうな状況にカガリは目を輝かせ上目使いで可愛らしく言う。
「お菓子くれないと悪戯するぞ」
カガリの愛らしさに言われたディアッカは勿論の事、横目で見ていたイザークも一瞬で心を射ぬかれた。
「あ〜、姫さん、わりぃ…俺、お菓子持ってないんだわ」
「えぇ〜!?」
不満そうに口を尖らせるカガリに、ディアッカは怪しく笑う。
「だから…俺に好きなだけ悪戯してガフッ!!」
ディアッカは言葉を最後まで口にする事は出来なかった。
イザークが鳩尾に拳を決めたからだ。
「俺の目の前でそんな下品な言葉を言えると思うなよ」
「グゥレイトだぜ…」
ディアッカは親指を立てて笑うと崩れ落ち意識を失った。
「フン!」
ディアッカの最後の言葉をイザークは鼻であしらう。
後ろからそれを見ていたカガリは、再び、ドアから出て行こうとする。
「なっ、何してるんだ!?」
「帰るんだよ」
「どうして、帰るんだ!!」
「だって…お菓子ないんだろ。居ても仕方ないじゃないか」
素っ気無い態度をとるカガリにイザークは、手を強引に掴み部屋へと上がらす。
「何すんだよ!」
「菓子はないが、料理ぐらい作ってやる」
イザークの言葉にカガリの瞳は輝きだす。
「ホントか!?」
「ああ、楽しみにしてろ」
「うん!!」
こうしてハロウィンの夜、イザークはカガリと食事をして楽しく過ごしましたとさ。