Mu's2011

注意 SEED時代設定



両手を的確に動かしていけばモニターの点数は軽やかに上がっていく。
規定時間に到達すればランキングが表示される。
記録更新したとしてイニシャルを打ち込む。
“M.F”

「どうよ!俺が本気出せばざっとこんなもんだぜ?」
「ふ〜ん…」

シミュレーターを横から覗いてカガリはつまらなそうに答える。

「ん?もしかして悔しいのか俺に記録抜かれて?」
「別に〜」
「悔しいんだろ?何たって嬢ちゃんは負けず嫌いだからな」

ムウがニヤリと笑えばカガリの眉間の皺は更に深くなった。
くるりと振り返って声を上げる。

「キラ!キラァァッ!!」
「ちょっ、嬢ちゃん、何してんの!?」
「ん?キラを呼んでるんだ」
「それは解ってるよ。どうして呼んでるのかなって?」
「私、負けず嫌いだからさ。キラにこの記録抜いてもらうんだよ」

カガリもニヤリと笑って答えた。

「はぁ〜、記録抜いて悪かったよ。嬢ちゃんが余りにもはしゃいでたからさ。つい、おっさんも本気になっちゃって…」
「……別に…記録抜かれた事に怒ってない…ちょっとムカついただけで」

やっぱ怒ってんじゃんよと心中で思ったムウだがそこは笑顔で耐えた。

「それにおっさんが意地悪な事を言うから」

頬を淡く染めながら外方向いているカガリにムウはたまらず手をとった。
力任せに引き寄せてシミュレーター内部に座っている自らの膝の上へ向かい合わせに座らせる。

「ワリィな。俺ってば好きな子を苛めちゃうんだわ」
「…//…す、好きな子って…誰だよ…」
「あれ、それ、言わせちゃう?それとも言って欲しい?」
「なっ//う〜」

カガリは唸って恥ずかしさの余りムウの胸に顔を埋める。
僅かに揺れる金髪をムウは愛し気に撫でた。

「俺は嬢ちゃんが…好きだから、苛めたくなるんだ」
「…恥ずかしい事、言うな//…バカ…」
「バカはねぇだろ。素直に言ったのにさぁ。それに今日は俺の誕生日なんだぜ?」

カガリは驚いて勢いよく顔をあげた。
すぐさまむくれた表情になる。

「どうして言ってくれなかったんだよ!プレゼントとかケーキとか何にも用意出来なかったじゃないか」
「ハハ、俺、見ての通り、三十路前のおっさんよ?誕生日なんてただ年をとっただけで祝うもんじゃねぇ。つか、お誕生会なんて恥ずかしいだけ」
「む〜、でもっ!?」
「まぁまぁ、俺にとって誕生日なんてどうでもよかった訳よ。少し前までは…でもさ、目に入れても痛くないくらい、今、可愛い子がいるんだわ。その子に祝われるのも悪くねぇなとおっさんは思ったわけ」
「……」
「あんれ?満面の笑みで祝ってくれるんじゃないの?生まれきてくれて有り難うとか、プレゼントには私をあげふひゃぁ」

