至上最大の敵

長かった春は終わり、俺は愛しい愛しい姫と永遠に結ばれる事となった。
とにかく春は長かった。
極度のシスコン大魔王と、何かと言い寄ってくるツンデレ黒毛玉の妨害もあったが…
俺はやっと…
カガリと結婚する事が出来た!!
今、思い出しても鮮明に甦る。
ウェディングドレスのカガリ。
初夜に恥じらうカガリ。
そして…
俺と身も心も結ばれた時の艶っぽいカガリ。
全てが可愛くて愛しい。
今まで幸薄かった俺は、この上ない幸福に包まれていた。
この幸せが永遠に続くと俺は信じて疑わなかった。
物事には始まりがあれば、終わりが来る。
それが、自然の摂理だったなんて……



俺は軍のトップ、カガリはオーブ代表首長として忙しい日々を送っている。
だから、二人の休日が重なる事は少ない。
そんな貴重な日を俺は、日頃のカガリ不足を補うように努めている。
休日の前日の夜から、朝、昼と、そして夜、まる一日以上掛けてカガリの全てを堪能してきた。
俺にとって最上の日。
だが今、俺の幸せな日を邪魔する者がいる。
それは至上最大の敵。
我が息子、リアン。

「おかあさま〜」

リアンはカガリの膝の上に座って、俺がいつも堪能して止まない豊かな胸に頬を摺り寄せて甘えている。
ぐやじい!
リアンが生まれるまであの場所は、俺の場所だったのに!!
ここ最近、リアンの甘えっぷりはひどい。
俺とカガリは…その…いちゃいちゃラブラブが全く出来てない。
俺のストレスは溜まる一方だ!
しかし、カガリは忙しさのあまり、リアンを可愛いがれてない事を後ろめたく思っている所があり、ぶっちゃけて俺よりリアンを優先する。
これが腹立たしくて仕方ない。
だが、相手が息子なだけに邪険に扱えない。
前に一度、思いっきり邪魔扱いしたら、カガリにこっぴどく叱られた(泣)
けれども、俺とて黙って見ているつもりはない!
策はある。
俺は徐に、ソファで戯れているカガリとリアンの元へ向かった。
俺はリアンと目線が合う様に跪いて、カガリと同じ色の黄金の髪を優しく撫でる。
リアンは大きな瞳を瞬かせ、俺を見詰めてくる。
髪はカガリ色だが、瞳は俺と同じ緑色。
顔はカガリ似だ。
これが女の子なら凄まじく可愛いのに…
カガリと娘が戯れている姿はなんとまばゆい事だろう。
現実は娘ではないので…全く、まばゆい事はない。
むしろ、妬ましい…
そんな感情を直隠しにして、俺はリアンに優しく声を掛ける。

「リアン」
「ん、なぁに、おとうさま?」

小首を傾けている姿は、天使のようで本当に可愛い。
これで娘だったら最高なのに(泣)
願望を頭のすみに追いやり、リアンに接する。

「リアンはいつも独りで寂しいだろ。だから、弟や妹が欲しいだろ?」

言った後、俺はちらりとカガリを見やる。
俺の意図を理解して、案の定、顔を真っ赤にしている。
そうさ、これが俺の策。
弟や妹をつくる、この大義名文の元に俺はカガリと堂々いちゃいちゃラブラブし放題。
因みに男はいらない。
カガリそっくりな娘をつくる。
勿論、邪魔なリアンはマーナさんに押し付ける。
計画はバッチリだ!
すでに俺の脳内は薔薇色だ!
だから、俺はリアンの言葉を聞き逃した。
いや、聞き逃したというより、理解出来なかったという方が正しい。

「……リアン、お父さん、聞き逃したから、もう一回言ってくれるかな」

先ほど、リアンが放った言葉が俺の聞き間違いであって欲しいという願望を込めて、俺はもう一度リアンに聞いた。
リアンはカガリによく似た可愛らしい顔ではっきりと言った。

「おとうとやいもうとなんていらない…」

どうやら、俺の聞き間違いではないらしい。
俺はショックのあまり、呆然とリアンを見詰めていた。
暫しの沈黙の後、口を開いたのは愛しいカガリだった。

「リアン…どうして、弟や妹いらないんだ?お母さんには弟がいて嬉しかったぞ」

カガリはリアンの髪を優しく梳きながら尋ねた。

「…だって…おとうとやいもうとができたら、ぼくのこと、どうでもよくなって、いらなくなるんだ」

リアンはカガリが弱い寂しそうな目で見上げる。
こんな目で見られたカガリがとる行動は昔から一つで…いとも容易く予想出来る。

「そんな訳ないだろ!リアンが要らなくなるなんてそんなはずない!!」
「ほんと?」
「ああ、リアンは私の大切な宝物なんだから」

カガリは聖母の如く微笑み、リアンを力一杯抱き締める。

「おかあさま、だいすき!!」

リアンも出せる力で、カガリに思いっきり抱き付く。
そして、俺はこの光景をただ黙って見ていた。
俺は思案する。
どうしてこうなったのか。
計画は完璧だったはずなのに、今、俺は独りぽっち…
そこまで考えた時、ふと視線を感じた。
そちらを見やれば妖しく光る翠色。
それはリアンの俺を蔑んだ瞳と、勝ち誇った顔があった。
子供だと思って甘く見た!
あの言葉はリアンが俺からカガリを取られないように、謀った言動だったんだ。
気付けば、リアンはカガリに抱かれリビングを後にし、このままお昼寝モード。
しかも、リアンはカガリに抱き付いて寝て、決して離さない。
そして、夜もカガリを占領する。
俺のカガリなのに!

一体、アイツは誰の子だーーー!!!!

教訓

『蛙の子は蛙』




独占欲が強く嫉妬深い
アスランの子は、勿論
独占欲が強く嫉妬深い
まぁ
そんな話を書きたかっただけです
一番、決まらなかったのは
子供の名前ですね

ありがちな名前でもよかったんですが
男の子って事だけは譲れなかったので
カガリからリ
アスランからアとンをもらって
“リアン”になりました
設定ではリアンは3、4才ぐらいです
親子3人のイラストも
書けたらなと思ってます!

2008.6.13
2010.10.29移転










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