信頼

注意 アスランとカガリが
   出会ってない本編パロ



「カガリッー!!」

手を大きく振りぴょんぴょんと跳ねて、落ち着きないの行動をとっているのはキラ。
これでも、オーブ軍准将だ。

「そんなに大声を出さなくても聞こえてる」

ハァッと大袈裟に溜息を吐くのは呼ばれた本人。
カガリはオーブ代表としてキサカ達を引き連れて歩いてくる。
そして、キラの前に立つ。
横にはザフトとの白服を纏った男が佇んでいた。

「あっ、カガリ。紹介するね。僕の幼馴染みで、今はザフト軍で隊長をしているアスランだよ」

紹介された男は仰々しくザフト式敬礼をする。
暗色で濃紺の髪が肩に触れる長さ、瞳はどこまでも鮮やかな緑が印象的。

「初めまして。ザフト軍所属、ミネルバ艦長、アスラン・ザラと申します。以後、お見知りおき下さい」
「私はオーブ連合首長国代表首長カガリ・ユラ・アスハだ。宜しく」

カガリは自ら手を差し出し、親愛の情を示す。
手を軽く握り返し、アスランも敬意を示した。
そんな2人の肩をポンとキラが叩く。

「何、畏まちゃってんのさ。カガリとアスランでいいじゃない。年も同い年なんだからさ」

今度はカガリがキラの頭を叩く。
そこに軽さはなかった。

「痛いよ、カガリ」
「おまえが軽すぎるんだ。何度も言ってるだろ。立場を弁えろって!今は代表と准将として振る舞え!!」
「はーい……」
「では、准将という立場に戻った所で、キサカ一佐がヤマト准将に話があるそうだ」
「へっ!?」

カガリの後方に控えている屈強な男こと、レドニル・キサカ一佐がキラに向き直る。

「ヤマト准将、例の書類が提出されてないのですが…」
「えっ!?今、それ、言う?」
「プラントに上がる前に提出して欲しいと、再三申し上げたのですが……未だに、提出して頂けてません」

細く鋭い瞳がキラを射抜く。
堪らず、カガリに目で助け乞うがしれっと目を逸らされる。
逃げ場の無くなったキラはがっくりと肩を下ろす。

「解りました…今すぐ、書きます」
「よかったな、キサカ一佐」
「はい。では、一度ヤマト准将と部屋に戻ります」
「そうしてくれ」

カガリとキサカが目配せしているのを見て、キラは監視付きで書類作成する羽目になった事に大きく溜息を吐く。

「あーあ、アスランとカガリと僕の3人でプラント案内に繰り出そうと思ってたのになぁ〜」

恨めしげにカガリを見るキラ。

「ヤマト准将、しっかりと仕事をしてくれ。オーブ軍のエースなんだから」

絶対に断れない笑みを浮かべて、カガリはキラをじっと見詰め返す。

「はーい……了解しました」

完敗のキラはキサカに連れられ、カガリが来た道を戻って行く。
その後ろ姿はかなり項垂れていた。
ふと、止まって振り返る。

「あー、アスラン。僕の代りにカガリの事、宜しくね」

最後に手を振ってキラの姿は無くなった。
残ったのはアスランとカガリ、そして、護衛であるトダカ一佐とアマギ一尉だけとなった。

「失礼を承知で申し上げますが…」

アスランがカガリを見て言う。

「何がだ?」
「キラは軍人に向いてない気がします。さぼりたがるというか、責任感がないというか……幼少の頃から甘い処がありましたから」
「流石、幼馴染みだな。キラをよく知ってる」
「だったらどうして、准将という地位を?」
「軍人としての規律等を守るのは不得手だが、MSの操縦や情報処理能力はオーブでキラに敵う者はいない。これは私の過大評価ではなく、軍部の皆がそう思っている」

カガリの言葉に控えている護衛の2人も軽く頷く。

「…信頼されておられるのですね」
「普段は貴殿が思っているような感じで、よくキサカを困らしているよ」
「そのようですね」

カガリが笑うので、アスランも笑って返した。

「ところで、キラにも頼まれました事もありますし、この私でよければ、プラント内の施設をご案内出来ますが、どうなさいますか?」
「それは助かるな。是非お願いするよ」



施設の中でも機密部分を除いた場所をカガリ達は早足で見て回る。
その間、アスランはカガリの質問に対して懇切丁寧に答えてくれた。
アスランの紳士的な対応にカガリは少なからず好感を持った。

