卵焼き

麗しい顔。
聞き惚れる声。
洗練された振舞。
全てが整った青年。
それが、新しくザフトの社長に就任したアスラン・ザラ。
会社ではその話題で持ちきりである。

「あ〜ん、社長があんなイケメンに変わるって知ってたら、私も秘書になったのに〜」

箸を銜えて悔しがっているのは新入社員のミーア。

「今さら、言ってもしょうがないだろ」

同じく新入社員のカガリは、作ってきたお弁当のおにぎりをぱくつく。

「ちょっとカガリ、私は真剣に話をしているのよ!お弁当なんて食べてる場合じゃないでしょ!」
「今は昼食の時間なんだ。食べるのは当然だろ」

カガリは自ら会心の出来だと思っている卵焼きを食べながら言った。

「もう、カガリったら〜、社長の話より、卵焼きだって言うの〜?」
「当たり前だろ!社長なんかの話をしててもお腹は膨らまない!!」

つい、大声でしかも立ち上がって言った。
その為、食堂にいる全員の注目を浴びる。
カガリは羞恥心にかられて座ろうとするが、目の前にいるミーアは目を限界まで見開いて固まっていた。

「どうした、ミーア?」

カガリが不思議そうに聞くと、ミーアではない人物が答えた。

「確かに、俺の話ではお腹が膨らまないな」

聞いた事のある声にカガリが物凄い勢いで振り返ると、すぐそばに端整な顔があった。
話題のザラ社長である。
金魚のように口をパクパクと開け、ザラ社長を指差しながら固まってしまったカガリ。
そんなカガリを優しく微笑み、ザラ社長はそっとをカガリの手を降ろさせる。

「駄目だよ、人を指差しては」

手が触れただけで、カガリの頬は赤く染まる。
ザラ社長は綺麗な笑みを崩さず、ある物に手を伸ばす。

「これ、美味しそうな卵焼きだね。一つ、貰っていい?」

カガリは返事が出来ず、ただ、首をコクコクと振る。
男にしては細く美しい指は、カガリお手製の卵焼きを一つ取って口に運んだ。
味わって食べたザラ社長は、カガリを見詰めて優美に微笑む。

「凄く美味しい。今度、俺の為に作ってきて」

カガリだけ聞こえるように、口を耳元に寄せ囁いた。
顔は林檎のように真っ赤に染まる。

「ご馳走さま」

そう言って、ザラ社長は秘書を連れて食堂を去っていった。



「レイ、彼女の名前は?」

食堂を出たザラ社長は秘書のレイに訪ねる。

「彼女は新入社員カガリ・ユラ・アスハです」
「秘書課に異動出来るか」
「…また、お遊びですか?」
「まさか、今回は本気だよ」




珍しい社会人パロ!
思いつきのわりには
結構長かった(笑)

2008.9.8
2010.10.29移転










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