蜜色少女の災難@
ガシャン!!
広いキッチンに響き渡る音。
大理石の床には皿と呼ばれていた物の残骸がある。
「あ〜…また、やっちゃった…」
カガリはがっくりと肩を落とし、原形のない皿の欠片達をしゃがんで拾い集める。
「いたっ!!……あっ…」
皿の欠片で白い指は傷つけられ、真っ赤な血が流れ出す。
カガリは指から流れている緋色を溜息まじりに、ぼうっと眺めていた。
「また、割ったのか」
背後から聞こえる低く呆れた声。
カガリが勢いよく立ち上がって振り返るとそこにいたのは、雇主でもある屋敷の主人だった。
暗い青の髪色に冷たい宝石のような緑の瞳を持ち、整った顔をした青年。
年齢はカガリと変わらないが、プラントを治める若き統治者。
それがザラ家当主。
名はアスラン・ザラ。
アスランは徐にカガリへと近付く。
カガリの指を見ると大きく溜息を吐いた。
「はぁ…、皿を割った挙句に指を切るなんて…どこまでどんくさいんだ?」
見下し咎めるように言い放つ。
その言葉にカガリは縮こまってしまう。
完全に俯いているカガリの手を掴むと、アスランは傷付いた指を意味ありげに舐める。
すると、カガリの顔は真っ赤に染まる。
その姿にアスランは薄く笑う。
「何をそんなに赤くなる事がある?それとも、もうお仕置の事しか考えられないのか?」
口角を上げて笑ったアスランはカガリの細い腰を掴んで、ゆっくりと下から撫で上げる。
カガリはビクリと全身を震わせながらも、首を左右に振って否定の意を表す。
アスランはカガリの態度にムッとしつつも、細い腰を抱きよせキッチンを後にしようとする。
そんなアスランにカガリはたどたどしく声を掛ける。
「あっ…あの、お皿…片付けないと…」
「片付けは他の者にさせればいい。それにカガリが片付ければ、無駄に指を切って床を血で汚すだけだ」
冷徹に尤もな事を言われたカガリは素直に従うしかない。
「それにしても、主人である俺に口答えするとは……いい度胸だな」
眼下に煌めく蜜色の髪をアスランは空いてる手で弄ぶ。
「くっ、口答えなんかしてない!片付けも仕事のうちだからっ!!」
必死な顔で反論するカガリにアスランは高らかに笑った。
「ハハハッ!毎回、毎回、皿を動かす度に割るのが仕事か?ああ、皿だけじゃなかったな。窓硝子に花瓶に壺……割れる物は割ってきたよな。ん?」
「あぅ…うぅ…」
蜜色の髪を弄んでいた手を滑るように降ろし、薄紅に染まった頬を撫でながら緑の瞳は金の瞳を見据える。
数々の失敗をあげられたカガリは小さくなるしか出来ない。
申し訳なさそうにおとなしくなったカガリにアスランは満足そうに笑い、カガリを連れて足を進める。
「そう言えば…この間、割った花瓶のお仕置もまだだったな。まとめてしよう。そのかわり、明日は休みにしてやる。まぁ、俺の部屋から一歩も動けないと思うけどな」
アスランは楽しそうにカガリの耳元で囁いた。
ほぼ勢いで書いたので
なかなかタイトルが
決まりませんでした
カガたんがメイドだったらいいな…
という妄想から生まれました♪
アスランが何気に黒いです(笑)
2008.3.7
2010.10.29移転