「少し、急ぎ足で回りすぎましたかね。代表、お疲れになったのではありませんか?」
「ん、少し疲れたかな。ちょっと過密スケジュールだったかもしれない」

地球からプラントに来て、その日の内に議長と会談して、さらにわざわざ自分の為に用意してくれた懇談会に出席し、そしてプラントの施設内を歩いた。
疲れない訳がない。

「実はあちらにリラクゼーションルームがあります。宜しかったら利用してみませんか?」
「プラントは軍部にそんな設備があるのか?」

先程、見て回った所にはなかった。

「はい、心身のリフレッシュは不可欠ですので」
「そうか、オーブも見習わなくてはいけないな」

カガリはオーブの施設内に造れるか護衛の2人に話し掛ける。
トダカとアマギも現状の敷地がどうだとか、何やら意見を言う。
本格的な話し合いになりそうなので、アスランは慌てて声をかけなおす。

「あの、代表?」
「ん?」
「それで、施設を利用されますか?」
「そうだな…見学も兼ねて、少し世話になろうかな」
「ではこちらです」

案内されてカガリ達はついていく。
この時、素直に自分の後を歩いてくるカガリの姿に、アスランがほくそ笑んでいる事を誰も知らない。
少し歩いて目的の場所に着くと、アスランは扉を開ける。
カガリが中に通され、トダカとアマギはアスランに制止される。

「こちらから、リラクゼーションルームになりますので入室をお控え下さい」

そう言ってアスランが室内に入った後、扉は静かに閉められた。
トダカとアマギは顔を見合わせ、仕方なく扉の前で代表を待つ事にした。
その場所はカガリが想像していた感じとだいぶかけ離れていた。
殺風景で何もない。
目についたのは、唯一置かれている革張りのソファ。
こんな情景でどうやってリフレッシュ出来るのか、カガリは不思議で仕方ない。

「なぁ、ここでどんなリラクゼーションが出来るんだ?」

振り返ってアスランを見る。
アスランは扉の前でカガリ側に背を向けたまま立っていた。
呼び掛けに対して、一向に振り向かない。

「どうかしたか?」
「アスハ代表。貴方は何を持って人を信頼されるのですか?」
「何を言って…?」
「俺が白服だからですか?それともキラの幼馴染みだからですか?」
「えっ?」

アスランはゆっくりとカガリの方へ向き直る。
その面持ちは先程の紳士的な態度の時と全く変わってない。
にも拘らず、カガリは緑の瞳に射抜かれた時、背筋が寒くなるくらい戦慄く。
得体の知れない何かをカガリは感じとった。
こちら側に向かって歩き出したアスランに対して、比例するようにカガリは後退りする。
けれど、一気に距離を縮められてアスランに腕を掴まれた瞬間、カガリの世界は反転した。
近くにあったソファに押し倒されて馬乗りされる。
あまりの出来事にカガリは呆然とアスランを見上げる。

「おまえ…何のつもりだ……」

冷静に言ったつもりだったが、声は僅かに震えていた。

「俺の本質はどこにあると思いますか?」
「私がそれを聞いてるんだ!答えろ!!」
「答えは意外と簡単ですよ」
「何?」
「ただ、貴方を……カガリを抱きたいだけ」

全身の血の気が引くとはこの事。
寒気がして、体が恐怖に震え出す。
冗談ではない事が伝わってくるから。

「ふざけるな!!離せ!!」

暴れても絶対的な力の差は一目瞭然。
それでも、このまま何もしないなんてカガリには耐えられない。

「ククッ、嘆くのなら無能な護衛や、俺に対して全く警戒しなかった貴方自身やキラを恨む事だ」
「ッ!?……」
「…予想外だな。てっきり、もっと激しく抵抗されると思っていたが?」
「泣き叫んで暴れたら、解放してくれるのか?」
「まさか、それはそれで、そそられる」

屈託のない笑みを浮かべて微笑む。
カガリは堪らず歯を食い縛る。
ギリッと音がして、勝目がないと解っていても睨みあげる。

「その目、そして屈服しない態度が、とても興奮する。今にも気が狂いそうだ」
「…この下衆が!!」
「おや、大地の女神と称される姫の言葉遣いとは思えない」
「その姫に人の道を踏み外す事をしようとしているのはどこの誰だ!!」
「それを言われると、言い返せないな。フフッ」

両手を頭上で一纏めにして、動かせないように押さえ付ける。
白の代表服に空いてる手がかけられ、綺麗な肌が露になった。

「ヒィッ!!」

声にならない悲鳴をあげる。
全身がか細く震え、カガリの世界は滲む。
恐怖と絶望から視界を閉じた時、涙の一雫が頬を伝って冷たい床に空しく落ちた。




当初はドレス姿のカガたんを
押し倒す予定だったのですが
これでは白服にした意味がないと
途中で気付いて変更しました

今までの書物中で一番の
黒アスだと思います★

2011.1.21










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