秘密

蛇口を思いっきり捻ると、勢いよく水が流れ出す。
そこへ頭を突っ込んで、汗を流すのと同時に火照った体を冷やす。
ある程度、水を浴びればスッキリして頭を上げる。
水を止めた所にタイミングよくタオルを出される。
カガリが笑顔で渡すから、それを素直に受け取った。

「悪かったな。スティング」
「ああ、何がだ?」
「だっておまえ、わざと負けたんだろ?」

アウルとスティングの1on1ゲームは、最後の最後でアウルが勝った。
それをわざとだと確信しているカガリの発言。

「負けてやらねぇと、終わんねぇと思ったからだよ」
「フフッ、ありがとな」
「礼を言われる事はしてねぇって……」

ゴシゴシと濡れた頭を拭く。

「あのバカ、放って置いていいのか?」

薄い金色の瞳がカガリを優しく見下ろす。
アウルは完全にバテて、ゴール下に倒れ込んでいる。

「いいんだよ、放って置いて…」

カガリは頬を膨らまして、外方向く。

「ホントにいいのか?」
「いいんだ、約束破ったアイツが悪い」
「だな……」

スティングはクックッと笑う。
同じようにカガリも柔らかく笑う。
会話が途切れると少し沈黙。

「なぁ……」
「うん?」
「俺も…褒美、貰って……いいか?」
「褒美?」
「ああ……わざと負けてやったというか、なんというか」

スティングの言葉はえらく歯切れが悪い。

「褒美って?」

カガリは小首を傾げながらスティングを見上げている。
一瞬の静寂。
スティングの頭にかけているタオルがカガリの頬を掠る。
影が出来て顔が近付いたんだと思えば、軽く押し付けられる唇。
キスだと解れば、カガリの顔は真っ赤に染まる。

「っ!!//……スティッ…ングッ!!」
「あー、今のが褒美……アイツには…秘密……な」




キスをメインにしたお話、第8弾
おまけのスティング♪

2010.12.22










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