問答無用

「なぁ、イザーク」
「なんだ」
「それ、まだ、終わらないのか?」

カガリは積まれた書類を指差す。

「もう少しだ。待ってろ」

書類に目を通したまま答える。

「さっきから、そればっかだ。いつ終わるんだよ」

駄々を捏ねる子供みたいに頬を膨らます。
そんな反応も無視して、イザークは仕事を進める。

「む〜……あっ」

机に向かって黙々と仕事しているイザークの姿はかっこよくあるが、自分を見てくれないのは腹立たしくもある。
ちっとも相手をしてくれないそんなイザークに、腹を立てたカガリはある事を思い付く。
座っていたソファから立ち上がると、執務の机にかじりついてるイザークに横から思いっきり抱き付いた。

「なっ//何する//」

漸くこちらを見たイザークに満面の笑みを浮かべる。

「抱き付いただけだ♪」
「……//……好きにしろ//」

ぎゅうぎゅうと抱き付く。
最初の方こそ、イザークの顔は赤くなっていた。
けれど、慣れたのか普通に仕事をこなしだす。
それを気にくわないカガリはイザークに抱き付きながら、また、とある案を思い付く。
今度は白い頬にキスをした。
チュッと音を立てて。

「なっ!?//」

もの凄い勢いイザークは振り返った。
耳まで真っ赤だ。

「きっ、貴様!?」
「なんだよ♪」

カガリはニコニコ顔で見続け、イザークは完全に動揺している。
何か怒鳴りつけようと思ったが、頭が真っ白な状態ではいい言葉が思い付かずあからさまに顔を背けると、再び、書類に目を移す。
しかし、未だに耳は赤い。
また、仕事をしだしたイザークに、カガリの不機嫌さは大きくなる。
カガリは腕を組んで考え込む。
どうしたら、仕事をやめさせて自分の方に振り向くか。
必死に考えている最中、邪魔のなくなったイザークは、さくさくと書類に目を通していく。
そして、手元には残り1枚になった。
暫くしてカガリは一番の妙案を思い付く。
意気揚揚と、またイザークに抱き付く。
けれど、その程度ではイザークは揺るがない。
だから、カガリはさらに動く。
イザークが着ているザフト白服の襟元を開ける。
驚くイザークを尻目にカガリは首元にキスをする。

「ななっ!?//」

声が必然と裏返る。
そんな事お構いなしにカガリは何度もキスをする。

「あれ、おかしいな。どうして、跡がつかないんだ?」

どうやら、キスマークをつけたいらしいが知識が伴っておらず、イザークの首元は未だ白いまま。
最初こそ狼狽えたが、どんなに愛し合っても相変わらずの初なカガリに微笑ましく思いつつ、最後の書類に目を通してサインを記す。
バンと机を叩くと、ペンを置いて立ち上がる。
抱き付いていたカガリは、手を外され尻餅をつく。

「もう、なんだよ。急に立ち上がるなよ」
「フッ、仕事が終わったからだ」
「ほんとか!?」

目を輝かせて飛び上がりイザークにしがみつく。

「じゃあさ、遊びに行こう♪」

手を繋いですぐさま執務室を飛び出す行動をとったが、逆に引っ張り返される。
勢いが強すぎて、その反動でカガリはイザークの胸に倒れ込む。
そして、自然の流れのように一回り小さな体を軽々と持ち上げる。

「えっ!?何すんだよ!」
「貴様には責任をとってもらわねばならん」
「責任!?」

小首を傾げたままのカガリを無視して、先程までカガリが座っていたソファにそっと降ろすとそのまま上に跨がる。

「責任って何だよ!」

この状況になっても、カガリは現状を把握出来てない。
どこまで初すぎる恋人に、イザークは知らぬ内に笑みを浮かべる。

「俺をその気にさせた責任だ」
「その気って……!!//…わっ、わたし、そんなつもりは!?//」
「煩い!問答無用!!」

解りやすいくらい黒く微笑むと、待ちきれないと噛み付くキスをした。




キスをメインにしたお話、第5弾
奇跡の攻めイザーク♪

2010.12.15










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