王子様

ザフト大学に入学し、プラントからオーブに上京してはや数ヶ月。
独り暮しの生活にもなれ、俺は近くのコンビニでバイトをし始めた。
全く初めての事で最初は戸惑ったが、徐々にこつを覚え仕事を手際よくこなしている。
余裕が出てきた俺は周りがよく見えるようになった。
そして、コンビニで一人の女の子が来るのを楽しみにしている。
彼女は俺より一つ下。
多分だけど。
でも、受験生が持つ参考書を持っていたから間違ない。
彼女は、これも多分だが、塾帰りにこのコンビニによる。
どうやら、彼女は難関大学を目指しているらしく、毎日塾へ通ってるみたいだ。
その大学が俺と同じザフトだったらいいなと思うばかり。
因みに彼女と親しく話した事はない。
でも、挨拶はしている。
それは俺の勇気の賜物。
レジで会計をしている時、彼女はいつも下を向いていて顔が見えない。
俺は顔を見たくて思い切って声を掛けた。

“こんばんは”

たった五文字に俺は今まで生きて一番勇気を使ったと思う。
俺の挨拶に彼女は吃驚して顔を上げた。
そして、たどたどしく挨拶してくれた。

“こっ、こんばんは”

ただ、それだけの事。
でも、俺は声が聞けて嬉しかった。
それから、挨拶だけ交わしている。
彼女が笑顔で返してくれるのが堪らなく幸せ。



ある日の帰り道。
俺は輝く金色を見つけた。
あの彼女だ。
気付けば俺は彼女に近付いていた。
挨拶だけでもしようと思ったが彼女は友達といた為、離れた場所から見詰める。
彼女達の声が聞こえる。

「ちょっと、帰り道まで勉強?」
「もう、邪魔するなよ。フレイ」
「そうよ、邪魔しちゃ駄目。カガリは王子様の為に頑張ってるんだから」
「王子様!?」
「ミリィ!なんで言うんだよ!!」
「だって〜」
「どういう事!私、何も知らないわよ!」
「コンビニで働く藍色の髪の王子様。カガリの片思い相手よ!」
「それと勉強と何が関係あるの?」
「王子様がザフト大学なのよ!」
「へぇ〜……一緒の大学に通ってお近付きになろうって事ね」
「……//」
「そんな回りくどい事しないで告っちゃえばいいじゃない!」
「っ!?…だから、フレイに言いたくなかったんだ!!」
「あっ、待ちなさいよ。女はね、度胸なのよ!」
「待ってよ、二人共!!」



彼女達が去った後、俺は固まってしまった。
そんな風に思ってくれてたなんて…
思い出せば、毎日コンビニに来てくれるのも、下を向いていたのも、全て俺を意識していたからなんだ。
もう一度、勇気をだそう。
一途なお姫様の為に。




コンビニを通り過ぎた時に
思い付きました!
コンビニで買った時じゃないのが
ポイントです(笑)

2008.9.11
2010.10.29移転










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