語尾がおかしくなったのはカガリがムウの両親を引っ張ったからである。

「ひゃへれないれすけろ?」
「変な事、言うからだ…」

やや怒った顔のままカガリは言う。
そして、抓っていたムウの頬を離してやる。

「あ〜、腫れちゃったんだけど…」
「知るか!?」
「ハハハ、拗ねてる嬢ちゃんも可愛いよ」
「…//」

大きな手で輝く金髪を撫でる。
カガリは心地良さそうに身を任せた。

「ほんとはさ誕生日とか…まして嬢ちゃんへの思いも言うつもりはなかったんだ」

思わぬ告白にカガリは目を瞠る。

「でも…日毎に思いが募ってポロッと口から零れちゃって…今日もそんな感じ」
「……言わないつもりだったのか?」
「そう。解んない未来より今ある現実を大事にしたいからさ」
「未来は解んないからいいんだろ?」
「それ、若者の特権。齢を重ねるとさ、人って臆病になんだわ。未来にある最高の幸福より、今、眼前にあるちっちぇ幸せに縋りつきたいのよ」
「……」
「誕生日教えんのも思いを伝えんのも、これからの未来を一緒にと過ごす前提だろ。でも、今はそんな未来をみれる程、生易しい状況じゃねぇ。もしかしたら、明日すら見れねぇかもしれない…それでも、俺は嬢ちゃんに祝われたい…愛されたい…すんげぇ矛盾してっけどね」
「……」

黙ったままカガリはムウの膝から降りたその顔は解りやすく怒りの心情が表している。
シミュレーターに背を向けて歩き出す。
追い掛ける為にムウも座席を立つ。

「嬢ちゃん?」

呼びかけられてカガリは止まり振り返る。
しかし、目は鋭くムウを睨みつけた。

「…お前、死ぬ気か?」

問われてムウに瞠る。
心奥に抱えていた事をはっきりと言われて答えに詰まった。

「あ〜、そんなつもりはないけどさ…そうならないとは限らないだろ?」
「私は死なない」

カガリははっきり言った。
強い意志を持った瞳で。

「……絶対は…なくねぇか?」
「絶対だ」
「いや…でもな」
「でももない」
「すんごい自信」
「当然だろ」

自信満々に言い返すカガリにムウは大きく溜め息を吐く。

「やっぱ、嬢ちゃん、若いわ。流石は十代…そんな自信、俺にはない…毎日、死の恐怖と戦ってんだぜ?顔には出さないけど」
「……」
「でも、この戦いから逃げる訳にはいかねぇし…できれば嬢ちゃんの手をとって愛の逃避行と洒落込みたいけど…」
「そんな事したらおっさんを全力でぶん殴る」
「アハハ、やっぱり?」
「おっさんは死ぬ為に戦うのか?」
「……」
「世界が…宇宙が間違った方向に進んでるから…それを私達が正しにいくんだ。死ぬ為に戦う訳じゃない…だから、死なない」
「……ハハッ、ちょー男前、ヤッバイ、惚れ直しちゃった」

ムウは笑ってカガリをギュッと抱き締める。
優しくではなく力の働くまま。

「ハッ…おっさん…く、苦しい」
「何言っちゃってんの、俺の愛の強さだって」

苦しいながらカガリも抱き締め返す。

「…なぁ、嬢ちゃん、このまま聞いて」
「ん?」
「もしさ…全部片付いて、俺が生きてたら…」
「おっさんは死なない、絶対!」
「フッ、そうだった…で、全て終わったら」
「終わったら?」
「誕生日プレゼントとして…姫さんを頂戴」
「……」
「ダメ?」
「…………いいぞ//」
「えっ、マジで?」

驚いた顔で間近にある顔を覗き込む。
カガリは俯いてムウの腕に顔を埋めたままで視線を感じても上げようとはしない。
金髪からの覗く耳は赤い。
ムウは笑みを深めてその耳を口に含んで甘噛みした。
するとカガリは勢いよく顔を上げる。
目は真ん丸く驚いてるのは解りやすい。

「えっ…おまっ//…何して//」
「何って…ナニでしょ…これぐらいで真っ赤になってたら、それ以上の事…出来んのかな〜?」
「……」
「おっさん、ちょー心配」

カガリが負けず嫌いだと解っていて自尊心を擽る。

「うっさい!心配する事なんて何もない。戦争終わるまで楽しみに待っとけ!!」

すんばらしい男前発言にムウは遅れてもらえるプレゼントに思いを馳せた。


Happy birthday Mu!!



誕生日おめでとう、ムウ!

書きたかった話から
途中ずれて着地点に苦しみましたが
構想通りヘタレおっさんと男前姫話
に仕上がったと思います

2011.11.29










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