随筆…妖怪たち




 「みなさん」にお会いしたのはいつのことでしょう。秋の夜長、美しい月に心を満たされて眠りに就こうとしたときのことだったかもしれません。その日、私は自分の寝室に入って、ひとつの違和感を覚えました。布団が、こんもりと盛り上がっていたのです。猫でも忍び込んだのだろうか……それにしては大きな膨らみだ、そう思ってそっと近づいていき布団をめくりあげる。このときほど驚いたことはありません。布団のなかにいたのは、人だったのです。この屋敷にきて、初めてみた方でした。彼はじろりと私をみつめて、言います。


「新しい人間だ」


 その瞬間、私はとてつもない悪寒を覚えて周囲を見渡しました。いつの間にか、私の周りにはたくさんの「彼ら」がいました。目、目、目……たくさんの目が私をみつめています。


「ようこそ、俺たちの屋敷へ。ここは俺たち妖怪の集う屋敷。仲良くしてくれよ」


 そう、この屋敷には、妖怪が住んでいたのです。たくさんの、妖怪。

 彼らとの出逢いが、私を変えることになるとは、このときの私には知る由もありませんでした。


雨瀧 スイ 著「恋綴り」から引用



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