蜜色少女の災難A

広い廊下に鳴り響く金属がぶつかる音。
それは何度も何度も響き渡る。

「あれ!?おかしいな…なんで、はまらないんだ?」

カガリはある物と格闘していた。
力を入れて元に戻そうとする。

「この!はまれってば!!」

細い腕に出せるかぎりの力を入れた。
すると、大きな金属音をたてて、形を成していた物は崩れ落ちた。
あまりの事にカガリは、その有様を呆然と見詰めていた。

「大きな音がすると思えば…またか…」

壁にもたれながら、アスランは冷たく嘲笑う。
カガリは一番見られてはいけない人に見られた事に動揺する。

「あっ…これは…その…」

アスランはゆっくりと歩いて、カガリの前に立つ。
恐ろしい存在であるアスランを目の前にして、カガリは癖のように俯く。
いつも顔を隠して輝く蜜色しか見せないカガリの態度に、アスランは若干の苛立ちを覚えるが冷静を装う。

「この前、お仕置したばかりなのに、まだ足りないみたいだな」

サラサラと気持ちのよい蜜色の髪を梳きながら、カガリの耳元で囁く。

「ちょっ、ちょっとまてよ!あれは壊れてないだろ!!積み上げたら元に戻るじゃないか!?」

慌てて顔を上げて、アスランの胸に縋りつく。
カガリが壊したのは、廊下に置かれていた白銀の甲冑。
最初は普通に掃除をしていたカガリ。
それはそれは丁寧に。
しかし、つい、力が入ったのか、甲冑の右腕が取れてしまったのだ。
誰にも見つかる前に元に戻して置けば怒られないと思い、カガリは必死に右腕を直そうとしていた。
しかし、無理にはめようとしたのが、いけなかったのか…
右腕が外れていただけの甲冑は、金属音と共にバラバラと崩れ落ちたのだった。

「…確かに、壊してはいないが…カガリが元に戻せるのか」

アスランは不敵な笑みを浮かべてカガリを見下ろす。

「でっ、出来る!!」

カガリは懇願するように訴える。

「ふ〜ん、でも、あれを元に戻せても、俺に対する言葉遣いへのお仕置は免れないぞ」

上目使いでねだるカガリを冷たく見下ろしまま、アスランは含み笑いをする。

「えっ!?」

一瞬にして、顔面が蒼白になるカガリ。

「主人に対してあの物言いはメイドとして……失格だ」

辛辣な言葉にカガリは唇を噛み締める。
意志の強い筈の黄金の瞳は瞬く間に涙で覆われる。
それでも、涙を零さないように堪える。
アスランは少しいじめすぎたかと思い、蜜色の髪をそっと優しく撫でる。
先ほどまでアスランから視線を外していたカガリは、揺れる瞳で見詰める。
自分の方を向いたカガリに、アスランは満足そうに微笑み顔を寄せる。

「俺は優しい御主人様だから、チャンスをやろう」
「チャンス?」

まだ、涙で潤んでいる瞳でじっと見る。

「そう、チャンス。あの甲冑を30分以内で、元に戻せたらお仕置はなしにしてやる」
「ホントに?」
「ああ、俺が嘘を吐いた事があったか?」

アスランの言葉にカガリはふるふると首を振る。
少しの沈黙の後にカガリは顔色を窺いながら言葉を発する。

「あっ、あの…」
「なんだ?」
「もっ、もし、30分以内に戻せなかったら、どうなるんだ…じゃなくて、どうなるのですか?」

子猫のように震えながら聞く。
カガリの尤もな疑問にアスランは艶やかに笑う。

「勿論、お仕置だ。しかも、きつめのお仕置だな」
「きつめっ!?」
「そうだな……俺の目の前で一人でしてもらおうかな」
「そんなぁ!!」

カガリは再び、黄金の瞳を潤ませる。

「何を言っている?これはチャンスだぞ。甲冑を元に戻せばいいだけだろ。それとも、やっぱりカガリにはあれを元に戻せないのか?」

アスランは笑みを浮かべたまま、愉快にカガリを見下ろす。

「……出来る!!」

そこにあったのは、アスランが好んでやまない意志の籠った煌めく黄金の瞳。

「そう、じゃあ、頑張れよ」

アスランは後ろの壁にもたれて胸ポケットから懐中時計を取り出し、楽しげに時間とカガリを交互に眺める。
30分後、その場には……
積み上げかけた甲冑だけが残された。




ただいま
カガたんはお仕置真っ最中です(笑)
妄想していて
楽しかったので続編です♪
色々考えて、このお話で
出したい人が二人いるんですが…
思い付きから生まれた作品なので
設定がいまいち決まりません(泣)
細かい設定が決まるまで
こんな話が続くと思います
毎回
カガたんがいじめられるだけ
の話ですけどね(笑)

2008.3.16
2010.10.29移転










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