Christmas2011

「「♪ジングルベ〜ル、ジングルベ〜ル、すずがなる〜」」

楽しそうに歌いながら2人はクリスマスの飾りを作る。
それは幼稚園で教わった輪っかの飾りとバラの飾り。
リビング全てを飾る為、沢山作っていく。

「みてみて〜、お母様、これ、今まで一番キレイに出来たよ」

見せられたのはピンクのちり紙で作られた花。

「うん、よく出来てるな」
「えへへ!」
「母上〜、俺のも見て〜」

今度は色とりどりの輪っかの飾り。

「お〜、長く作ったな。凄いじゃないか」
「でしょ〜、リカのより俺の方がすごいんだ」
「そんな事ない!カイよりリカの方がすごいんだから!」
「ヘン!でも、母上はすごいなんて言ってない!」
「う〜、お母様〜」

リカはたまらず母であるカガリに抱き付く。
直毛の金髪と青い瞳をしたカガリの夫によく似た女の子、それがリカ。
逆に跳ねた髪質の銀髪と黄金色の瞳をしたカガリによく似た男の子、それがカイ。

「カイ、女の子を苛めちゃいけないってお父様にいつも言われているだろ?」
「え〜、でも、リカはおてんばだから、女の子じゃないって幼稚園でも言われてるし〜」
「そんな訳ないだろ。リカは女の子に決まってるじゃないか!」

カガリが怒鳴ればカイは益々むくれ出す。

「…リカなんていらない俺、弟がよかった」
「カイ!なんて事言うんだ!!」
「リカだってカイなんかいらない!妹がよかった!」
「リカまで…何言ってるんだっ!」
「「ふーんだっ!!」」

双子の2人は揃って顔を背ける。
依怙地なカイとリカの姿にカガリは大きく溜め息を吐く。

「……いいのか、そんな事言い合って」
「「?」」
「悪いコの所にはサンタさんは来ないぞ!」
「「!?」」

目を見開いて解りやすく動揺するカイとリカ。

「リカはムカつくけどサンタさんに来てもらわないといけないから仲良くしてあげてもいいぞ」
「リカだってカイの事、嫌いだけどサンタさんに来てほしいから仲良くしてあげてもいいよ」

どこまでも意地っ張りな2人に血は争えないなとカガリは密かに思った。



手作りの飾りをリビング全体に飾りつけ、後は大事な人の帰りを親子3人で待つ。
暫くして外から聞こえてくる足音にソワソワするカイとリカ。
ガチャリと音がすれば…

「ただいま」
「「メリークリスマス!!」」

2つのパーンという破裂音が響く。
カイとリカが父であるイザークにクラッカーを鳴らした。
飛び出てきた紙吹雪に塗れるイザーク。

「フフッ、お帰りイザーク。ほら、カイ、リカも」
「おかえりなさ〜い、父上!」
「おかえりなさ〜い、お父様!」
「ああ、ただいま。カガリ、カイ、リカ。ケーキ、持って帰ってきたぞ」
「「ヤッタァァッ!!」」

揃ってイザークに飛び付くカイとリカ。
勢いの余り白い箱が大きく揺れた。

「「「あーーーっ!!」」」

親子3人同じ顔をして白い箱の行方を見送る。
グシャリと潰れると思われたが、白い箱は原形を保たれている。
しっかりと受け止めた人がいた。
昔、お転婆と呼ばれていたカガリその人。
今では貞淑な妻となっている。

「もう、危ないな。私が受け取らなきゃ今頃、ケーキはペシャンコだぞ」
「ごめんなさ〜い、母上〜」
「ごめんなさ〜い、お母様〜」
「すまないな、カガリ」
「いいよ、無事だったから。じゃあ、ケーキを切り分けるから先にリビングへお父様を案内してくれ」
「「は〜い!」」

声を揃え、イザークの手をそれぞれ握って引っ張る。

「コラ!そんなに引っ張るな!」
「「だって、早くケーキ食べたいんだもん」」

心が揃った時は双子らしい発言をする。
最近は喧嘩ばかりだが。
なんだかんだ言いながらも、可愛い我が子に頬を緩めながらイザークは連れられて行く。
一方、カガリはケーキの箱を持ってキッチンへと向かった。



「おお、凄い飾りつけじゃないか!」

派手に飾ったリビングにイザークは目を細める。

「でしょ、輪っかのは俺が作ったんだ」
「お花は私が作ったの〜」
「そうかそうか、どっちもよく出来てるじゃないか」
「俺の方がよくできてるよね、父上」
「私の方ができてるでしょ〜、お父様」

目をキラキラと輝かせて見上げるカイとリカ。
しかし、一瞬だけチラリと横目で互いを見やりギラリと冷たい視線で睨み合う。
両雄並び立たずとはよく言ったもので、どちらかを誉めれば確実に残った方に恨まれるのは明白。
固まったイザークに天から救いが施される。

