平生A

「お仕置していい?」

ザラ先生の放った一言にカガリは凍り付く。

「えっ!?なっ、何でだよ!!」
「カガリがフラガ先生に体を触らせたから」
「だから、あれは…」
「スキンシップでも、俺は嫌」

いつの間にかザラ先生の左手はカガリの胸に移動し、柔らかな胸を優しく揉みだす。

「やっ!」

カガリは慌ててザラ先生の手を掴み、目で抗議する。
手を掴まれてもものともせず、ザラ先生は感触のいい胸を揉み続ける。

「んやぁ……がっ、学校でこういう事したら…」
「知ってる、一か月禁欲生活だろ」
「じゃあ……」
「カガリに選ばせてやる」
「へっ?」
「此所でお仕置されるか、俺の家でお仕置されるか。どっちがいい?」
「……お仕置は免れないのか?」

恨めしそうに見上げるカガリ。

「免れられると思うか?」

ザラ先生は音を立てて目に口付けを送る。
顔は笑顔そのもの。

「………………アスランのいえ…」

カガリは観念し、聞こえるか聞こえないような声で言った。
勿論、ザラ先生は聞き逃さなかった。

「じゃあ、俺の家に行こうか」
「えっ、数学の宿題を教えてくれるんじゃなかったのか?」
「俺の家でも出来るだろ」

ザラ先生は笑ってカガリの肩を抱き、化学室を後にする。
カガリは余りにも早い展開にこっそりとザラ先生に解らないように溜息を吐く。
化学室を出る途中、ザラ先生は扉に手をかけた状態でカガリを見下ろす。

「あっ、解っているとは思うけど、今日は泊まりだから」

言ったそばから、ザラ先生は含み笑いをする。
多分、こんな展開になるだろうと思っていたカガリは苦笑いしかでない。

「ん、何か不服そうだな、カガリ?」

ザラ先生が爽やかな笑顔で喋っているのが、カガリには凄く癪に障り睨み付けて見上げた。

「毎週、毎週泊まりだと言い訳が大変なんだぞ!解ってるのかよ!!」

まさか言い返してくると思わなかったザラ先生は一瞬たじろぐが、すぐさま笑顔に戻りカガリの顔に自らを近付けた。

「なら、俺が家に電話しようか」

厭味なく綺麗に笑って言うザラ先生。
カガリは瞳が零れ落ちるくらい見開いて驚く。

「なっ!?何言ってんだよ!!」
「ん〜、ついでにカガリのお父様に電話越しでも挨拶しようかと思って」

相変わらず、整った顔で笑うザラ先生。
冗談を言ってるようには見えない。

「だっ、駄目に決まってるだろ!!」
「どうして?」
「どうしてって…」

断固拒否な態度にザラ先生はあからさまに不服そうな顔をする。
一方のカガリは洒落にならない展開に慌てる。
カガリとしてはザラ先生を父に紹介する事を渋っている訳ではない。
ただ、今の状況で紹介する事は自分達の関係をばらすのと同時に、恋人として当然の関係も持っている事も知られてしまう事になる。
心構えが出来てないうえ、厳格な家に育ったカガリにとって耐えられない。
状態が一杯一杯のカガリは、顔が青ざめていく。
ザラ先生としては軽い冗談のつもりで言ったのだが、完全に真に受けたカガリの様子に苛めすぎたかなとほんの少し後悔する。
でも、カガリの泣き顔が嫌いじゃなかったりもする。

「冗談だから、そんな顔するな」

カガリがほっとするように柔和に笑って、涙目の瞳に軽い口付けを送る。

「う〜……バカァ…」

カガリは堪らずザラ先生の胸に顔を埋める。
ザラ先生はぽんぽんと軽く背中を叩いて安心させる。
優しく髪を撫でて安心させた後、ザラ先生はゆっくりとカガリの顔を上げる。
ザラ先生は真剣な瞳でカガリを見詰める。

「でも、カガリが卒業したらきちんと挨拶しに行くから」

ザラ先生の言葉はまるでプロポーズのようだった。
カガリは瞬く間に真っ赤になる。

「えっ……//」
「だから、それまで待ってて」

耳元で甘く囁く。

「………うん//」

顔を真っ赤にしてさらに瞳を潤まして微笑むカガリに、ザラ先生は我慢出来ず石竹色の唇に自らの唇を寄せた。
それは触れるか触れない程度。
ふわりと舞う羽根のように。

「おっ!おまえ!!いっ!今!?」
「ん〜、どうしたカガリ?」

ザラ先生は余裕な態度微笑む。
カガリの方は赤い顔をさらに赤くして、沸騰して湯気が出そうな勢いだ。

「学校では絶対しないって約束じゃないか!!」
「何を?」

ザラ先生はしれっとした態度で問う。

「えっ!……キ……キス…」

言うのが恥ずかしいカガリはザラ先生から目を逸して俯いてしまう。

「それで?」
「それでって!おまえ!!ここ、廊下なんだぞ!誰かに見られたらどうするんだよ!!」

既に二人は化学室を出ており、廊下から見える景色は日が落ち、辺りは夜の帳が下りはじめている。

「大丈夫、こんな時間に生徒はおろか他の先生もいないさ」

カガリを再び抱きすくめ、今度は額に口付けを送る。

「そういう問題じゃない!!」

カガリは憤慨する。
隙の多いカガリは毎日毎日、努力しているのだ。
学校ではうっかりといえども絶対に名前では呼ばない。
馴れ馴れしくしない。
極力関わらない。
そうする事でカガリは誰にも関係がばれる事なく学生生活を円満に送れると思っている。
親友であるミリアリアにも言ってないのだから。
それにも拘らず、ザラ先生は放課後に二人きりで会う事を要求し、さらにばれないと言ってしばしば抱き締めてくる。
その度にカガリはひやひやする。
ザラ先生に至っては全く気にしている様子はない。

「カガリは気にしすぎだ」
「違う!おまえが気にしなさすぎなんだよ!!」

カガリはぷりぷりと怒る。
けれど、ザラ先生は気にする事なくカガリの腰に手を回して廊下を進む。

「さてと戯れあいはこれぐらいにして、早く帰ろう。時間が勿体ない」

また、カガリの耳元に寄せて囁く。
心底楽しそうに笑って歩くザラ先生。
カガリはそんなザラ先生の姿に呆れて、再び溜息を吐くが顔は笑顔だ。
学校でのザラ先生は真面目でクール、容姿は俳優並にかっこよく女生徒から絶大な人気を誇る。
何も知らない頃のカガリも、ザラ先生をそんな風に思っていた。
しかし、いざ付き合ってみると全く違った。
平生のザラ先生はちょっと強引でよくカガリをからかう。
そして、やたらと肌の触れ合いをしたがる。
カガリは恥ずかしくて逃げるだが、そこは強引さを出し接してくる。
いつしかそれが嫌ではなくなって、むしろ求めている自分自身にカガリが驚くのだった。
それが二人の平生。
平生とは普段という意味。




何が書きたかったというと
接点のない二人が実は裏で
こっそり付き合ってたという話★
教師の時のザラ先生と
平生のザラ先生の違いを自分なりに
出せたと思います
ここでは敢えて
ザラ先生表記してたのですが
何回間違ってアスランと
書いていた事がありました(笑)

2008.8.12
2010.10.29移転










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