お見合いA

「改めて、紹介する事はありませんね。アスハさん」
「えっ!?あっ、はい…」

彼が笑顔で見詰めてくるので、カガリは真っ赤になって俯く。
下を向きながら、どうしても頭の中に浮かんでくる疑問がカガリを支配する。

「あっ、あの…」
「はい、何ですか?」
「ザラ先生は知っていたのですか?……その、お見合い相手が…私だって…」
「ええ、知ってましたよ。父から相手方の詳細を聞きましたので」

その事実にカガリは驚愕する。

「アスハさんこそ、俺だと聞いてなかったのですか?」

問われてカガリは冷や汗を流す。
そもそも、相手がどうこうではなく、お見合い自体が嫌だったカガリは、相手の名に興味などなく今の今まで誰かだなんて全く知らなかったし、知ろうともしなかった。
笑うしかなく、引きつりながらも笑みを浮かべる。

「クスッ、顔が強張ってますよ」

カガリの顔がさらに引きつったのは言うまでもない。
けれど、疑問はまだ残る。
相手が解っていてお見合いを了承した事になる。

「えっ、えと…その…」
「はい?」
「ザラ先生は私だと解っていてお見合いを受けたのですか?」

そこにある意味をカガリは知りたくて思い切って聞いてみた。
小さな希望を胸に。

「……それよりも……」

彼は綺麗な緑の瞳をすっと細める。

「アスハさん」
「はい」
「先刻、帰りがけに言おうとしていた事は何ですか?」
「えっ!?」

まさかの蒸し返しの攻撃にカガリはどぎまぎして俯く。

「あぁっ、うっ…その…」
「あんなにも必死に伝えようと何ですか?」
「それは……//」
「何ですか。アスハさん?」

いつの間にか詰め寄られていた。
穏やかな顔ではあるが意志のの強い視線がカガリを貫く。

「…うっ…あっ…ザラ先生が…………好き//」
「知ってた」

思わぬ答えにカガリが顔を上げると、不意に彼の顔が近付いてきた。
一瞬でありながら、永遠を感じる口付け。
カガリは余りにも突然の出来事に声も出せずにいた。
彼は満足そうにカガリの頬を撫でる。

「お見合いなら、君が逃げられないと思ったから」

そう告げられてカガリは彼を改めて見る。
ほっとした顔があって、本当に嬉しそうだった。

「知ってはいたけど、やっぱり、聞かないと思いは解らないから」

カガリの感触を確かめるようにギュッと抱き締める。

「じゃあ…ザラ先生は……」
「そう、君が…………カガリが好き」



「ふふ〜ん♪」

朝からカガリは上機嫌。
昨日の落ち込みと余りにも違う態度にフレイは不審に思う。

「何よ、昨日は人生の終わりみたいなオーラ全開だったくせに」
「だって〜♪」

厭味を言っても効果のない様子なますます怪訝に感じる。

「お見合いはどうなったのよ」
「ああ、それか!」

全く意に介さない対応にフレイの眉間に皺がよる。

「実はな…………」



「アスハさん」

カガリの言葉を遮るように声がかけられた。
そこにはカガリの思い人の姿。

「ザラ先生♪」

明らかに声が弾んでいるカガリフレイは驚く。
あっという間に彼の元に言って楽しく喋っている。
その雰囲気にフレイはまさかと思う。
昨日、駄目元で告白しろと言った事が成功したのかもしれないと。
訝しく2人を見ていると彼がフレイの傍へやってくる。

「アルスターさん、丁度、貴方にお願いがあったんです」
「私にですか?」
「はい」
「何ですか?」
「実は今日、貴方の家にアスハさんが泊まるという事にしてほしいのですが…」
「はいぃ!?」
「駄目ですか?」
「一体、どういう事なんですか?」

意味の解らないフレイには疑問符しか頭に浮かばない。

「それは……」
「フレイ、聞いてくれ!!」

彼が言おうとした事をカガリが遮る。

「実は今日、家に帰れないから、どうしてもアリバイが必要なんだ」

フレイもバカではない。
アリバイが必要、つまり、何が言いたいのか察知できる。

「解ったわよ。あたしの家に泊まってる事にすればいいって事よね」
「うん。出来れば、家に連絡してくれるとお父様も心配しないから」
「はいはい。私だって、野望な人間じゃないわよ」
「ありがとう、フレイ♪」

カガリはフレイに抱き付いた後、笑顔で彼と帰っていった。

「……まさか、本当に成功するなんて……つうか普通、教師が生徒に手を出すかぁ!?」

フレイが真実を知るのはもう少し後。



最後、アスランの手が
早い気もしたけど……
アスランだからいっかと
開き直る(笑)

2010.10.29










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