St.Valentine's Day2012

「マズいっ!!」

カガリは激怒した。
辺りにはその原因の物体が散乱している。
それでもカガリはもしかしたら一つくらい正常な物質があるかもしれないと、もう一度手を伸ばす。
そして…

「ぐはぁっ!!」

矢張りそこにカガリが望む物は存在していなく倒れ込み、床に伏せてピクリとも動かなくなった。
誰がどうなろうと時は進むのである。
暫くして、もそもそと動き出し活力を取り戻したカガリは哀れな残骸達を片手に取る。

「チョコレートが何だって言うんだ…我が家の宗教には存在しないんだ…そうだ、最初からバレンタインデーなんて存在しないんだ!!」

自分勝手な結論を叫んだ後、強度のストレスから解放されたカガリは軽やかな動作で片付けていく。
瞬く間、台所は美しさを取り戻した。



で、2月14日バレンタインデー。
朝からイザークはソワソワドキドキしていた。
なぜなら生まれて初めて彼女が出来てから迎える恋人達にとって特別な日だからだ。
期待が膨らむのは致し方ないのである。
学校中に広がる甘い空気。
机の中に入れたり、直接渡したりと青春を謳歌している。
そんな中、イザークは誰よりも愛しい人と笑顔で朝の挨拶をした。
けれど、彼女は笑っているだけでイザークの欲しい物をくれなかった。
昼食後か放課後に貰えるのかと思いその時はそんなに深く考えなかった。
授業は滞りなく進みあっという間に放課後。
いつまで経ってもチョコを貰える気配がない。
しかも、可愛い彼女であるカガリは親友と帰ると言ってそそくさと教室を出て行ってしまった。
特別な日にも拘わらず1人帰るはめになったイザークは寂しく帰り支度をする。
カガリは別のクラスである親友フレイの元にいた。
どうにもチョコを渡した様子がないと思ったフレイは直接聞いてみる。

「アンタ、バレンタインチョコはどうしたのよ」
「フッ、何言ってるんだよ、フレイ。私の家では仏様を祀ってるんだぞ。そんな宗教行事は知らん」

得意気な顔で言い切るカガリにフレイは呆れ固まる。

「……アンタねぇ、ちょっと前までバレンタインデーにソワソワしてたじゃない」
「あー、昔の事は…忘れた。私は未来しか見ない人間なんだ」

同性にも拘わらず惚れてしまう程、綺麗な顔で笑うカガリ。
しかし、ある意味ドヤ顔でもある。
カガリのおかしな態度に幼馴染みのフレイは何かに感づいた。

「ハハーン、解ったわ」
「何がだよ」
「アンタ、手作りチョコに失敗したんでしょ」
「っ!!なっ、何で解るんだよ!!」
「解る訳ないでしょ。当てずっぽうが当たっただけよ。アンタって本当に単純よね」
「うっ…」
「でも、失敗したくらいでチョコなしってなくない?」
「……」
「どうかした?」
「……手作りチョコに命をかけてたんだ。それで…」
「それで?」
「……全財産、使い切った……」
「アンタ…バッカじゃないの!」
「だって、本見ながら作ってたから…大丈夫だと思って…」
「で、失敗したって訳、ね」
「うぅっ」

カガリはうなだれ壁に凭れる。
反対にフレイは妙案を思い付く。

「うーん……そうね、チョコなら此処にあるわ。これ、使ったら?」
「……これって、チロリアンチョコじゃないか!?」
「なによ、タダでチョコ貰うくせにケチつける気なの?」
「うっ…それは」
「勿論、これをただ上げるだけじゃ芸がないわ。今日はバレンタインデー、恋人達の祭典。チョコがショボいなら、趣向を凝らすのが手よ」
「趣向を凝らす?」
「そう、耳貸して」

フレイからの耳打ちの内容にカガリは瞬く間に真っ赤にそまる。

「そっ、そんな事出来るかっ!!//」
「何よ、アンタ。私がチョコをあげて、更に素晴らしい名案あげたのに文句つける気なの?」
「ううっ…」
「ほら、これでアイツを喜ばしてあげなさいよ」
「ううぅっ…………無理だあぁぁっ!!」

フレイにチョコを返すとカガリはその場から逃げ出した。

「たくっ、根性ナシなんだから……私が一肌脱がなきゃいけないじゃない。前みたいに…」

溜め息をつきながら恥ずかしがり屋の親友の為、行動に出る。



まだ続く










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