砂味
「アッチィ……」
ジリジリと照らす赤い太陽に愚痴る。
「暑いのは当然だろ。オーブは常夏なんだから」
パラソルの下に寝そべっている人物にカガリは見下ろして声をかける。
「んー、でも、今日は特にアッチィ気がする。何にもしたくねぇ」
だらだらとシートに寝転がる恋人に、カガリの怒りがふつふつと湧く。
「なんだよ!泳ぎに行こうって言ったのはおまえだろ。この馬鹿シン!!」
「ん、バカでけっこう」
わざわざ赤い水着を新調してビーチデートを楽しみにしていたカガリにすれば、シンの態度は許せなかった。
とはいえ、怒号を飛ばしても全く応えてないシンの様子に呆れ果てる。
「馬鹿はパラソルの下でごろごろしてろ。私は泳ぎにいくからな!」
足で砂をかけてやろうかと思ったが、それすら腹立たしい。
くるりと背を向けて一歩踏み出そうとした時、軸足が地面からはずれてカガリの体は一瞬空中に浮いた。
重力が働くまま、カガリは突っ伏す。
べしゃっと、鈍い音がした。
「なっ!!何すんだ!?」
砂まみれになったカガリは、怒りのまま振り返る。
「傍にいてくれなきゃ、ヤダ」
子犬のような目で懇願するシン。
けれど、足首を掴んで転がして捕まえる行動は狼のよう。
「あのな……おまえ、何しにここへ来たんだ!!」
わざわざビーチまできて、パラソルの下で寛ぐなんてカガリの頭の中にはない。
「う〜ん、こういうことするため?」
倒れ込んでいるカガリの上に被さって唇に吸い付くシン。
「……んっ…………うぇっ!」
嫌な音がして、シンは堪らず唇を離して唾を吐く。
「…砂味だ……」
「当たり前だ。誰のせいで砂だらけになってると思ってるんだ!?」
「まぁ、俺のせいなんだけど……」
「ああ、もう、泳ぎにいくから退け」
「退かない。傍にいてくれなきゃ、ヤダって言ったじゃん?」
「じゃあ!どうして海に行きたいって言ったんだよ!?」
「そりゃ、こういうことするためって、さっき言ったろ」
鮮やかな赤の水着の結び目をはらりと外す。
「きゃあっ//!?」
「水着は存分に見たからさ、今度は俺に美味しく食べられて♪」
キスをメインにした小話、第3弾
いぬっころシン♪
2010.12.3