「言い争いをするような悪い子にはケーキはあげないぞ!」

鶴の一声でカイとリカの態度は一変する。

「俺、わるいコじゃないよ」
「リカ、いいコだもん」
「そう?じゃあ、良い子の2人はお母様の手伝いして欲しいな」
「「は〜い」」

上手く子供達を宥め操る妻に夫はいたく感心する。
その後、テーブルを4人で囲み楽しいクリスマスパーティーは行われた。



そして、いよいよ本日のメインイベントが始まる。
イザークはサンタに、カガリはトナカイの格好に着替えていた。

「プレゼントはバッチリか?」
「当然だ、抜かりはない。カイには仮面ライチュウ変身セット。リカにはプリキュウコン変身セット。リサーチ通りだろ?」
「ああ。今、夢中なんだ、カイもリカも。毎週、テレビにかぶりついて見てる。この間、トイザらプラスで変身セットを持って駄々こねられて、連れて帰るのが大変だった」

溜め息を吐くカガリ。
その光景が浮かんでイザークは口元を綻ばせた。
水色の包装紙にくるまれたプレゼントと、ピンク色の包装紙にくるまれたプレゼントを、抱えていざ我が子が眠る寝室へ。
音を立てずに部屋に入れば2人仲良く寝ている姿は天使そのもの。
イザークとカガリはほくそ笑みながら近づき枕元にある赤と白の靴下を取り上げる。
イザークはカイのを、カガリはリカのを。
それぞれ中にはメッセージカードが入っていて、確認すれば2人は固まってしまった。



『サンタさんへ
 おとうとがほしいです カイ』


『サンタさんへ
 いもうとがほしいです リカ』



カガリの顔は真っ赤にして解りやすく動揺を示す。

「……最近、特に兄妹喧嘩が激しいと思ったら…こんな事考えていたのか//」

小声で囁くカガリにイザークは何も言えず持っているプレゼントを見詰める。
冷静を装っているが銀髪から覗く耳は仄かに赤い。

「もしかして…このプレゼント失敗か?」

漸く発した言葉は微かに聞こえる程度。
それでも、静かな部屋で少し離れているカガリには聞こえた。

「えっ!?で、でも…こんな願い事、叶えられないだろ?」
「……まあ、そうだけど」
「と、取り敢えず、コレを置いておこう?」
「そうだな」

枕元にそれぞれのプレゼントをそっと置いて2人は部屋から退散した。



「はあ…アイツらいつの間に願い事を変えてたんだ?」

実はサンタへのメッセージカードはカガリが見ている所で書いていて、その時は間違いなく用意していたモノだったのだ。
うーんと唸るカガリの真横で物思いに耽っているイザーク。
その姿にカガリは首を傾げる。

「…プレゼントの事、気にしてるのか?別にお前のせいじゃないぞ。私のミスだ。もう一度、確かめておくべきだった、ゴメン」
「いや…謝る事はない……ただ」
「ただ?」
「今回は叶えてやれなかったが…その…来年のクリスマスなら叶えてやれるかもしれないな、と思って…」
「来年?」
「あー、そのー//……もう1人、家族が増えるのは…嫌か?」

カガリの鈍さは国宝級であるが、流石にイザークの言わんとしている事を瞬時に理解しトナカイなのにサンタクロースの服のように全身を染め上げる。

「おまっ!!何言っ!!」

恥ずかしさから必然とカガリの声が大きくなってしまい慌てイザークが口を手で押さえ込む。

「シーッ!!」
「うっ…ぐっ…」
「大声出すな、起きてしまうだろ」

注意されてカガリはコクコクと頷く。
落ち着いた所でイザークは手を離した。
2人の間に微妙な空気が漂う。

「……」
「……」
「……嫌か?」
「……嫌って訳じゃ……」
「じゃあ、どうして不服そうなんだ?」
「不服って訳じゃなくて……その…」
「その、なんだ?」
「どちらかだと…また、揉めるぞ、アイツら…」

願い事は2つ。
カイは弟で、リカは妹を欲しがっている。
2人のように双子でしかも性別が異なっていれば問題ないが、そうなるとは限らない訳で寧ろ1人しか生まれない確率の方が高い。
唯でさえ小さな事で睨み合う双子のカイとリカに、カガリは喧嘩している光景しか浮かばない。
言われて初めてイザークも悩み込む。

「あー、うー…その、なんだ…」
「?」
「家族が何人に増えても俺は大丈夫だし、金銭面でも何とかするつもりだ」
「ッ!!//」
「だから……その…クリスマスだし…どうだろうか?」
「……喧嘩したら、お前が止めろよ。私は知らないからなっ!」




20000hit記念『初夜』後を
イメージしてますが
“続”という訳でもないです

子供の名前が
安直すぎましたかね★

イザカガのクリスマス話
楽しんで頂けたら幸いです

では、皆様
Merry Christmas!

2011.12.24










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