白馬の王子

丸で造られたかのような完璧な白。
けれど、鼻先がピンクに淡く染まっている。
それは生きている証。

「ルージュって言うんだぞ」

カガリは心底愛おしんで鼻先を撫でる。
名を紹介されてアスランの目前にいるのは真っ白い馬。
所謂、白馬と呼ばれるサラブレッド。

「白いな」
「うん、真っ白なんだ」
「…名前は紅なんだな」
「へへ、つい、な」

カガリはルージュの鼻先に頬を擦り付けて愛情を表している。

「それに白馬ってすんごい珍しいんだぞ」
「そうなの?」
「そうなの!サラブレッドの主流は鹿毛って言う茶褐色が殆どなんだ。後は黒鹿毛、青鹿毛、青毛、栗毛、栃栗毛、葦毛、そして白毛がある。基本、血統が物言うサラブレッドの中、突然変異で白毛が生まれたんだぞ」
「ルージュも突然変異なのか?」
「ううん、違うぞ。お母さん馬は突然変異だけど、その子であるルージュは50%の確立で白毛に生まれる。親からの遺伝でルージュは白毛なんだ」
「ふーん」
「後、白毛並みに特殊なのが尾花栗毛って呼ばれる栗毛馬」
「尾花栗毛?」
「そう。栗毛馬の鬣は一般的に馬体と同じ色なんだけど、尾花栗毛の鬣は金色なんだ」
「へえー」
「私の髪色みたいにキンキラキンなんだぞ」
「…そっちの馬も気に入っているみたいだから、その尾花栗毛馬をルージュってつけたらどうだ?」
「はあっ!?お前、私の話聞いてたのか?尾花栗毛馬もかなり珍しいんだぞ。そう簡単には見つからない。それにこのルージュをどうするつもりだよ!」

ぎゅっとルージュに抱きついてカガリはアスランに非難の視線を送る。
そんなカガリにアスランは笑いながら答えた。

「俺がこの白馬を貰うんだ。何たって、カガリより俺の方が相応しいから」
「何でだよ!私の方が相応しい!」

必死になって言い返す姿は大事な玩具を取られないように頑張る子供のようで愛らしい。
アスランはその姿にまた笑った。

「ハハハ」
「何が可笑しいんだよ」
「いや、必死だから」
「当たり前だろ。ルージュは私のなんだから。アスランも馬が欲しいなら牧場に頼んでみるから、ルージュは諦めろ」
「でも、それだと白馬じゃなくなるだろ?」
「大丈夫。言っただろ、お母さんが白馬だと半分の確立で生まれるって。だから、白馬が生まれたら連絡もらうから」
「それって、何年か掛かるんだろ?」
「うん…それは仕方ない。馬は1年に1頭しか産めないから」
「それに絶対白馬が生まれるとは限らないんだろ?」
「うっ…でも白の遺伝子は優性遺伝子だから普通より確立は高い」
「でも、絶対じゃないんだろ?」
「そうだけど…ルージュはやらないぞ。何でルージュが欲しいんだよ?」
「そりゃ、姫を迎えにいく為だよ」
「はあ?」
「姫を迎えにいく王子は白馬に乗ってるもんだろ?」
「まあ、御伽噺ならそうかもだけど…」
「だから、俺がもらうんじゃないか」
「どこがだからなんだよ」
「だから、俺が白馬の王子になる為」
「何で白馬の王子になるんだよ」
「だから、姫を迎えにいく為だって」

そう言ってアスランは指差す。
目の前の愛すべき姫を。
そして、漸く意味を知ったカガリの頬は真っ赤になった。

「バッ、バッカじゃないのか//」
「そう?俺は本気だけど。だから、この白馬、俺に頂戴」




完全趣味作品です
会話メインになっちゃいました★

2011.11.14










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